賞金のためにプレーする“プロゴルファー”は地位が低かった

 今回はウォルター・ヘーゲンの名言である。ヘーゲンが“キング・オブ・プロ”と呼ばれるほどの名手であったことは、ご存じの方も多いだろう。

 全盛期には、どんな悪天候でも69ストローク以下でラウンドしたというから、その技量は突出していたものと理解できる。

 それでも、風雨の激しいときは5打悪くなることを覚悟してプレーしたというのだから、天候などのコンディションがいいときは、65以下でラウンドしていたのだろう。

 実力もあって人気も高かったヘーゲンは、ファンをバックにつけて、当時はまだ社会的地位が低かったプロゴルファーの名誉と地位を上げようと努力した。

 今では信じられないかもしれないが、メジャー競技に優勝したようなプロゴルファーであっても、当時はアマチュアより社会的には低い地位とされていた。プロはクラブハウスの中にも入れてもらえなかったのである。

 当時のゴルフは、アマチュア精神をもって崇高にプレーされることが重んじられていて、賞金のためにゴルフをするのは低い身分の者と考えられていたのだ。

 しかし、ヘーゲンはそれに満足しなかった。

 トーナメントのスポンサー企業は、主催する試合が盛り上がってくれたほうが自社の広告効果もあるから、大人気選手であるヘーゲンにはぜひとも出場してもらいたいと考える。

 それを逆手に取ったヘーゲンは、「俺は一流のプロだから、安い賞金では出ない」といって賞金を吊り上げたのだ。

 スポンサー企業は、広告効果が上がるなら安い広告料だということで、これに応じた。かくして、PGAツアーの賞金は次第に上がっていき、参加するプロもギャラリーも増えて盛況を博すようになるのだった。

 ヘーゲンは、そんな中で美女を何人もはべらせて、キャデラックのオープンカーで試合会場に乗りつけるなど、派手なパフォーマンスでさらにプロゴルフツアーの人気を高めた。

 そしてヘーゲンの思惑どおり、ツアープロの獲得賞金(収入)が上がり、プロゴルフツアーの人気が高まるにつれて、プロゴルファーの社会的地位は上がっていったのである。

 今のプロゴルファーがそれなりの社会的地位を得ているのは、ヘーゲンの努力の賜物である。現代のプロゴルファーはタイガーだろうと松山英樹だろうと、誰もヘーゲンに足を向けて寝られないと言ってもいいだろう。

雨ゴルフでスコアを崩す原因は技術よりメンタル

 ちょうど入梅の季節であるが、雨中のラウンドを嘆くゴルファーは多い。

「濡れて重い芝のラフからのショットが難しい。フェアウェイに置くことの重要さを痛感する」

「濡れて柔らかくなった上からの加減ショット(アプローチ)でザックリばかり」

「3連続で雨ゴルフ、もう雨の日のゴルフはイヤだ~」

 などなど、悲痛な叫びが聞こえてくる。

 たしかに、雨で芝が濡れて重くなると、とくにラフでは抵抗が大きくなって振り抜きづらい。水を含んで柔らかくなった地面は、とくにアイアンヘッドが食い込みやすくなり、わずかでもダフると飛距離のダウンが激しく、ひどいときにはボテボテのゴロになってしまう。

 また、ランが出ないから、ドライバーの飛距離がほとんどキャリーだけとなり、パー4やパー5のホールが長く感じられてしまう。

 さらに、グラウンドが柔らかいと、グリーン周りからのアプローチもウェッジのソールが滑ってくれず、食い込んでしまうのでザックリのミスが増える。

 これに強い風が加わったときには、もう泣きたくなるような状況だ。当然ながらスコアもメタメタに崩れるから、「もう雨の日のゴルフは嫌!!!」となるのもうなずける。

 コンディションが難しいのだから、スコアが悪くなるのは自明だ。それにしても、一般アベレージゴルファーは必要以上にメタメタのボロボロになりすぎているように思う

 上級者やプロの場合は、風がなく、雨が降っているぐらいでは、そう大きくは崩れない。

 さすがにグリーン上に水溜りができて、まともなパットができなくなってしまうほどの豪雨であればスコアにならないが、競技が続行できる程度のコースコンディションならば、それなりのゴルフをするものだ。

「それは、上級者にはダフらない技術があるからだよ」とアベレージゴルファーは言うかもしれない。

 たしかに、上級者はアイアンでボールの先のターフを取るし、プロともなればボールだけを綺麗にさらうような技術も持っているかもしれない。

 では、そのような技術に乏しく、練習量も少ない一般ゴルファーはお手上げなのだろうか?

 私は、雨ゴルフでスコアを崩すのは、技術的な面よりもメンタル面のほうが大きいと思う。

 まず、ティーではランが出ない分をなんとか飛ばそうと、リキんで強振する。セカンドでも、濡れた芝は重いという意識から、肩や腕にリキみが出る。

 アプローチにおいても、ザックリ気味になった場合でもヘッドをなんとか送ろうと考えて、グリップを強く握ってしまう。

 要するに、雨によって出そうな影響やミスはよく理解しているから、それをなんとかしようと考えて、必要以上に力が入ってしまっているのだ。

 雨の日にこんなメンタル(考え方)でいると、一日中リキみっぱなしで、かえってミスの連続で疲れ果ててしまい、必要以上に崩れるということになるのではないか?

「5打多く打つ」覚悟でリキみが消える

 ここで、ヘーゲンの言葉を思い出してほしい。

 プロの中のキングといわれたヘーゲンでさえ、「5打余計に打つ覚悟を決める」と言っているのだから、一般アベレージゴルファーなどは、雨でさらに5打、風でさらにさらに5打と考えれば、風雨が強い日はハンディ+15打ぐらいを覚悟するべきなのだ。

 この「覚悟を決める」というのが大事で、トータルでパー+ハンディ+15打で上がることを目標にするのではなく、それぐらい打ってしまう、打たされてしまうと覚悟を決めることが大事なのだ。

 この覚悟ができずにスタートするから、自然の猛威に抵抗しようとリキんでしまうのだ。所詮、人間なぞ自然に太刀打ちなどできないに決まっているにもかかわらず……である。

 これに対し、しっかり覚悟を決めてからティーオフすると、無理に飛ばすよりもフェアウェイキープを優先するし、ハーフトップでも前に進めばよしとするメンタルになるから、ドダフリで3ヤードしか進まないなどという悲惨なミスショットはかなり防げる。

 グリーン周りでも、ピッタリ寄せようとしないでオンさせることを最優先にするため、ダフったときの結果に大きく差が出るウェッジよりも、7番や8番アイアンで転がしてアプローチすることになるだろう。

 技術的には上級者に及ばないにしても、こういう心がけで落ち着いてプレーすれば、アベレージゴルファーも大崩れは防げるのである。

 シングルプレーヤーでさえも、こういう覚悟ができずに、天候などのコンディションが悪いと弱い一面をさらけ出してしまうプレーヤーは結構多いのだ。

 風も雨も両方強いとなると、これはもう嵐のような状況だ。しかし、雨は強いが風は弱いのならハンディ+10打、逆にすごい強風だが小雨という場合もハンディ+10打など、程度に応じてハンディにプラスする数字を自分なりに判断して、しっかり覚悟を決めるといいだろう。

悪天候なりのゲームプランを用意する

 風雨の中のゴルフに関しては、次のようなエピソードも参考になるかもしれない。

 1990年頃のヨーロッパのプロで、ステファン・マカリスターという選手がいた。彼は読書が好きでたまらない男で、職業にプロゴルファーを選んだのも、試合のとき以外は本が読めるからというのが理由。そのせいか、ゴルフもクレバーなゲーム運びをすることで定評があった。

 1990年2月に第1回大会が開催された「ビンホベルディ・アトランティック・オープン」(ポルトガル・エステラ)での最終日は、まれにみる最悪のコンディションだった。

 多くのプロは全身濡れ鼠になって、アベレージゴルファー並みのスコアにうなだれてロッカールームへ退散するほどであった。

 当然ながらゲームは順位がめまぐるしく入れ替わり、いったい誰が優勝するのか混沌の様相を呈してきた。

 最終日、全員がホールアウトしてみると、この暴風雨の中でアンダーパーを記録したのはたった一人。消防士からプロになった、水しぶきが得意な(?)リチャード・バクソールという選手だった。

 そして、スコアボードには6人の選手が288の同スコアで並び、マカリスターとバクソールを含む6人でのプレーオフという珍事になった。

 10番ホール、404ヤードのパー4は、この暴風雨の中ではパーでさえ難しい状況だ。案の定、マカリスターとバクソールを除く他の4選手は3オンもできず、やっとのボギー。

 マカリスターとバクソールは、風に負けない強い低弾道のドライバーでフェアウェイをとらえ、まずバクソールがスプーンで打ち、ピンには遠いが見事に2オンを果たした。

 これを見たマカリスターは、グリーンには届かない5番ウッドを選択。花道へとボールを運んだ。

 そして、そこからチップショットで1mに寄せ、先に沈めてパーを取った。

 バクソールは、やや長いがそのパットを沈めればバーディで優勝とばかりに、何度もボールとカップを往復しながら慎重にラインを読んでようやくヒットしたが、3mもショート。さらに時間をかけたパーパットもショートして外してしまった。

 優勝したマカリスターはインタビューに答えた。

「バクソールがセカンドでスプーンを持ってグリーンオンしたとき、自分の勝つチャンスが大きいと感じた。この風ではオンしてもグリーンの手前ギリギリでしかないが、雨の日は水が溜まらないよう、ピンは一番奥の高いところに切られる。手前から奥のピンを狙うには、パターよりもチップショットのほうが易しい。だから、私は最初から花道にボールを運んだのだ」

 ボビー・ジョーンズもこう言っている。

「ときに頭脳は、14本のクラブ以上の仕事をする」

 アベレージゴルファーも、15本目のクラブを持つ、つまり悪天候の日はその日なりの考え方(ゲームプラン)と覚悟をもってプレーすれば、必要以上にボロボロのスコアにならなくて済むのではないだろうか?

今回のまとめ

1. 風雨が強いなどコンディションが厳しい日のゴルフでは、はじめから10打~15打は余計に打つ覚悟を決めよう

2. 覚悟を決めていれば、無理に「飛ばさない」「乗せない」「寄せない」「入れない」というメンタルになり、余計なリキみを避けられる

3. 雨の日のピンは、水はけを考えてグリーンの一番高い奥に切られることが多い。状況に応じて頭脳的なプレーを心がけよう

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