人気サイト「オモコロ」で100万PVを達成したコミックエッセイ『情熱大陸への執拗な情熱』が待望の書籍化! それを記念してTBS系ドキュメンタリー番組「情熱大陸」への上陸(出演)を切望する著者・宮川サトシ氏が、上陸経験者のAR三兄弟の川田十夢に、上陸の極意を聞きに行く特別対談企画の第一弾!

左:宮川サトシ、右:川田十夢(AR三兄弟)

 

■オープニング

【BGM】情熱大陸
ピピピュピュポポポポ
ポポポポポポポピピピ……
♪テッテッテーーレッテーーー

漫画家 宮川サトシ

(ナレーション)宮川は焦っていた。『情熱大陸』の上陸人、AR三兄弟の長兄である川田十夢との夢にまで見た対談へ向かっている最中だというのに、さきほどから腹の調子がおかしいのだ。「いつもそうなんですよ、大事な場面の前は」 宮川は力なく笑いながらタクシーに乗った。一刻も早く、トイレに行きたいがために……。現場へ到着した宮川は転がるようにタクシーを降り、対談場所のドアを開けた。「すいません! トイレお借りしてもいいですか!」 どうやら最悪の事態は逃れたようである……

 

■ウサイン・ボルトがいなかったら『情熱大陸への執拗な情熱』は生まれなかった!

宮川 川田さん、ずっと会いたかったんです!

川田 うれしいなぁ。

宮川 僕は新海くん(新海岳人、アニメ監督)とか、森田さん(森田哲生、コピーライター、株式会社Rockaku代表取締役社長)とか、川田さんとの共通の知り合いと仲がよくて、いつも間接的に川田さんの話を聞いたり、フェイスブックで拝見したりしているんですけど、なかなかお会い出来なくて。それで「やっぱり川田さんは『情熱大陸』に護られてるな」と……なんかこう大陸様ドームみたいなものがあって、なかなかタッチできない、と思ってました。

川田 あはは。僕はこれが本になったこと自体がうれしいね。連載1回目から読んでるからね!

宮川 「オモコロ」に第1回が載ったときに連絡いただいたんですよね。

川田 オモコロはもともと好きなんだけど、オモコロだからとか『情熱大陸』だからってことで連絡したわけじゃないんですよ。宮川さんが描いている漫画はずっと好きで読んでたし、『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』を描いた人がこういうタッチのやるんだ、と思ったんですよ。

宮川 「いいもの描いてると通じるんだよ」という川田さんのメッセージは沁みました、ありがとうございます……でも実はこの漫画、始まる前から川田さんが関係しているんですよ。「ねじ山」ってあるじゃないですか?

川田 あー、はいはいはい。僕らが発案した、クリエイターやいろんな業種の人が集まって山登りするイベントね。単純に美味いビールを飲むためだけに山登ろう、っていう(笑)。

宮川 ねじ山にオモコロのスタッフがいるって聞いて、僕も登ったことあるんですよ。そこで漫画の持ち込みをやったんです。そしたら「こんなとこで持ち込みしてるヤツがいるぞ!」って人だかりができて(笑)。そこで「この漫画もいいけど、今描きたいことないですか?」って言われて、『情熱大陸』に出たいってことを描きたい、という話をして盛り上がって、連載に繋がったんです。だからねじ山がなかったら、この漫画は生まれなかったんですよ!

川田 なんかちょっと大陸様的な感じだね、僕(笑)。

宮川 見た目似てますもんね(笑)。

川田 (髪をさわりながら)これはたぶんね、大陸様の呪いだと思うんですよ(笑)。ねじ山はダジャレみたいに始まったものなんですよ。深夜テレビを見ていたら、ウサイン・ボルトが『世界陸上』で新記録出して、「やった!」と思って。それでこの喜びを誰かに伝えたいなと思ったんだけど、本人に連絡するのはスゲー大変だから、どうしようどうしようと考えて、「ボルト」だから、とりあえず自分の周りのネジとか鉄っぽい名前の人におめでとうって言おうと思って、佐藤ねじくん(プランナー、アートディレクター。元面白法人カヤック、Blue Puddle Inc.代表)と、森田哲生くんに「おめでとう!」って、そんなに面識もなかったんだけど、急にツイッターで送ったら「ありがとう」って返ってきたんです(笑)。何のことだかわかんないはずなのに。それでめちゃめちゃいい人たちだなと思ってやり取りしてたら「じゃあ山登ろう!」ってことになって。それくらいの勢いで始まったんですよ。

宮川 じゃあボルトが新記録を出していなかったら、この漫画もなかったのか!

川田 だいぶかいつまんだけど、まあそういうことだね(笑)。

宮川 へーーー。ありがたい話です!

 

■“上陸前”には何がある?

宮川 『情熱大陸』って最初どんなふうにオファーが来るんですか?

川田 『宇宙兄弟』を描いている小山宙哉先生の密着を『情熱大陸』がしてたんですよ。それで『宇宙兄弟』と、僕たち「AR三兄弟」と「真心ブラザーズ」っていう“3大兄弟”が結集して、ミュージックビデオを作る対談をしているところにカメラが来たんです。居酒屋とかで隣の席の方が盛り上がってると、こっちも敢えて同じ話題で盛り上げたいってなるときないですか。そういうニュアンスで、カメラは小山先生に着いてるけど、僕もちょっと面白いところあるよ、ってとこを見せないとなと。それは真心ブラザーズのYO-KINGさんも同じで、俺らわりと面白いところあるよ、って感じでしゃべってたの。

宮川 あっはっは。

川田 そしたらだんだんカメラがこっち向いてきて。それを担当のディレクターさんがダメ元で「今日撮ったこの人、面白くないですか?」って『情熱大陸』のプロデューサーの福岡(元啓)さんに言ったら、「なんなの、この人?」と。それでちょっと試しに撮ってみようか、って1、2週間カメラが着いたんです。

宮川 おお、それは「大陸呼び込み」ですね!(笑)

川田 他の人の密着カメラがこっち向いたっていうね。こっち向いてホイ、っていうか(笑)。

宮川 それカッコよくないですか! 近くに来たカメラを向かせる力があるから、まあ必然といえば必然なんですけど……いやぁ、でもその間接の間接で今のこの場があるから、こっちにもカメラが向いてきてるんですかね? なんか自分も大陸の近くまで来た感じが!(笑)

川田 それで試しに撮った後に、実際に会ってみようかってことになって、福岡さんと飯食ったんです。その場には「『情熱大陸』超出たいんですよ!」という人が何人かいて、実際に話も面白いから、「福岡さん、この人たちの方が面白いから撮った方がいいですよ」って、僕はそんなにグイグイ行かなかったんですよ。

宮川 はー、グイグイ行かなかった!

川田 面白いと思ってもらったのはありがたいけど、ハイハイハイ!パスパスパス!みたいな人が出るんだったら、そういう人が出た方がいいんじゃないかなって、僕はむしろ消極的になってしまって。それで、まあ「大陸予選」に残っただけでもいいじゃないか、とりあえず浅瀬くらいまでは来たんだし、と思って。そしたらその3日後に連絡が来て「密着したい」と。ちょっと意外でしたね。「情熱愛」が試されたんですかね(笑)。ちょうどその時に大林宣彦さんの本を読んでて、映画の題材を次何撮ろうかなって考えた時に、カメラがそっちの方を向く、っていうようなことが書いてあったんです。だからカメラが自分の方を向くっていうのは、時代がこっちに振り向いた、やっぱ僕でしょ、みたいな気持ちになったね。こんな抜けのいい開発者いないし、天才って自覚がある人はそんなにいないから(笑)。だから福岡さんに会ったときに前半は「僕を出したほうがいいですよ」って言ったけど、出たい人が出ればいいんじゃないかなって、食事から帰る頃はそんなにゴリゴリしてなかったですね。

宮川 ゴリゴリしてないのは大事ですよね。でも自分の方に『情熱大陸』のカメラが向いたというのは「尊い気持ち」になるんじゃないかなぁ、と思うんですよねぇ。それでどんな口説き方だったんです?

川田 『情熱大陸』って半年に一回くらいスペシャルをやるんですよ。半年に一回挑戦するって福岡さんは決めてるみたいで、その挑戦の回で僕をやりたい、と言うんです。それも大仕掛けを。僕が『情熱大陸』を拡張するという趣旨で、時間かけてやりたいって言われて「マジか!」と。でも一方で「そうだろうな」と思いながらね(笑)。

宮川 川田さんは福岡さんの想像を超えてくる、普通には思いつけないところにいた人だったんでしょうね。そこでものすごい興味を抱いたから、目が離せなかったんじゃないかな。実際いい回だったんですよ、川田さんの回って! ちゃんとご実家へも行かれたり、『情熱大陸』のいいところが全部収まってる。でいて生放送でARを入れるといういつもと違うスペシャルっていう。

川田 でも出るって決まってから僕、企画書とか書きましたらからね、『情熱大陸』向けに。

宮川 ほー。

川田 僕だったらテレビをこう拡張する、っていう。それで最初は『水戸黄門』の由美かおるさんの入浴シーンを拡張して、スマホを越しにテレビを上から見たり下から見たりすると視点が変わるとか、そういうネタをいっぱい出したの。そしたら福岡さんが「川田くんの考え方は深夜枠。これ『情熱大陸』だから」って言われて。で、最終的にはちょっと企画出し過ぎて、落とされ過ぎて、僕は完全に拗ねちゃって、もういいですよ、みたいになっちゃって(笑)。で、秋元(康)さんと話して、AKB48のリアルタイム総選挙みたいなことだったら面白いかなってことになったんです。あれは2013年だったけど、時代を先駆けてたと思いますね。

宮川 福岡さんにはかなり無茶振りされたんですか?

川田 されましたよ!(笑) でもその無茶に応えたと思いますけどね。僕らがやったのは、スマホのアプリでネットを介して視聴者とテレビをつなぐことです。テレビの画面を分割してAKB48のメンバーを映して、それを見た人が自分の好きな人に投票して、見たい人が多ければ多いほどそのメンバーのワイプが大きくなるんです。それはいまだに僕は正解の仕組みだなと思ってます。ドラマとかも人気ある脇役の人の出番が増えるとか、ドキュメンタリーでも今すれ違った人が面白そうだなと思ったらその人にフォーカスしてもいい。そういう人気があるものにフォーカスするのって、インターネットだと当たり前だけど、テレビではできないと思って2013年にやった。ただいまだにテレビはそれをやってないですよね。でも2020年のオリンピックを契機にいろいろ変わるかな、と思ってて……ってこういうカメラが向きそうな熱い話は『情熱大陸』か飲み屋ですればいい話ですね(笑)。

<構成:成田全>

※第2回は7月19日に公開予定です。

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川田十夢(かわだ・とむ)
1976年生まれ。開発者、通りすがりの天才。AR三兄弟、公私ともに長男。毎週金曜日22時からJ-WAVE『INNOVATION WORLD』放送中、TVBros.で『魚にチクビはあるのだろうか?』WIREDで『WAY PASSED FUTURE(とっくの未来)』を連載。

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