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文化系ママさんダイアリー

2009.08.01 公開 ツイート

第三十六回

「ママさん的iPhone活用法」の巻 堀越英美

 子連れの一番の苦労は、電車やレストランといった公共の場でいかに子供を大人しくさせるか、にあるような気がする。叱ればいいじゃないかと言われそうだが、小さい子は暴走機関車のようなもの。発散しそこねた衝動がグズリに向かって余計面倒なことになるだけなので、親のほうで気をそらす方法を考えるしかない。思えば今まで、いろいろなものに頼ってきた。木のパズル(すぐに飽きる)、絵カード・絵本(重い)、携帯電話(勝手に電話をかけて大迷惑。ロックすると画面が変わらないのですぐ飽きる)。化粧用コンパクト(うっとり鏡を見ながら自分の顔をパフパフする姿は愉快だが、ファンデが粉々に……)。どれもこれも、一時しのぎにしかならず。しかし、もう悩む必要はなさそうだ。なぜなら今日、iPhoneを買ってしまったから。

 すでに娘はiPhoneが大好き。電車やレストランで夫がiPhoneを差し出すと、暴れ1歳児がみるみる大人しくなる。手持ちの写真や動画を見せているだけなのだが、画面をタッチだけで画像がくるくる切り替わるのが楽しいらしい。さすがメカオタク(夫)の子だねえ、としか思っていなかったが、つい先日法事の会食の席で、いつものように夫がiPhoneを取り出して娘を手なづけたときのこと。それを見た弟が、娘の3倍くらいの機動力で暴れ回っていた甥(2歳男児)に自分のiPhoneを見せ、大人しくさせることに成功した。幼児黙らせグッズとして、かなり汎用性が高いみたいだ。

 すっかり感心して、夫に「iPhoneの育児活用法書いてよ~私の代わりに」と依頼したら「ヤダ」と即答されてしまったので、仕方なく機種変更してiPhoneユーザーとなり、自分で書くことにした次第。買ったばかりで活用法とは図々しいにもほどがあるが、入力が面倒すぎて1度しか携帯メールを打ったことがないほどの携帯オンチでもここまでがんばれる、という感動実話として読んでもらえればありがたい。だからあなたも生きぬいて! 偏差値25からの東大受験!


(1)YouTubeを見せる
 夫がYouTubeの動画を見せているのを見て、さぞかしコンバートなど大変なのであろうな、と思っていたら簡単だった。YouTubeプレイヤーが搭載されているので、Wi-Fiで接続できる環境なら何の準備もなくパソコンと同様に見られる。ネットに接続できないときも、あらかじめパソコンでYouTubeから動画をMP4形式でダウンロードしておいて(その方法はwebのあちこちで紹介されてるので省略)、iPhoneと同期させれば簡単に取り込まれる。子供のお気に入りの動画をいくつか仕込んでおけば、これだけでしばらく間が持つ。


(2)子供向けアプリで遊ばせる
 英語圏ではすでにiPhone=子供あやしグッズとして浸透しているらしく、iTunesストアで子供向けアプリがたくさん販売されている。片っ端からダウンロードして娘(もうすぐ2歳)を相手に試してみたなかで、反応がよかったものをいくつかピックアップしてみた。
(各アプリのリンクは、iTunes Storeへ繋がります。また価格などは2009年07月29日のもので変動することがあります)

●SmackTalk!
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=306752436&mt=8

 

 販売元:Marcus Satellite
価格:115円
画面上のモルモットや子犬、猫、チワワに話かけると、同じセリフをオウムのように返してくれる。これが子供にウケないはずはなく、延々と「こんにちは!」「あしょぼ!(遊ぼう)」とペコペコしながら話しかけている。

●Balloonimals Lite
販売元:IDEO Toy Lab
価格:無料(有料版は230円)
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=307816723&mt=8
iPhoneのマイクに向かって息を吹きかけると、画面上の風船がふくらみ、iPhoneを振ると恐竜のバルーンアートになるというアプリ。恐竜に触って遊んだり、空気入れでどんどんふくらませて破裂させたりできるので、2歳児ウケがいいとネットでも評判。しかし精密機械に遠慮無く口をつけようとするので、保護シートと保護ケースが必要になるかもしれない。有料版「Balloonimals」は魚、犬、カニ、ユニコーンなどいろいろできるらしい。

●Boite a Meuh(Moo Box)
販売元:oWorld Software
価格:無料
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=300979900&mt=8
35種類の動物のサムネイル一覧から好きな動物をタッチすると、写真が拡大されて鳴き声が出る。これで喜べるのだから子供はすごい。

●FreePiano
販売元:Terajima Joho Kikaku
価格:無料
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=295719271&mt=8
ピアノアプリは数あれど、無料なのに2オクターブ対応、トイピアノの音も出せるということでこれを選んだ。ドラムパッドの音が出る「FreeDrumPad」というアプリもある。

●Bubbles
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=284288607&mt=8

販売元:Hog Bay Software
価格:115円
指でなぞるとシャボン玉が次々に現れ、iPhoneの傾きに合わせて落下していく。シャボン玉にタッチするとポコッという音ともにはじけて消える。音が出なくても面白いので、静かな場所でも使えそう。

●Doodle Kids
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=302828886&mt=8

販売元:Virtual GS
価格:無料
シンガポールに住む9歳の男の子が妹のために作ったということで話題になったお絵かきアプリ。指でなぞると、三角や四角などのカラフルな記号で絵が描けるだけのシンプルなツールだが、2週間で4000人にダウンロードされたとか。制作者が2歳の頃からコンピュータを使っていたというエピソードは、「メカ好きの我が子もいつかはiPhoneアプリを作って一儲け……?」という夢想をかきたててくれる。

●Klaus
http://itunes.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=295724863&mt=8

販売元:ROOT9 MedialLab GmbH
価格:無料
鼻歌を歌いながら歩道を歩いている酔っぱらいが転ばないようにiPhoneを傾けながら酔っぱらいを誘導するゲーム。子は酔っぱらいが転ぶたびにバカウケ。子供向けアプリじゃないですが。

 1~2歳児だけじゃなく、仮想ガラガラ「baby rattle bab bab lite」(無料)、胎内音に近い音を出して赤ちゃんを泣き止ませる「BabySoothe」(115円)といった0歳児向けアプリもある。もう少し大きい子向けのアプリなら、「The iPhone Mom」(http://www.theiphonemom.com/)という英語圏のママさんブログ(4歳児含む4人の子供を養育中)がいろいろ紹介している。絵本アプリもたくさんあるようだが、アメリカナイズされた大味なイラストに腰が引けてしまい、一つもダウンロードせず。探せば面白いものが見つかりそう。


(3)フォトライブラリを図鑑扱い
 絵本アプリがあるのだから図鑑アプリだってあるだろうと思って探してみたが、あまり見つからない。要は写真があればよいのだろうと、試しにパソコンでダウンロードした昆虫写真をいくつかフォトライブラリに入れて見せてみたら、案の定食いついてきた。画像選びもまた楽しい。次は深海魚図鑑、いや妖怪図鑑でも作ろうか。もはや子供を黙らせるという当初の目的から大きく外れているような気もしてきたが、ド素人でも手軽に編集感覚を味わえるのが、iPhone人気の理由の一端だったりするのだろう。知育に興味がある方は、絵カードのように使ってもいいかもしれない。しかし一枚ずつ画像を保存してフォルダに入れるのは手間なので、エロ画像コレクターが使うような画像ぶっこぬきツールをインストールする必要がありそうだ。まさかこの年でそんなものを使うことになるとは思いもよらなかったが。


(4)寝かしつけ
 寝かしつけのときに即興で語るデタラメ話のネタにつまったら、こっそり「絵本ナビ」というサイトにアクセスして2歳児向け絵本のあらすじをチェックし、話をつなげるという裏技を発見。そして「マイケルが来るよ~」と脅して(第34回参照)、子が目をつぶったら、こちらは思うさまネットサーフィンだ。寝付くまでのヒマを持てあますイライラからはこれで解放される。本を読みたいときは専用のビューアで青空文庫の小説を読めばいい。これくらいはケータイを使いこなしているママさんたちなら普通にやっていることかもしれないが、こちとらパソコンに慣れすぎてケータイを使えない旧世代。iPhoneは使い勝手やブラウザ画面がパソコンとさほど変わらないのがありがたいのです。あ、これで公園でも本が読めるかも!


 ……と、行き着く先は結局そこだったりして。iPhoneは子供を接待したい、もしくは子供の目を盗んでネットサーフィンしたり本を読んだりしたい、そんなサラリーマンというかサボリーマン的ニーズにバッチリ応えてくれる。いやもちろん、本当はもっとすごいことができるのでしょうが、機能が盛りだくさんでやりたいことにたどり着くまでが面倒な普通のケータイに比べると、必要なアプリを取捨選択できるシンプルさがありがたい。このあたり、モノを減らしてスッキリ収納したいママさん感覚に合っているような気がするのだがどうか。

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文化系ママさんダイアリー

フニャ~。 泣き声の主は5ヶ月ほど前におのれの股からひりだしたばかりの、普通に母乳で育てられている赤ちゃん。もちろんまだしゃべれない。どうしてこんなことに!!??

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堀越英美

1973年生まれ。早稲田大学文学部卒業。IT系企業勤務を経てライター。「ユリイカ文化系女子カタログ」などに執筆。共著に「ウェブログ入門」「リビドー・ガールズ」。

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