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70歳、はじめての男独り暮らし

2018.01.18 公開 ポスト

【新春特別企画】70歳、はじめての同級生対談【前編】

死に方はもう決めている西田輝夫(医学博士)

人生100年時代の、男の生き方がここにある。古希(70歳)を迎えた元・大学教授の独り暮らしを描いた、笑えて泣ける珠玉のエッセイ『70歳、はじめての男独り暮らし』刊行を記念し、著者の西田輝夫さんと、50年来のご友人である元・日本郵政株式会社社長、坂篤郎(さか・あつお)さんによる新春特別対談が行われました。引退し70歳を迎えられたお二人が考える、趣味・家事・死生観…笑いの絶えなかった対談を前後編2回に分けてお送りします。

(写真/左:西田輝夫さん、右:坂篤郎さん)

引退したのに、毎日が平日!?

西田 お忙しいのに今日はありがとう。本も読んでいただけたようで…

  うん。いやぁ、まずは、家事をこんなに何も知らない人がいるのかと驚いたけど(笑)。でもまぁ確かに、そういう人は世の中にはたくさんおられるんでしょうね。僕も、家事を知っているといったって、例えば洗濯機は触ったことがあるとか、リンゴとかカキの皮ぐらいは自分で剥くとかだしね。きょうの昼は家内がいなかったから、そうめんを自分で茹でて食べたとか、それくらい。

 だから本の最初の方はすごく、そういう家事の話とか、一人で食事をするというのはどういうことかとか、とても勉強になりましたね。

 僕は妻が生きていて元気だけど、お互い年はあまり変わらないからね。4年前に仕事を辞めて、それまでは社長をやったり結構忙しかったんだけど、特に、西田さんと同じように60歳前後ぐらいまでは公の仕事をしていたから、もう大変に忙しかった。66歳ぐらいから多少暇になって、そこからかなり生活が変わりましたね。

西田 いろいろな引退の形があるよね。サラリーマンの方のように突然仕事がなくなってしまうタイプと、僕のようにたとえ定年のある勤務医であっても、それこそ死ぬまで医者という職業があるタイプと。

 僕は、そういう意味では典型的にサラリーマンだから。ただおかげさまで、常勤の仕事を辞めると新聞に出たら、何名かの方が「うちで顧問をやってくれないか」と言って誘ってくださってね。西田さんが医院に通っているのと同じように週2回、半日ずつくらい出勤しています。ただお医者さんと違って、原則は火曜日と木曜日なんだけど「すみません、木曜日はちょっとゴルフの予定があるので金曜日に」とか、わりあい好きなようにやらせてもらっています(笑)。

 でも、昔のように忙しいということはないし、それから何より、責任がさほど伴わない。業績とか人事とかややこしい話は、顧問だから別に責任を持たなくていい。これはもうすごい違いだよね。そのほかに趣味もいろいろあって、結構毎日、忙しい。やっぱり「亭主元気で留守がいい」というのがいい。なるべくそうしてます。

西田 「亭主元気で」というところが大事だね。

  1日全く出かけないということはめったにないね。

西田 僕も週に1日ぐらいかな、家に丸々いるのは。最初は「エブリデーサンデー」とか言って喜んでたんだけど、いやこれ逆に毎日平日になってきてるな、という感じで。

 僕も、診察しているからには医者としての責任がありそうだけど、実は今までのような責任はないんだよね。患者さんの話をたっぷり聞いて、それで、それはこうだよああだよと説明をしてあげて。大学病院時代と違って、今はしっかり町のお医者をしている感覚。本当の医療をしているという実感が持てるという意味では、いまが一番楽しいな。保険点数から言ったらもう大赤字ですよ。いくら話をしても保険は認めてくれないから。でももう最初から「先生で稼ごうなんて夢にも思ってません」と言われて(笑)。

 だからそういう意味では、責任がない。それと、日本眼科学会の倫理委員会の委員長とかやらせてもらってる。「いや、一番、俺は倫理性がないやないか」とか冗談を言って断ろうともしたんだけど(笑)。

 でも、誰かがそういう仕事を引き受けないと、社会として回らない部分もあるしちょうど自分がそういう年なのかなって。また、そういう仕事をしてよ、と言ってくれるだけでもありがたい。

 そう。この年になってきて、別に大した仕事も、大したというのはそんなに厳しい仕事をしているわけではなくてという意味だけど、色々と誘ってくれるのはやっぱりありがたいよね。僕も出身校のOBの集まりとか、そういう一銭もお金にはならなくて手間だけかかる会の会長とかやっているけど、そういうのも年寄りの役割だろうと思うし、言ってくださるだけありがたいですね。

関連書籍

西田輝夫『70歳、はじめての男独り暮らし おまけ人生も、また楽し』

定年後、癌で逝った妻。 淋しい、そして何ひとつできない家事……。 人生100年時代の、男の生き方がここにある。 抱腹絶倒、もらい泣き!? 「このまま私はボケるのか?」定年後の独り暮らしを描く、笑えて泣ける珠玉のエッセイ! 古希(70歳)を迎えた元大学教授が、愛妻を癌で亡くした。悲しみを癒す間もないままひとりぼっちの生活が始まるが、料理も洗濯も掃除も、すべてが初めてで悪戦苦闘。さらに孤独にも苦しめられるが、男はめげずに生き抜く方法を懸命に探す。「格好よく、愉しく生きるのよ」妻の遺言を胸に抱いて――。 <目次> はじめに 第一章 家事に殺される!? 〜オトコ、はじめての家事〜 第二章 男やもめが生きぬくための7つのルール 第三章 妻を亡くして 〜オトコ心の変化〜 第四章 妻がくれたもの 〜大きな不幸の先に大きな幸せが待つ〜 おわりに

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70歳、はじめての男独り暮らし

定年後、癌で妻を亡くした元・大学教授が語る、人生100年時代の男の生き方。

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西田輝夫 医学博士

1947年生まれ、大阪府出身。1971年大阪大学医学部卒業後、米国ボストンのスケペンス眼科研究所留学などを経て、1993年、山口大学医学部眼科学教室教授に就任。2001年米国角膜学会にて、日本人としては19年ぶり2人目となるカストロヴィエホ・メダル受賞する。2010年からは山口大学理事・副学長を務めた。2013年に退任後、旅行をゆっくりと楽しもうとした矢先、長年連れ添った妻が子宮頸がんのため帰らぬ人となる。現在は、医療法人松井医仁会大島眼科病院監事、(公財)日本アイバンク協会常務理事などを務めながら、妻が最後の数か月で教えてくれた家事技術をもとに、懸命に独り暮らしの日々を送っている。

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