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2024.03.09 公開 ツイート

逆さマッターホルン スイス旅6 益田ミリ

ゴルナーグラート展望台を満喫した後は再び列車に乗り、ひとつ下のローテンボーデン駅まで戻る。そこから次のリッフェルベルグ駅までの区間をハイキングするのが初心者向けのコースである。だいたい1時間くらいだろうか。

 

このコースの見所は湖に映る「逆さマッターホルン」である。

湖はふたつあり、「逆さマッターホルン」は風がない晴れた日に見られるらしい。ちょうど見ることができた。歩き始めてすぐにひとつ目の湖があるので、ハイキングはせずこれだけ見て引き返す人々も。パンプスの女の子もいて、確かにゴルナーグラート展望台とこの湖を見るくらいならそれでもなんとかなりそうだ。

湖を後にして歩いていく。基本、下り坂がつづいて滑りやすい。石のかけらが大きいので転んだらスパッと怪我をしそう。足元に気を配りながら進んでいく。メイリッヒェンからクライネ・シャイデックまでののんびりハイキングとはひと味違う緊張感である。

マッターホルンがきれいだった。似た構図なのについ何枚も写真を撮ってしまう。途中からマッターホルンが背後になるので、そこからの景色はややもの足りない。逆方向から来る人のほうが景色が楽しめると思うが、ただし、のぼりになるのでそれはそれでつらそうだ。わたしの好みでいうなら、メイリッヒェンからクライネ・シャイデックのハイキングコースのほうが断然楽しかった。

リッフェルベルグ駅に到着し、そこから登山列車でツェルマットの街まで戻る。チケットには時間や座席指定はないので乗りたいとき乗ればよし。帰りはマッターホルンがよく見える側に座れたものの、うつらうつら。まわりの人も結構眠っていた。みな思い思いに満喫したのだろう。

こうしてスイス旅の目的であるふたつのハイキングが終了する。

スイス。

子供時代「アルプスの少女ハイジ」を見て憧れていた場所。ひとつのアニメがこんなに遠くまで大人のわたしを連れて来てくれたのだった。

おわり

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うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。

イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。

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益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に、漫画『すーちゃん』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』『きみの隣りで』『今日の人生』『泣き虫チエ子さん』『こはる日記』『お茶の時間』『マリコ、うまくいくよ』などがある。また、エッセイに『女という生きもの』『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『かわいい見聞録』や、小説に『一度だけ』『五年前の忘れ物』など、ジャンルを超えて活躍する。

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