なんと今わたくし、映画を撮らせていただいております真っ最中でして。あ、当たり前ですが監督の方じゃなくてお芝居の方です。役どころとしましては皆さんびっくりするかもしれませんが、なんとなんと“独身のおばさん”役。ええ、そのまんまです、はい。おこがましくも今までも何本か映画に出させていただいた事はありました。ちょこっと1シーンからちょっと多めの出演まで。ただ今回は本当にたっぷり&ガッツリの出番。まだ撮影途中ではありますがすでにちょこちょこ事件がありまして。その中から本日は3つばかしお話しさせていただきたいと思います。

まずは「本読みはどれくらいの感じでやるの?」事件。最初にいたします本読み。その字のごとく、キャストが集まって本(台本)を読むこと。劇団・山田ジャパンの公演の時にも台本来たらやりますよ、本読み。そして当たり前ですが本意気で読みます。最初だから自分なりの解釈にはなってしまいますが、本番と同じ気持ちで。ただですね、実は今までの映画はちょっとした役だったからか本読みをしたことがない。いやね、おそらく舞台だろうが映画だろうが同じ“お芝居”ですから。変わらず“本意気”読みでいいとは思うんですよ。でももしかしたら映画の世界では「本読みは軽くで。でもちゃんとキャメラの前で120でやりますから。見ていてくださいね、監督!」的な感じかもしれないじゃないですか。ド緊張の中、本読みスタート。役者さんは10人くらい。あといらっしゃらない方の役やト書きの部分は助監督さんが読んでくださる。助監督さんのト書きからスタート。最初のシーンも役の方はおらず、助監督さんが読む。次のシーンはお一人いらっしゃいましたが、台詞が一言で“本意気”or“軽く”がわからない。その残りすべての役、助監督さん。そしてト書きからのタイトルも助監督さん。ん? 今のところ、ほとんど助監督さんだからわからない。もうすぐ私の台詞が、と言う時に救世主現る。“元気なおばあちゃん”役の登場。部屋に響き渡るすごい声。うん、ですよね。おばあちゃん、ありがとう。私、本意気でやります。

無事に本読みが終わると更なる事件が。「みんな超質問するのに、私一つも質問浮かばない」事件。皆さん、監督に「ここはこうした方がいいんじゃないか?」とか「あそこはこういう意味でいいんですか?」と次々に質問を。あれ……どうしよう……質問……ない。いやね、一応言っておきますが私台本、めちゃめちゃ読んだんですよ。読み込んだんです。その上で自分なりにですが理解をして“本読み”に参加したんです。ただやっぱり“質問=やる気”の感じってあるじゃないですかあ。考えて考えて絞り出したのは「監督。この『すまないね』の台詞、『ごめんなさいね』でもいいですか?」監督は優しい声で「いいですよ」。質問でもないし。なんかすいません。

そして最後は「ノーメイクって言ってたじゃん」事件。そんなわけで“独身おばさん”役と言うことで、今回はノーメイクでいくことになりまして。ちょうどメイクさんもお一人なのでお手間をかけない“優等生”決定。ところがいざ現場入りまして。確かにノーメイクなんです。髪だけ整えていただきましたが、メイクはノーでした。ただ髪の毛を一本に結わえ終わると、メイクさんが焦げ茶の粉を筆につけ始めまして。「あれ? ノーメイクだよな?」と思う間もなくその筆を前髪の生え際辺りにサッサッサ。「分け目がちょっと……」とメイクさん。そうか。顔はノーメイクだけど、生え際の薄毛を隠す為の焦げ茶が必要に。ああ、結局お手間を。申し訳ない。

更に更に、めったに出来ないデキモノちゃんが、よりによって鼻と口の間のあの溝の所にプツッと。真ん中も真ん中、ど真ん中ですから正面からはもちろんのこと、右側から撮ろうが左側から撮ろうが見えるんですよ、ちゃんと。なんなんでしょうか。神様がわざわざへこませた場所で飛び出すなんて。しかもそいつが撮影の途中から腫れてきまして。最初の二日はちゃんとノーメイクでした。あ、薄毛の焦げ茶は別にして。それが三日目に熱もってきたらもうあっと言う間。ただただ膨らんでいく。あんなにメイクの面では“優等生”予定だったのに、すっかり“劣等生”。「ルミちゃーん(メイクさんのお名前)。また赤くなってきちゃったよぉ。」「爪引っかけて変な汁が出てきちゃったぁ。」「モニター見て。どお? やっぱり目立つよねぇ?」と誰よりも世話をかけまくると言う。重ね重ねごめんなさい。

実はよく考えると殿方と接する役をする時、鼻まわりに何かデキモノが出来る事が多い気がする。例えばこないだの舞台でも若い男の子にメロメロする役でしたが、その時も左の小鼻の所が腫れたし。以前芸人さんのドラマでチュートリアル徳井さんと“イイ感じ”になる役だった時も同じく小鼻の所が腫れ、その時はその上ウィルス性胃腸炎でのたうち回る程の痛みも。で実は今回もちょいと殿方と接する役なのですが、これまたちゃんとど真ん中にデキモノ。何故? これは何故? 神様が「おまえごときが“イイ感じ”になるのは生意気だ」と私をこらしめているのか? それを人に話すと「きっと殿方と接するとホルモンバランスが乱れるんじゃない?」と。なんですって? そんなに? そんなに私のボディは殿方の免疫がなくなってしまったの?だとしたら、かわいそうだ、私。

まあそんなこんなで皆様にいろいろご迷惑をおかけしながらなんとか撮影しております。さて、今日もデキモノにオロナイン塗って、元気に頑張ろう。あ、体内のホルモンちゃんは、お静かに、ね。

【今日の乾杯】
先日山田ジャパンの前からいるメンバー6人で久しぶりに飲みまして。海鮮鍋をいただいたのですが、〆の雑炊がまさかのいくらたっぷりスタイルで登場。これじゃあしまらないよ。更に飲んじゃうよ。

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いとうあさこ『あぁ、だから一人はいやなんだ。』

寂しいだか、楽しいだか、よくわからないけど、日々、一生懸命生きてます。人気芸人の、笑って、共感して、思わず沁みるエッセイ集。全力で働いて、遊んで、呑んで、笑って、泣いて……の日々。ぎっくり腰で一人倒れていた寒くて痛い夜。いつの間にか母と同じ飲み方の「日本酒ロック」。緊張の、海外ロケでの一人トランジット。酔ってヒールでこけて両膝から出血の地獄絵図。全力の悪ふざけ、毎年恒例お誕生会ライブ。女性芸人仲間の感動的な出産。“呑兵衛一族”の冠婚葬祭での豪快な呑みっぷり。40歳で体重計を捨ててから止まらない“わがままボディ”。大泣きのサザン復活ライブ。22歳から10年住んだアパートの大家さんを訪問。20年ぶりに新調した喪服で出席したお葬式。恒例の、オアシズ大久保さんのご家族との旅行。etc.