人気サイト「オモコロ」で100万PVを達成したコミックエッセイ『情熱大陸への執拗な情熱』が待望の書籍化! TBS系ドキュメンタリー番組「情熱大陸」へは、どうやったら出られるのか。上陸(出演)人のAR三兄弟・川田十夢に極意を聞きに行く特別対談企画の最終回!

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(ナレーション)川田との話が盛り上がる取材現場に、突然1台のカメラが入ってきた。今まさに川田の密着取材をしているというテレビ番組のカメラだった。当初腹痛を起こした緊張が過ぎ去り、憧れの川田との「大陸トーク」を満喫していた宮川は再び緊張した。そして部屋に満ちてくるある“気配”に気づく。「今日のこの偶然、強烈な引きはなんだ? 大陸様に試されているのか……?」


■出演は「素晴らしい体験」

宮川 密着された6ヶ月間って、どうでした?

川田 6ヶ月はやっぱりしんどかったですね。日本全国飛び回るときにも当たり前のようにいるし、ほぼ毎日カメラがいましたから。もちろんスケジュールはちゃんと送るようにしてましたよ。

宮川 「今日は来てほしくないな~」という日はありました?

川田 来てほしくない……いや、それはなかったかなぁ。なんかさ、最初はいいこと言おうと思ってたんだけど、そういうことでもなさそうだから、まあいいか、って(笑)。

宮川 何気ないシーンとか、車やタクシーのシーンでの名言よくありますよね!

川田 情熱大陸って、カメラを意識せずにしゃべるもんだってイメージがあったんですよ。だからそれやりたいなと思って、タクシーの中でさりげなくいいこと言ってみたんだけど、そういうときに限ってカメラ回してなかったりね。「ちょっと! 回しといてよ!」っていうのがよくありました(笑)。

宮川 ……ちなみに今日は、童貞が女抱きまくってる人のところへ行って「いや、女なんてたいして良くないよ」って言われるつもりで来たんです。そうすると童貞の焦る気持ちが落ち着くかな、と思って。

川田 たとえ悪いねぇ(笑)。

宮川 それがそうじゃないじゃないですか! こういうズッコケ話もあるよ、みたいな話を盛り込みつつ、「女っていいよ!」みたいな感じなんですよ!

川田 ああ、でも出演することは素晴らしい体験でしたね。日常が切り取られて、自分が意図しないシーンを繋いでくれていたりして。(AR三兄弟の)三男が普通にファンとして「サイン下さい」って僕のところへ来てるところも映ってたりとか。あとから見ると、自分では全然意識してなかった関係性が、そこにまとまってたりするんだよね。

宮川 はぁ~。でも6ヶ月も密着されたら、どこを使うかなんて皆目見当付かないですもんね?

川田 うん、全然。編集もタッチできないしね。何時間カメラ回してるっていったかなぁ。ちょっと忘れちゃったけど、トータルで100時間は超えてましたね。


■『情熱大陸』に出たかった!

宮川 川田さんが僕のみみっちさのこともわかって話してくださるから……雲の上の人すぎて、何を話してるのかわかんないっていうのがなくて、ちゃんと歩み寄っていただいて……ありがたいです。

川田 だって、情熱大陸は出たかったもんね!(笑)

宮川 やっぱそうなんですか!

川田 出たかったよ!

宮川 それをみんな言わないんですよー!

川田 だから『情熱大陸への執拗な情熱』の第1話を見た時に、情熱大陸に出たい人って本当はいっぱいいるのに、声高には言えない雰囲気がある、それを国民感情的に出してる、ってのが面白かった!

宮川 うれしいです! でも一冊描くのは大変でした……。

川田 だって1話で終わるネタだもんね!(笑)

宮川 ただ描きだしたらどんどん身辺が変わってきて、描かざるを得なくなりましたね。そうだ、川田さんが情熱大陸に出演したとき、『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦先生のサインが本棚に飾ってあったじゃないですか。カメラが入る前に、本棚の中身って調整したんですか?

川田 サインを飾ることだけは考えましたね。でも本棚の中身は変えなかった。忙しくて。ホントに忙しい最中の密着だったので。あとはカメラの映ってないところは汚いです。普段の生活に入ってるんで、こっちは映さないでねって言って。

宮川 あー、じゃあきれいなところを撮ってるんですね。

川田 「見せ本棚」は後からそういうふうにしときゃ良かったな、と思ったけど、そこまで浮かばなかったですね~。

宮川 僕の場合、出演シミュレーションすると、その事前準備で1日使っちゃいそうなんですよ(笑)。ちなみに自分の放送ってどうご覧になりました?

川田 僕の回は特殊で、後半が生放送だったので、あとで録画を見ました。

宮川 そうですよね。じゃあその録画はもちろんブルーレイディスクに何枚か焼いて、見る用とか保存用とかにしてるんですよね?

川田 してないです。

宮川 えええ! 俺なら絶対する!

川田 ハードディスクには入ってますけどね、たぶん。

宮川 じゃあ突然酔っ払いが入ってきてそのハードディスクを「あ~、ゴメンよ~」って壊したら……怒りますよね?

川田 まあでもどっかしらに映像はあるでしょ(笑)。

宮川 冷静ですね……俺ならブチ切れてるところですよ!!


■できるならもう一度出たい!

宮川 そうだ、ウチの奥さんからの質問、いいですか?

川田 どうぞどうぞ!

宮川 「4年経って、もう一回情熱大陸に出たいですか?」

川田 もう一回出たい! だって今の方がすごいからね。

宮川 あの頃とは技術が違うんですか?

川田 そう、全然違う。2013年に出たときはシステムがダウンしたし、ひどかったですね。でもなんとか大事故にはならなかったですけど。あのときにサーバー設計とか考えたけど、時代的に、スマホ経由でインターネットにつなげることの限界はあっただろうなと思うんです。今はインターネットの速度も速くなってるし、サーバーの技術も上がってきていて、それこそAbema TVとか同時接続で更新してるし。そういうのもあるから、見せたいなっていうのはありますね。でも、情熱大陸って何回も出てる人いるんだっけ?

宮川 吉田沙保里さんとか小栗旬さん、プリンセス・プリンセスはバンドで2回出てますね。だから2回出るシステムはないわけじゃないので、4年経ってARの技術がどこまであの頃と変わったかっていうのは、僕としてはもう一回見たいなと思いますね。

川田 そうか。じゃあなおさら出たいですね!

宮川 この記事がきっかけになって、実現するといいですね!

川田 そうだね。あとね、情熱大陸では秋元(康)さんと少し話したんですよ。秋元さんってカメラ越しにしか会えない人だろうなと思ってたら、カメラの回ってないところで、僕に言ってくれたことがあって。「川田くんさ、AKB48の企画になっちゃったけど、川田くんが考えたようにAKB48使ってね」って言ってくれたの。しかも「川田くんはジョン・アーヴィングの小説が好きなんでしょう? そういう川田くんのイメージを入れた方が、もっとよくなるよ」ってポッと言ってくれて。それで「わかりました」って。

宮川 ……むちゃくちゃカッコイイですね。

川田 でもなんで秋元さん、僕がアーヴィング好きなの知ってたのかなとか、このオン・マイクとオフ・カメラの関係性ってなんだろう、こういう虚と実の間の狭間みたいなところでしか言わない刹那みたいなことがあるんだな、って思いましたねぇ。情熱大陸に出て、これは結構ね、大きかったですよ。カメラには残ってないことだけど、会話を交わしたことで、それも「続き」を考えることになりましたしね。

宮川 うわぁ、ゾワッとする話!

川田 僕からしたら大先輩の胸を借りたつもりだったけど、「そんなスケールじゃないだろ?」って言われた気持ちになって。ゴールじゃないんだぞっていうのを、そんな直接的な言葉じゃないけど、感じましたね。情熱大陸っていう容れ物の中だけじゃないだろ、もっとできるだろ、って話をしてくれたんじゃないかなと僕は思ってるんですけど。

宮川 はぁ~……そのエピソード、漫画にしてぇ!

川田 ハッハッハ!

宮川 秋元さんの横顔描いて、「こんなもんじゃないだろ、川田くん?」って!

川田 そうそう、カーディガン着て、メガネかけてね(笑)。

宮川 それは神様の吐息みたいな感じですよね。沁みるなぁ……すいません、今興奮しすぎてゴクンって唾飲み込んじゃいました(笑)。そしてこれはもしもの話なんですけど、情熱大陸の出演者が「笑っていいとも!!」の紹介システムで決まるとしたら、次に誰を紹介したいですか?

川田 実は宮川くんが情熱大陸に出られたらいいなって思って、福岡さんに無駄にプッシュしてるんだけど。

宮川 え! そうなんですか……じゃあ最後の質問なんですが、僕が情熱大陸に出るにはどういう生活を送ればいいとか、何が足りないとか、上陸の先輩・川田十夢さんから思いっきり言ってもらう、“大陸マウンティング”をしてほしいんです!

川田 あはは。まあ僕のことを考えると、最初に出たいなと思ったときは、情熱大陸のカメラは、全然向いてこなかったですからね。小山先生と真心ブラザーズの対談のときまで忘れてたんですよ、自分のやりたいことに熱中してて。だから足りないことねぇ……あ! まさにこの、僕を密着しているカメラが宮川くんの方を思わず向いちゃうくらいのことをこの場で言うっていうことだよ!

宮川 あああーーー!

川田 「あれ? この人は誰なんだろう?」って思われないと! だいたいこういう場に来る人って、カメラマン兼ディレクターさんですからね。まさにこの瞬間、この会話の中で、僕に向いてるカメラが宮川くんに向いたときに大陸様がやって来るね!

宮川 今日は話が出来すぎてる! ……じゃあ川田さんの密着VTRがオンエアされたときに、僕がちょっとでも使われてたら可能性はあるわけですね?

川田 そうだね、兆しはあるよね! でも今日、このカメラが撮影にくるかどうかは、わからなかったんだよ。

宮川 じゃあこれは俺の引きですね!(笑) 実は来年、ちょっと色々仕事が動きそうで、僕の年になるかもしれないと思ってるんです! いろいろある予定なので……なんとか大陸様に振り向いてほしい!

川田 すごいね! なんか「上陸前」って感じする。揃ってきた。帆を上げて、あとは風待ちだね!(笑) でも面白いじゃない、この会話が残ってさ、4年後とかに「それが今思えば」ってなるんじゃない?


■エンディング

【BGM】Etupirka

(ナレーション)宮川は感動していた。ようやく川田十夢と話ができた。これで浅瀬くらいまでは行けたのではないか……。対談場所を後にして深呼吸をすると、湿った夏の風が頬をなでた。素晴らしい満足感が宮川を包んでいた。と、その時だった。「あ、さっきはお疲れ様でした!」 川田が次の場所へ移動するため、慌ただしく外へ出てきたのだ。しかも密着カメラが横についている。「これから例のタクシーの中の撮影なんで、いいこと言ってきます!」 川田はそう言ってさっとタクシーを止め、カメラとともに乗り込んでいった。宮川は思わずその姿を撮影し、車の影が見なくなるまで見送った。そして強く心に思った。

「今日のことは偶然じゃない……必然だ! 俺も必ず上陸してみせる!」

そんな宮川の姿を、大陸様が遠くから満足そうな表情で見守っていた……

密着のカメラを引き連れて次の現場へ向かう川田氏を激写する宮川氏

 

<構成:成田全>

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川田十夢(かわだ・とむ)
1976年生まれ。開発者、通りすがりの天才。AR三兄弟、公私ともに長男。毎週金曜日22時からJ-WAVE『INNOVATION WORLD』放送中、TVBros.で『魚にチクビはあるのだろうか?』WIREDで『WAY PASSED FUTURE(とっくの未来)』を連載。

 

 

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「このシリーズマジでおもしろすぎる」 ――ぼくのりりっくのぼうよみ(ラッパー) 「感動のラストだった……」 ――はあちゅう(作家・ブロガー) TBS系ドキュメンタリー番組「情熱大陸」への出演を夢見て、いつオファーが来てもいいように「情熱大陸っぽい」生活を送る漫画家・宮川サトシ。その偏愛に満ちた日常を描いたコミックエッセイが、6月22日に待望の書籍化。