前回は“他人が聞いても面白くない話ナンバーワン”の呼び声高き“怪我自慢”の途中で終わりまして……そうです。“途中”なんです。というわけで今回も“あさこの下半身のダメージたち”の続きからスタート。もう少々お付き合いをば。

 舞台の専門学校時代にもなかなかのヤツが。卒業公演でアンデルセン童話「雪の女王」を基にしたオリジナルミュージカルをやりまして。これはヒロインの少女ゲルダが雪の女王に連れ去られた少年カイを探しに行く物語。そのゲルダと一緒に旅をするのが「オズの魔法使い」のようなお供のずっこけ三人組。“辞書”“時計”“バラの精”。実はこの“バラの精”が私の役。ま、響きがかなり可憐ではありますが、“トゲでチクリ”くらいしか出来ない役立たず。でも言うても “バラの精”ですから。華麗にバレエチックな動きをするわけですよ。ただどうしても筋肉質で強めなボディを持ち合わさせていただいております私には稽古中、先生から数々のダメ出しが。「もっと可憐に!」「柔らかさが足りない!」更にフワリと跳んだ時の着地について「地面に着くまでつま先をちゃんと伸ばして! そしてつま先から丁寧に降りる!」というご注意を。今ならわかりますよ、この感じ。でもまだダンス始めて間もない頃ですから。アホがつくほど真面目につま先を伸ばすわけですよ。しかも“地面に着くまで”と言うより“そのまま着地”で。ええ、ええ。つま先、地面にぶっ刺さりますよね。そしたら、指、やべぇですよね。か弱き足の指に信じられない圧、かかりますよね。その結果、左足の中指、脱臼。靴脱いだら見事に足の指が一本、劇的に短くなっておりました。半べそかいて足引きずりながら1人で救急の病院にかけこんだ、あの寒い冬の夕方の事、忘れない。

 そんな数々の苦難を乗り越えてきた私の下半身。今回の社交ダンス稽古中にもちゃんと苦難は待っておりました。前回の引っ越しのところにもちょいと書きましたが、今回の苦難はいっぺんに“膀胱炎”と“ぎっくり腰”がやってきたこと。まず膀胱炎。今までなったことは一度もなく。ある日、急におしっこちゃんの最後に「んぬぁぁぁぁあっ!」と声が出ちゃうような痛みと言うかモゾモゾ感と言うかがありまして。そして異常なまでの残尿感。それを文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」のオープニングで話すと全国の皆さんから「それ膀胱炎ですよ」のメールが。ありがとう。これが膀胱炎なのですね。ただしばしバタバタで病院に行けず「んぬあっ」の日々を過ごしておりましたが、一週間後ようやく病院へ。初の泌尿器科。かなりのどっきりんちょでしたが、待合室は意外にも女性が多く。ホッ。そして受付と共にお姉さんからスッと渡された紙コップ。そうです、尿検査です。トイレにてもれなく例の雄叫びをあげながら採尿すること数分後。「膀胱炎です」との診断。聞くところによるとオマタの温度は通常38℃くらいだそうで。それが冷房とかで冷えて36℃に。実はその36℃。菌が一番喜ぶ温度で。しかも女性はオマタちゃんが冷えやすく、なんと膀胱炎で病院に来た患者さんの8割が女性らしい。どうも、8割です。お医者さんから処方していただいたお薬を飲むと、あれよあれよと言う間に「んぬあっ」地獄から解放。お医者、すげぇ。

 やっと通常生活に戻りつつあった、とある朝。その日も朝早くから社交ダンスの稽古があったので、体を起こすべく朝6時過ぎに熱いシャワーを。そしてお風呂場から出てきた時に事件が。以前ぎっくり腰をやってから下にかがむのが怖く、洗面台にのっけて右足をタオルで拭こうとしたその時!! ピッキーン!!……あれ? 体が、動かないよ。ついついいっこく堂さん風になっちゃいましたが、かなり覚えのある痛みが右腰に走りまして。やって来ました、ぎっくりちゃんです。忘れもしない時刻6時32分。あさこ、早朝丸裸で、片足洗面台。まいっちんぐ。ただね、この時脳裏をよぎったのは「どうしよう、ぎっくり」ではなく「どうしよう、オマタが冷える」。やっと治った膀胱炎への恐怖でした。だって、オマタ冷やしたら、温度が36℃になったら、また「んぬあっ」がやって来る。そう、オマタを守らねば。ゆっくり両手で抱えながら、なんとか右足を洗面台から下ろし。元気な左足一本で近くに干していた洗濯物たちの方へにじり寄る。精一杯手を伸ばしておもむろにおパンツさんを一枚引き抜く。でも腰が痛いから普通には穿けない。あさこちゃんは考えました。まずおパンツをそっと下に落とす。ちゃんと足を通すところが見えるように。そしてまた両手でちょっと浮かせて右足を片方の穴へ。更に元気な左足ももう片方の穴へ。でもここからどうしよう。キョロキョロ、キョロキョロ。あ! もうこれは神のお助けとしか言いようがない。お風呂場のすぐ横が玄関で。そこで前日が雨だった為、濡れた傘を干しておりまして。その傘を手元まで引き寄せ、柄の部分を下に向ける。あの傘の柄の“J”のところをなんとかおパンツに引っ掛ける。ここまで来たら100万馬力。ゆっくり上まで引き上げる。装着完了、オマタ、あったか。

 そんなボロボロBBAのわたくしと初心者おじさん・斎藤さんのペアを大会当日、笑顔とかけ声で応援してくれたヒルナンデス火曜メンバー。そしておそらくご家族かお友達の応援でいらしているのにも関わらず、うちらに惜しみない声援をくださった会場のたくさんの皆々様。もちろんテレビの前で観ていてくださった方々も。本当にありがとうございました。おかげさまで正直最初は決勝までは無理。準決勝もどうだろう、と思っていたダメダメペアが3位に。そしてそしてその3位と言う結果を「悔しい」と思うところまでもってきてくださった二ツ森亨先生・由美先生には感謝しかありません。お忙しい中、どれだけ大量の時間を割いて、根気よく教えてくださったことか。もう“ありがとう”じゃ全然足りないけど、他に言葉がないから。いっぱいいっぱいありがとうございました、です。

 そんなこんなで長かったのか短かったのか、終わった今ではピンときませんが、なんとか社交ダンスの挑戦は終わりました。辛かったけど、楽しかったなぁ。本当に本当に本当に本当にありがとうございました。

 え? 今回のコラムのタイトルは「社交ダンス」じゃなくて「下半身」じゃないかって?いいえ、「社交ダンス」で。

【今日の乾杯】
大好きなアカシアのロールキャベツシチュー。しばらく工事でお休みだった羽田空港店がこないだ行ったら開いていて。速攻ビールと共に。ここは美味しいのは勿論のこと、お店の方がアホほど感じ良くて。更に美味しくなる。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。全力で働いて、遊んで、呑んで、笑って、泣いて……の日々。ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方の「日本酒ロック」。緊張の、海外ロケでの一人トランジット。酔ってヒールでこけて両膝から出血の地獄絵図。全力の悪ふざけ、毎年恒例お誕生会ライブ。女性芸人仲間の感動的な出産。“呑兵衛一族”の冠婚葬祭での豪快な呑みっぷり。40歳で体重計を捨ててから止まらない“わがままボディ”。大泣きのサザン復活ライブ。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。恒例の、オアシズ大久保さんのご家族との旅行。etc.