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『アルテイシアの夜の女子会』刊行記念対談 「夢豚と腐女子が語る、エロスの歴史」はみだしトーク

2018.02.08 公開 ポスト

前編

マライヒのオナニーシーンには
本当に救われたアルテイシア/金田淳子(やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家、社会学研究者、フェミニスト)

アルテイシアの熟女入門」を連載中のアルテイシアさんの新刊『アルテイシアの夜の女子会』が発売になりました。
 


新刊では、金田淳子さん(社会学研究者・BL研究家)と「夢豚と腐女子が語る、エロスの歴史」対談で、BLのおもしろセックスやエロスの歴史について語り合っています。
今回は書籍には収録されなかった、お二人のはみだしトークをお届けします!


金田淳子/社会学研究者。やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家。1973年富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学)。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見信哉編著、有斐閣)初収の「第七章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」、『オトコのカラダはキモチいい』(二村ヒトシ・岡田育・金田淳子、KADOKAWA)がある。ツイッターアドレスは@kaneda_junko

 

■エロスの目覚め

金田:私は小学校の時には漫画が大好きで、高学年にもなると、授業中に、美少年のエロい絵をノートにこっそり描いては消し、描いては消しみたいな感じでしたね。

アル:わりと早熟ですよね。「保育園の頃からオナニーしていた」と仰ってましたし。

金田:そう、私の保育園時代にオナニーが流行ってて。

アル:え、富山県で?

金田:いや、県規模かはわからないんですが、私の通ってた保育園で(笑)。ただ保育士の人のツイートとか見ていると、男女限らず、幼児がオナニーするのは日常風景であるらしいですね。

アル:角とかで股間をこすって「おや?気持ちいい」と気づくみたいですね。

金田:私もまず机の角。角オナで。

アル:1人がやりだしたら周りは真似しますよね、やっぱり。

金田:そうそう、みんなが机の角に股間を押しつけて。

アル:角の取り合いになる(笑)

金田:角足りねーよみたいな。私は小1ぐらいで角オナから、体重を使って両手で股間を押さえるうつ伏せオナニーになり、さらにある時、うつ伏せは体勢的に苦しいことに気づいた。文明開化って言うのかな。

アル:たぶん言わないと思う(笑)

金田:仰向けでいけるやん!と思って、それ以来40年、ずっと仰向けオナニーですね。でもそのまま、明るく楽しいオナ日常というわけにもいかなかった。というのは、幼児期のある夜、布団の中でゴソゴソしていた時に、母親が「何やってんの!」と急に布団をめくったのね。おそらく、母親も「この子はよくオナニーをしている」と気づいて、いつか厳しく叱ろうと思っていたんだと思う。すごい剣幕で叱られたから、子ども心に「尻がかゆくて掻いてる」と誤魔化したら「そう、早く寝なさい」と言われて。
それで私は行為自体の名前も知らなかったけど、気づかれたらこんなに叱られるんだと思って、隠すようになりました。その時にものすごい罪悪感とかも芽生えて、こんなことしてる私は悪い子なんじゃないかと思いましたね。
いまからすると、うちの母も、他に言い方なかったんかいって思いますけどね。そういう親はいまも多いと思いますが、性について、思春期の子どもに何も教えない親だったから、よいことではないですね。まあ、親として、子どもがいろんな場所で野放図にオナニーしたら、危険な目に遭いそうで心配だから、とりあえず何とかしようっていう気持ちはすごくわかりますけどね。

アル:ダメなことみたいに刷り込まれちゃいますよね。

金田:そういうわけで、「自分の股間を触って気持ちよくなっている私は、おかしな子なのかな」とちょっと思ってたけど、小4ぐらいに、愛読書の『パタリロ!』(魔夜峰央)を読んでいたら、マライヒが耽美的にオナニーするシーンがあるんですよ。



アル:ありますね。「最近バンコランがかまってくれない~」みたいな。

金田:そう!それでマライヒもこれをやるんだと思って、すごく勇気づけられました。

アル:偉大ですね、マライヒ。

金田:マライヒにほんと救われた。ただその後「マライヒは男の子だからやるのであって、女の子はやらないのかも」と思ってる時期もありました。その頃はインターネットはもちろんないし、本当に、性について知りたい情報を得られる機会がなかったんですよ。保健体育の教科書にも、オナニーについては何も書いてなかったと思うし。中学の時に女子の間で、「オナニーしたことある?」みたいな話題になって、周りの女子が「ないよー!」と言ってたから「私もない」と合わせてたのね。「オナニー10年選手だよ!」とかって言えない空気だったので。

アル:「角の取り合いしてたよ!」って(笑)。大人になっても「オナニーははしたないこと」みたいな罪悪感を抱える女子はいて、そういう子はセックスに苦手意識があったりもします。『夜の女子会』にも書きましたが「初体験の前にオナニーする習慣のあった女性の方がセックスの満足度が高い」というデータもあるんですよ。

金田:そりゃそうだよね、事前に予習してるわけだから。

アル:そう、だから「セックスが気持ちよくない」「イッたことない」と悩む女子に向けて「オナニーでオーガズム力を高める方法」も書いてるので、参考にしてほしいです。 

金田:セックスだけでなく、まずはオナニーの参考書としても使えるわけですね。セックスに悩む以前に、オナニーの仕方がよくわからない、という女子もたまにいるので、ぜひ読んでほしいですね!

■爽快感のあるエロ

アル:私は小学生の時に読んだ『やるっきゃ騎士(ナイト)』(みやすのんき)が記憶に残ってます。それがエロとのファーストコンタクトみたいな。
 


金田:私は小学生の時に、銭湯の脱衣所で偶然に読んだ『けっこう仮面』(永井豪)が記憶に残っています。けっこう仮面というのは、正義の味方として戦う女性で、なぜかパンツ一丁で、さらにパンツをかぶって顔を隠して戦うのね。最終的に、ヒロインが敵の男たちに捕まった時、先輩にあたる女性たちが全裸で助けにきて、大股開きで「おっぴろげジャーンプ!」ってやって、敵は「眼福じゃー」とか言いながら倒される。そのエロさと爽やかさ、仲間の女性たちの頼もしさが忘れらなかったです。


アル:『デンデラ』(佐藤友哉の小説。2011年に映画化もされた)みたいな話ですよね。女の人が集団で闘うってすごいカッコいいですよね。

金田:そうそう。全裸でも恥ずかしくないわよ~!みたいな感じで闘う姿に、すごい爽快感が。デンデラみたいに、全員ババアになると、もっとかっこいいですね。

アル:爽快感でいうと、ホラー映画でセックス中のカップルがジェイソンとかに襲われると、スッキリしますよね(笑)

金田:わかる。サメ映画で、サーフィンとか楽しんでるところに、後ろからサメがザバーって来てムッシャーって食われるとか。自分でもいじわるだなと思いますが、ホラー映画で、セックスとかイチャイチャが始まると「あっ、こいつら死ぬな」と思いますね。

アル:ああいうのはセックスしてる奴から食われますよね。アニマルパニック系でいうと『スネーク・フライト』という映画があって、サミュエル・L・ジャクソン扮する捜査官が、事件の証人を飛行機でアメリカに連れて行くんだけど、マフィアがその証人を殺すために飛行機に毒蛇を放つんですよ。

金田:え、もっと直接的に殺せないの?蛇が確実にそいつを噛むかわかんないよね。

アル:他にやり方があるだろうって感じなんだけど、何千匹もの蛇が放たれて。酸素マスクのところから蛇が落ちてきたり、食事の蓋をパカッて開けたら蛇がとぐろを巻いてたり(笑)。それでカップルがトイレでセックスしてたら、蛇が乳首やチンポに噛みついて…。

金田:「よっ、待ってました!」

アル:「成駒屋!」みたいな場面ですよね(笑)

金田:へ~サミュエル先輩が主演なんだ。

アル:サミュエル先輩がライトセーバーみたいなスタンガンで蛇をガンガン殺しまくる、「ファッキンスネーク! 」とかキレながら。ありとあらゆる種類の蛇が出てくるので、蛇ファンにはたまらないと思います。

金田:「蛇さんの活躍が見られるのはここだけ!」みたいな。

アル:蛇嫌いな人は吐くと思うけど、私は蛇好きなので楽しめました。金田さんはゾンビ好きとして有名ですよね。

金田:いえ、詳しい人に比べると全然なんですけど、自分なりのこだわりだけはあるというか…(苦笑)。ゾンビ映画って、B級からZ級まで本当にたくさんあるらしいんですが、たくさんあるのには訳があって、わりと低予算でも作れるらしいんですよ。基本ゾンビって汚すだけじゃないですか。

アル:私のいとこもゾンビ役のエキストラで映画に出てました。

金田:いいなー!私もゾンビナイトとか憧れます。行ってみたい。ゾンビ役をやりたい。ただ、ああいうのってちゃんと管理されてないと暴行事件とか起こりそうじゃないですか。軽く痴漢されるだけじゃなくて、「なんだこのババア」とかいって遊び半分に殴り倒されたりしそう。それでも演技と思われてそのまま倒れてそう。

アル:体調不良で倒れたとしても気づかれにくいですよね。ゾンビってそもそも体調悪そうな感じだし。

金田:「いい演技だな」みたいになっちゃいそうで。だからちゃんと管理された場所でゾンビに挑戦したいです。

アル:いとこは同い年なんですけど「JJ(熟女)は顔色がくすんでるから、すっぴんでゾンビができるよ!」と言ってました(笑)。私もいつかゾンビに挑戦してみたいです。

■ちんつぶとまんつぶ

金田:『夜の女子会』の原型の「もろだしシリーズ」を読んで、面白いな~と思いました。

アル:ありがとうございます。私がもろだしシリーズを書き始めた10年前って「女がエロを明るく笑い飛ばす」みたいなコラムがそんなになかったんですよ。

編集H:そうですね。男性向けのエロは多いけど、女性が女性に向けて書いた、しかもカラッと笑えるエロはあまりなかったですね。

アル:『ちんつぶ』(大和名瀬の異色BLコミック)とかカラッと明るいじゃないですか。でも、まんつぶみたい作品ってないなって。



金田:まんつぶか。まんこが入れ替わって、呟いてくるコメディみたいな。

アル:「入れ替わってるーー?!」みたいな明るい感じじゃなく、まんこは『ヴァギナ・モノローグ』(イヴ・エンスラー)みたいなちょっとフェミニズム系の。



金田:確かに、笑い飛ばすというにはあまりにも、女性が、性に関する言葉と選択権を奪われてきた歴史と現状が大きすぎるという前提があって、まずは真面目な方に行きがちですね。真面目だから面白くない、ダメだ、ってわけじゃなくて、私は、そういうものが出てきた文脈は納得できるし、重要な試みだと思います。たとえば私の母親とか、まさに自分の性器を、婉曲話法でしか言えないタイプの人ですし、そういう女性は、まだまだ多いと思います。その場合、まじめな文脈のほうが入りやすいかもしれません。

アル:真面目に女性の解放みたいな感じで、やっぱり笑いにするのは難しいんですかね。女陰というだけあって陰の存在というか。ちんぽ神社はいっぱいあるけど、まんこ神社はあまり聞かないし。ちんぽをかついでエッサホイサみたいな祭りとか。

金田:ちんぽの方が、まず扱いやすそうだというのはありますね。昔からテレビでもちんぽは笑い話のテーマになりますよね。まんこは、単に女性器を指すのではなく、男性文化の中で猥語や差別語として使われてきた文脈もあるからか、発音すること自体がテレビなどではタブーだったり。そういう非対称性はずっとあって、まんこについて、差別的な文脈や、男だけから見て楽しい話題ではなく、明るく、それこそまんこだけに「あけっぴろげ」に女性たちが話せる範囲が限られてるとは思いますね。

アル:形状的にもちんぽは外に飛び出してるから、銭湯で男の子たちが「大きい」「小さい」と比べあったりして。それでコンプレックスを抱く男子もいるようですが。でも金田さんのお友達の藤村シシンさん※も書かれてますけど、古代ギリシャでは短小包茎がイケてたんですよね?

(※藤村シシンさん/古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家。古代ギリシャや、ギリシャ神話に対して、一般的日本人が抱きがちな「誤解」を解き、紀元前のギリシャの姿を鮮やかに説明する単著『古代ギリシャのリアル』(実業之日本社)が、七刷出来で好評発売中。ツイッターアカウント@s_i_s_i_n



金田:そう、シシンさんが書かれてるように、昔のギリシャ彫刻のペニスは、日本人基準で見ても小さくて、きちんと皮に包まれているんです。有名な彫刻が多いので、美術などで学んだ時、「あれ?」と思った人も多いと思います。

アル:ダビデ像とかもめっちゃ小さいですよね。

金田:ダビデの親指ぐらいの大きさでしょうね。

アル:筋骨隆々なのにそこだけ小さくて、なんかラオウが粗チンみたいなもので、バランス悪いなって感じる。

金田:いや、それは私たちが、現代的なバランスで見ているからであって、古代ギリシャではバランスいいんですよ(笑)

アル:そうか、私も現代の価値観に染まっているのか。

金田:古代ギリシャでは特に皮に包まれてることが重要だそうです。包茎じゃないちんぽって、勃起してないのに内蔵が出てるってことじゃないですか。特にそういう仲でもない他人に内臓見せてるのは、切腹と同じぐらい極まった状況ですよ。「公の場でなに出してんだ!」ってことになるみたいで。

アル:医学的にも、仮性包茎は清潔にしていれば一切問題ないそうです。私の男性向けのセックス指南書『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』でも「洗っていればどうということはない!」と書いてますが、やっぱり気にする男性はいますよね。女性も自分の性器にコンプレックスを抱く人はいるので、新刊の「まんこもいろいろ」という話を読んでほしいなと思います。



金田:私たちは、自分のまんこを鏡で見たりして、まんこの話をして笑えるけど、絶対そんな話できないって女性もいるもんね。「まんこの話をしても、はしたないとか思わないよ!」と伝えたいですね。

アル:以前ニコ動で対談した時に、金田さんが「己の愛液を週に1度舐めてチェックしている」と話してましたよね(笑)。麻薬課の刑事が「コカインか(ぺろり)」ってやるみたいに。

金田:自分の体から出ているものについて、ウンコ以外は試しておかねばという使命感があるんですよ。ちなみに、女性の体内から体表に出てくる液については、ある程度の量を味わうとするならば、血液が一番まずいと思います。自分の血をぺろっとしたことがある人は多いと思いますが、それができるなら、余裕で、膣の中の液体も舐められるはずです。

アル:使命感(笑)。産婦人科医の友人も「自分の性器を見たことないという女性もいるけど、異常があった時に気づくためにも見た方がいい」と言ってました。健康のためにも、まんこにもっと親しんでほしいですね!

(後編へ続く)

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アルテイシア

神戸生まれ。ジェンダー、フェミニズム、恋愛、家族問題などについて執筆、講演や授業も多数行う。2005年『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。
著書に『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』『生きづらくて死にそうだったから、いろいろやってみました』『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか!?』『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』『モヤる言葉、ヤバイ人から心を守る言葉の護身術』『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』他多数。

X(旧Twitter) https://twitter.com/artesia59
インスタグラム https://www.instagram.com/artesiajj/
TIKTOK https://www.tiktok.com/@artesia59

金田淳子 やおい・ボーイズラブ・同人誌研究家、社会学研究者、フェミニスト

1973年富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(社会学)。共著に『文化の社会学』(佐藤健二・吉見信哉編著、有斐閣)初収の「第七章 マンガ同人誌 解釈共同体のポリティクス」、『オトコのカラダはキモチいい』(二村ヒトシ・岡田育・金田淳子、KADOKAWA)がある。
Twitter: @kaneda_junko

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