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2015.10.23

「しんかい6500」女性初のパイロット・外崎瞳さんインタビュー/中編 (聞き手・編集部)

有村架純ドラマで注目!調査船パイロットが語る仕事現場での苦労

朱野 帰子

有村架純ドラマで注目!調査船パイロットが語る仕事現場での苦労

「読後感が爽やか」「深海生物に会いたくなった」「秀逸な幻想文学」「元気になれるお仕事小説」――。2012年の発売以来、多くの読者を惹きつけた人気深海小説『海に降る』(朱野帰子・著)がこのたび文庫版になりました。有村架純主演での連続ドラマも放送中!WOWOWにて2015年10月10日よる10時~〈全6回〉)ここでは『海に降る』文庫版がさらに楽しく読める情報をお知らせします。

『海に降る』の主人公・深雪は日本人女性初の深海調査船パイロットを目指す訓練生です。実際に日本人女性初のコパイロットとなった外崎瞳さん(JAMSTEC、現在は広報部所属)のインタビュー中編をお送りします。調査船運航チームの一員となった外崎さんが、「向いていない」と思ってしまった瞬間とは!?

前編はこちら
 

(C)JAMSTEC

――外崎さんは1年間の事務職を経て、ついに調査船運航チームの一員になったわけですが、整備の仕事を覚えるのは大変でしたか?

外崎:そうですね。最初は先輩たちが整備をするために必要な工具の準備などから覚え始めました。そのうちに先輩が「じゃあ今日はこれをやってみるか」と、ひとつずつ整備をやらせてくれて、それができると「次はこれはもう自分でできるよな」と徐々に自信をつけさせてくれました。
一番よく教えていただいたのが、50歳ぐらいの職人肌だけれど優しい先輩です。見た目は実年齢よりかなり若々しいです。余談ですが、船に乗っている人はみんな少年みたいに若々しい方が多かったです。航海に出ている時間が長く家族と離れているから、所帯じみた感じがしないのかもしれません。


――先輩の指導で成長していくところは、小説の深雪と似ていますね。深雪は厳しく指導される場面もありますが、外崎さんも上司や先輩の言葉で印象に残っていることはありますか?

外崎:人生で初めて深海に潜った訓練潜航の後、ものすごく怒られたことがあります。深海生物が次々に現われることに感動して、覗き窓から外ばかり見ていたのです。本当は先輩の手元を見て操縦を学ばなければならなかったのに、そちらは全然見ていませんでした。
潜航が終わってから上司に怒鳴られました。「どうせお前は深海に1回潜れれば、それでよかったんだろ」と。上司は私をそんなふうに見てたのか、とショックでした。でも確かにそうだったかもしれないとも思いました。その頃の私は仕事に対してめげそうになっていて、「せめて1回深海に潜るまでは頑張ろう」と内心考えていました。その気持ちを上司には全部見透かされていたのだと思いました。
ただ実際に潜ってみると、潜る前の気持ちとは裏腹に「訓練生じゃなくて、コパイロットとして潜ってみたい」という気持ちが強くなって、頑張る覚悟が決まりました。


――調査船の運航チームについて聞かせてください。「しんかい6500」の運航チームは何人ぐらいいらっしゃるのですか?

外崎:日本海洋事業の深海技術部には35人所属していて、その35人が「無人探査機〈ハイパードルフィン〉」「無人探査機〈かいこう7000Ⅱ〉」「有人潜水調査船〈しんかい6500〉・深海巡航探査機〈うらしま〉」の各チームに分かれます。私が所属していたときは「うらしま」と「しんかい6500」のチームは一緒で、15人ぐらいでした。
1回の調査航海で母船に乗り込むのは15人のうち、12人ぐらいです。あとの3人は休暇を取ったり、他のチームに派遣されたりすることもあります。
だいたい3週間の調査航海だとしたら、天候や海況や潜航場所によりますが深海には7回くらいの潜航予定が組まれていました。「しんかい6500」には1回の潜航でパイロットとコパイロットが乗りますから、12人のメンバーがだいたい1回か2回はローテーションで深海に潜れることになります。
メンバーはみんな自分が乗り込む順番を心待ちにしています。明日が自分の番だと楽しみで仕方ないですし、海が時化ないように心の中でずっと願っています。


――その後、訓練生からコパイロットになった外崎さんですが、以前のインタビューで「パイロットの仕事が向いていないと思うことがあるが頑張りたい」とおっしゃっていますね。

外崎:じつは長期航海が得意じゃないんです。船酔いはしないのですが、何週間も外の人に会えないのは精神的にきついなぁとよく思います。とくに船の中に自分以外の女性がいないときはつらかったですね。他の人はそんなにつらそうに見えないので、私は向いていないのかなと思うことがありました。長い時間をチームのみんなと過ごすのは楽しいのですが、やっぱり下船の日は待ち遠しいです。
あとは、電気系が苦手だというコンプレックスがいまだに抜けないです。この職場は電気系のプロフェッショナルが集まる場所なのに、自分にその力が足りていないという思いは強くあります。これは克服しないといけないですね。私はもともと生物が好きで、深海に潜って深海生物を見たいし、新しく発見したいという想いが仕事に対するモチベーションです。その仕事の精度を高めるためには電気や機械の勉強が絶対に必要なので、これはもっと頑張ります。
それからもともと雑な性格なのが問題ですね。パイロットの仕事は、整備でも操縦でも丁寧に正確に作業することが大事です。個人的な意見ですが男性の先輩や同僚のほうが緻密に作業をする印象があります。私の仕事ぶりはよく「大胆だね」と驚かれたり、呆れられたりしています。
そういうわけで向いていない要素はたくさんあるのですが、周りの上司や先輩、同僚などみなさんのフォローのおかげでこれまでどうにか続けてくることができました。

 


インタビュー後編につづく! 外崎さんが講演会の場で冷や汗をかく事態に!?
後編は10月28日(水)公開の予定です。

 

外崎瞳(とのさき・ひとみ)
1985年茨城県生まれ。2008年北海道大学水産学部卒業。同年よりJAMSTECに所属し、その後日本海洋事業に出向して日本人女性初の深海潜水調査船コパイロットになる。現在はJAMSTEC広報部に異動。
 

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関連書籍

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