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2015.10.18

「しんかい6500」女性初のパイロット・外崎瞳さんインタビュー/前編 (聞き手・編集部)

有村架純演じる調査船パイロットの仕事とは?

朱野 帰子

有村架純演じる調査船パイロットの仕事とは?

「読後感が爽やか」「深海生物に会いたくなった」「秀逸な幻想文学」「元気になれるお仕事小説」――。2012年の発売以来、多くの読者を惹きつけた人気深海小説『海に降る』(朱野帰子・著)がこのたび文庫版になりました。有村架純主演での連続ドラマも放送中!WOWOWにて2015年10月10日よる10時~〈全6回〉)ここでは『海に降る』文庫版がさらに楽しく読める情報をお知らせします。

『海に降る』の主人公・深雪は日本人女性初の深海調査船パイロットを目指す訓練生です。今回は、実際に日本人女性初のコパイロットとなった外崎瞳さん(JAMSTEC、現在は広報部所属)にお話しを伺いました。前編では、外崎さんがパイロットを目指すことになった経緯が明かされます。小説やドラマで注目を浴びている深海探査の現場では、なにが起きているのでしょうか!?

(C)JAMSTEC

――『海に降る』の主人公・深雪は深海調査船パイロットを目指しています。実際に女性初の「しんかい6500」コパイロットである外崎さんは、本書を読んでどんな感想を持ちましたか?

外崎:共感する部分がとても多かったです。JAMSTEC(海洋研究開発機構)のことも深海のことも、驚くほど現実と同じ世界が描かれている印象です。
なかでも登場する研究者の姿がリアルでした。著者の朱野さんは研究者に取材なさったそうですが、「研究者は本当にこういうセリフを言ってる!」と思う場面が多くありました。調査船を操縦するパイロットはローテーションで決まるので、研究者側から指名はできないのですが、物語に出てくる研究者のセリフのように「パイロットを選べたらいいのに」と言われてしまうこともあります……。
研究者は大変厳しい審査を潜り抜けて潜航調査の権利を勝ち取っているので、自分が深海に潜るときは腕のいいパイロットと組みたいという希望を、当然持っているんです。


――外崎さんは、いつごろから深海に興味があったのですか?

外崎:小学校高学年から中学生ぐらいの時期に、ダイオウイカが出てくる本を読みました。たしか写真ではなくてイラストの入った本で、それを読んで衝撃を受けました。「え! 目玉が40センチもあるイカがいるんだ!」と、ダイオウイカの巨大な目玉のことが強く印象に残りましたね。
もともと生き物が好きで、その頃の夢は獣医になることでした。生き物全般への興味の一環として、深海生物は特殊で面白いなぁと思っていたんです。深海にかかわる仕事をしようとは、そのときは全く思っていませんでした。


――じゃあ将来は獣医になりたいと考えていたのに、いつの間にか目指す方向が深海の分野に変わったのですね。

外崎:受験生になり、獣医学部の受験が難しいと知ったのです(笑)。当時の生物の先生の影響もあり、推薦入試で北海道大学の水産学部を受験して合格しました。水産学部に決めたときからJAMSTECのことは憧れの場として頭にありました。
JAMSTECに初めて行ったときのことはよく覚えていて、高校3年生のクリスマスイブでした。周りの友達は受験生だから誰も遊んでくれなくて、ひとりでJAMSTECの横須賀本部に見学に行ったんです。「私、イブになにやってるんだろ」とは少し思いましたけど(笑)。
そのときに「しんかい6500」の存在を改めて認識しました。「ああ、これに乗れば深海生物に会えるんだ。じゃあ将来ここに来よう」と、単純ですが、それまで漠然とした夢だったものが目標に変わりました。


――女性初のパイロットを目指すということに、周りから反対はあったのでしょうか?

外崎:反対というより「無理だ」ということはさんざん言われましたね。両親は「やりたいならやってみろ」という感じでしたが、私がパイロットという仕事を深く理解せずに「なりたい、なりたい」とばかり言っていたので、その点は注意されました。私の苦手な物理が必要な仕事ですし、整備の技術の腕も必要です。そういったことに対して私の理解と勉強が足りないと、父には言われました。
家族以外の人からは「無理に決まってる」という反応が多かったです。周りからそう言われても、なぜか自分ではなれる気がしていたので、絶対なってやろうと思っていました。


――そして見事JAMSTECに就職したのですね。女性の採用自体は少ないのですか?

外崎:JAMSTECの新卒採用枠には研究者枠、事務職枠、技術職枠があります。研究者枠には博士課程を出た人たちが毎年何十人単位で入ってきます。事務職と技術職は年に数人採用していて、男女比は年によりますが、2対1ぐらいです。
私の場合、事務職と技術職の同期が12人ほど、そのうち女性は5人いるので、やや採用人数の多い年でした。私は技術職枠で採用試験を受け、面接の場では「パイロットになりたいです」と言いました。それで受かったのだから当然なれるものだと思っていましたが、実は、JAMSTECの職員からパイロットになることはできないと就職してから知りました。
注:以前はJAMSTECの職員からもパイロットを輩出していたが、現在「しんかい6500」の運航業務は日本海洋事業(株)に全面的に運行委託されている。

就職して1年目は、調査船に乗る研究者を決める審査委員会の、事務局の仕事をしていました。けれど頭の中では「調査船運航チームに行くにはどうしたらいいか」ということばかり考えていました。
審査委員会には理事たち偉い方々が集まるので、飲みの席でお酌をしながら「私、パイロットになりたいんです!」と訴えたりもしていました。
パイロットに必要な電気系の資格を取ろうと思い、勤めながら夜間の大学に通おうと思いましたが、職場が辺鄙な場所なので講義の時間に間に合いそうなところがなくて……。それで、ふと見たら周りには海洋工学系の研究者がたくさんいるじゃないですか。贅沢にも研究者をつかまえて勉強を教わっていました。


――研究者のみなさんは忙しいのに、外崎さんに協力してくれたんですね。

外崎:「女でパイロットを目指してるなんて面白いね」「やりたいなら頑張ってみたら」と言ってくれる味方を見つけて、やや強引に頼った感じです。研究者以外でも、運航チームが海洋調査から戻ってきたタイミングで「整備場においで」とひっぱってくれる先輩がいたりと、応援してくれる人がいました。
そんなふうにして1年が過ぎたある日、上司から日本海洋事業への出向を告げられました。とうとう運航チームへの配属が決まったのです。

 


インタビュー中編につづく! 運航チームで外崎さんを待ち受けていた壁とは!?
中編は10月23日(金)公開の予定です。


外崎瞳(とのさき・ひとみ)
1985年茨城県生まれ。2008年北海道大学水産学部卒業。同年よりJAMSTECに所属し、その後日本海洋事業に出向して日本人女性初の深海潜水調査船コパイロットになる。現在はJAMSTEC広報部に異動。
 

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