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2014.11.20

キリンチャレンジカップ
VSホンジュラス/VSオーストラリア

ヤシキ ケンジ

キリンチャレンジカップ<br />VSホンジュラス/VSオーストラリア

渋谷のスポーツバーは、この男にとっての「アウェー」だった……。

 

 ホンジュラス、オーストラリアの2戦合計で8得点1失点の2連勝で、W杯イヤーの2014年も幕を閉じた。
 今年も家のテレビの前に座り込んで酒をちびちびと舐めながら引きこもり観戦を続けてきたが、先のホンジュラス戦は編集者Aさんと渋谷のスポーツバーに行って試合を観た。
 代表の試合をスポーツバーで観るのは、随分と久しぶりだった。
 私がスポーツバーや試合会場に出来るだけ行かない理由はいくつかあるのだけれど、行かない理由の1つが「みんなで一緒に応援しようぜ!」というノリが苦手だということ。
 それはサッカー観戦のみならずコンサートなどでもそうで、客席のほぼ9割の人たちが手を挙げたりリズムに乗って明るく楽しそうにしているなか、私はというと、ずっと腕組みをしたままぼーっと観ていることが多い。オペラグラスでじーっとステージを見守る人と同じ部類かも知れないと思っている。

 昔コンサート中にじっとステージを観ていたら、後ろの席から女の「なんか前の人ノリ悪くなーい?」と偏差値30以下の阿婆擦れ声が聞こえてきたりもしたこともあった。
 むしろそのとき、私の心の中はノリノリで楽しんでいたりしたので、不愉快な気持ちを味合わされた腹いせに噛んでたガムを阿婆擦れの髪の毛に擦り付けてやろうかと思ったが、大人しく終了までじーっとしていたこともある。
 要するに自分が一見すると「ノリが悪い」タイプに見えるのは重々承知している。
 けどあれだ。不謹慎な例えかも知れないけれど、悪い事をした人が捕まって、マイクを向けられた近所の人が「まさかあの人が……」「そんな風には全然見えなかった」というパターンみたいなもんである。
 見た感じからは分からないほど内面ではノリノリだったりすることが多い。
 そしてスポーツバーでノリが悪い奴なんていうのは、女子風呂に入ってきたオカマのような扱いを受けるのは容易に想像がつくので、できるだけ近寄らないようにしてきたという次第である。
 当日になってためらったりしてみたが、Aさんの「アウェーだと思って行ってみよう」という言葉に後押しされる形で、まあ年内終盤の代表戦だしということで繰り出してみた。
 
 
 店に入ってみると、試合前で青いユニホーム姿の若い男女がちらほら居たが思っていたよりも少なくて10数名ほど。
 男女混合のグループもいれば、男だけ女の子だけの少数グループもいる。
 Aさんと私は共に30代半ばで、おそらく最年長の部類だったと思う。
 いや、正確にいうと確実な最年長が1人いた。
 スポーツバーの店長とおぼしきMCのおっさん(白髪の老眼鏡の推定50代)である。
 コイツが困った奴だった。要するに苦手なタイプだったのである。
 試合前に「みんなで円陣組もうよー」とマイクで叫びだし、散りぢりに座っていた若者グループがよそよそしくオッサンの周りに集まりはじめている。
 見渡すと、円陣に参加していないのはAさんと私だけ。おっさんは目ざとくこちらを見つけ一致団結を求めてくる。「お兄さんたちも来て!」
 これはもう観念せねばいけないのか。いや、こんなこともあろうかと実は上着の下に背番号10のユニホームも着てきた。仕方なしに上着を脱ぎ重い腰をあげようとした。
 すると横に座ってやきそばを食べていたAさんが、おっさんに向かって手で制し「いま、飯食ってるんで!」と力強い口調で拒絶したのである。

 おっさんも、その言外の圧を読み取ったようで、「ああ、そう…。じゃあしょーがないね」と、集まった若者たちと円陣を組んでいた。
 立ち上がり、というか試合前から主導権を握ったAさんは、試合が始まってからも続くおっさんの「なにかとみんなで一緒に声出そうよ!」という誘いをことごとく無視し続け、もちろん私も便乗して無視。
 よくよく店のHPを見てみると「みんな一丸となり一緒になって応援しましょう。静かにゆっくり観たい方はご遠慮ください」という趣旨の注意事項が書かれていた。
 それも完全無視を決め込み、アウェーでも揺るがない断固たる決意を貫き通した。
 おっさんは試合中もマイクを握り、松木安太郎の劣化版みたいな実況をしては観客をアジっていたが、反応が薄いとドッと疲れた表情を見せたりするもんだから、心の中でほんのちょっとだけ励ましたりもした。
 試合は6-0という大勝で終わり、我々も良かった良かったとホロ酔い気分で帰り支度をはじめていると、おっさんが「よーし! じゃあみんなで記念撮影するから集まれー!」と叫びだしたので、Aさんと私は急いで店の出口に向かって行った。
 帰ろうとしている客を必死で呼びとめるように「写真撮ろうよ、写真~!」と叫ぶおっさんには申し訳ないが、私は写真に撮られるのも嫌いなのである。
 とまあ、久しぶりにホーム(家)から出てアウェーの厳しさを身をもって知ることができた。
 
 今回のW杯でアジア勢が1勝も挙げれず、出場枠が減らされてしまうという噂も絶えない。そんなアジアで苦戦していると、W杯の1勝がまた遠くへと霞んでいってしまうのだ。
 1月からのアジア杯で代表チームには、私のような内弁慶ではなく、アウェーでも物怖じしない姿を見せて欲しいと強く期待している。
 

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