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2014.11.27

新刊刊行記念・特別編

私たち、「幸せ」になるのが嫌いなんだと思った夜

鈴木 涼美

私たち、「幸せ」になるのが嫌いなんだと思った夜

 

 お待たせしました。鈴木涼美さん、久々の登場です。5年半の昼のおねえさん(=会社員)生活にピリオドを打ち、その胸中に期するものは……。

 

 何も私はまわりのみんなを撹乱(かくらん)しようとか、押したり引いたりでオトコをいらいらさせようとか思っているわけじゃなくて、ごく自然にナチュラルボーンで何の悪気もなく、言ってることがしょっちゅう変わるオンナなのである。結婚したいとかしたくないとか、子供だけは欲しいとか子供いらないからパートナーが欲しいとか、オトコは金持ちがいいとか背が高くて関西弁なら貧乏でもいいとか、いや実は背が低いオトコの方が深く愛せますとか、それくらいの変動は日常的にいつでも起こる。そんな一貫性を求められても困るっていうか、そもそも私が一貫して◯◯だからって誰が得するわけでもないし、誰に褒められるわけでもないなら、そんな俺哲学通すためだけに、目の前に次々に現れる魅力的な別の選択を無視するなんて私には考えられない。

 幻冬舎plusで恋愛エッセイの連載を始めたのが今年の春で、だから連載中にも私の思想はドングリに負けじとコロコロ転がり、カレシにハンバーグとか捏(こ)ねるのはもうさすがに飽きたしいいや、という気分の時もあるし、愛するカレシがいるならもう別にネイルもしないでいいし化粧品はマツキヨで買います、という気分の日も依然ある。この半年間くらいの恋愛事情を言えば、なんか不動産屋の元カレにそろそろ戻ろうよキャピ❤とか言われてそれもいいかもキャピ❤とかいうテンションに始まり、いやそう言えばコイツとは友達としてはなんか上手くいくんだけど恋愛関係に陥った瞬間にそのファッションセンスから何から気に食わなくなるんだというのを思い出してあえなく破綻し、「いや、彼のことはもう恋愛とかじゃなくて人として好きなのキャピ❤」とかまわりに言っていた黒髪の関西弁のオトコに壁ドンされたら離れられなくなってでもなんか女の子扱いされなくて悲しんでいる最中、10歳以上年上の髪が薄い学者に俺は君とこういう関係を10年続けたいと言われてなんかそれもいいかもキャピ❤とか思ったものの彼が言うこういう関係って平たく言うと不倫関係なんじゃないかと冷静になり、なぜか今は前出の関西弁さんとは別の背が高い関西弁のオトコと付き合っていますキャピ❤

 先週、大学時代からの親友のマオにゃんと、私の東京の姉であるマコねえさんと、3人で深夜の歌舞伎町ブラックホールで肉とか焼きながら話していて、本当の本当に私たちは「幸せ」になるのが嫌いなんだと思った。マコねえさんは最近家にちょくちょくやってくる10歳下の内装業のオトコの素行の悪さにイライラしていて、マオにゃんは同棲中のオトコが巷で性病の噂をたてられていることにイライラして、私は私で明らかに私の他にオンナがいる関西弁のオトコにイライラしてはいたが、勿論誰もそのイライラの解消自体を求めているわけでないのは私たち自身がよくわかっていた。イライラしていないとセックスも夜遊びもする気がおきないし、だからこそ私たち、そのトラブルが解消されてしまうのが怖い。

  私は言っていることがころころ変わる信用ならないオンナだけれども、多分私たち、そう簡単に「幸せ」になんかならないし、なってやろうって気もないのは、今のところブレていない。オトコが幸せにしてくれるとも思わないけど、オトコ抜きで完結するような幸せはいらない。そんな「不幸」な私たちをやっぱり私は大好きで、だから私の本を読んで「うう、鈴木涼美もその周囲もかわいそうな奴らだ」なんて思ってしまうウッカリさんは、圧倒的に正しいし、そこに私たち何の異存もありません。ただ「不幸」な恋愛の底なしの楽しさを、知ってる私たちの方がシアワセだなっとか自惚(うぬぼ)れてしまうけど。

 

【編集部からのお知らせ】

11月17日発売 46判上製 定価(本体1400円+税)

 待望の新刊『身体(からだ)を売ったらサヨウナラ~夜のオネエサンの愛と幸福論~』が本日発売になりました。「乳筋」(←本連載のこと(笑))を改筆し、あらたな書き下ろしを加えた1冊です。ますます赤裸々。ますます健気。ますます刺激的になった書籍版「乳筋」をぜひご一読ください。キャピ❤

 

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→鈴木涼美さんの新連載「愛と子宮が混乱中――夜のオネエサンの母娘論」はこちら

 

関連書籍

鈴木涼美『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』
電子書籍はこちら
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鈴木涼美『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』
書籍はこちら(amazon)

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