3月12日の刊行が決定した、桜木紫乃さん『それを愛とは呼ばず』。刊行に先立ち作品を読んでいただいた書店員さんから、続々と熱いコメントが届いております!
『それを愛とは呼ばず』著・桜木紫乃
実に1年半ぶり、直木賞受賞後初の長編
桜木ワールドの真骨頂!
妻を失い故郷を追われた男。夢を失い東京に捨てられた女。
交わるはずのない二人が出会ったとき
運命の輪が大きく軋み始める――。
ストーリー
「いざわコーポレーション」の社長であり、10歳年上の妻である章子が、64歳の誕生日の夜、交通事故にあった。
意識不明のまま眠り続ける妻の他、社内に人脈を持たぬ亮介は、会社から、そして新潟から追われる。
新たな職を得た記念に訪れた銀座のグランドキャバレーで席についた紗希もまた、その日19歳で上京してから10年目、タレント事務所からクビを宣告されたのだった。
寄る辺ない心を抱えながら出会った二人は、微かに互いを意識しながら別れる。
ひと夏に6戸の販売目標を与えられた北海道のリゾートマンションで亮介が目にしたのは廃墟同然の新古物件だった。
絶望感にかられる亮介を追って、東京から紗希がやってくる――。
誰もが懸命に生きているだけ。悪い人がいるわけではないのに、それぞれが報われない。
切なさと、最初から流れているどうにも逃げられない不穏な空気……。
そして最後に用意された、度肝を抜かれるラスト!
緊迫感と圧倒的なドライブ感で駆け抜ける、最高傑作!
桜木紫乃さんプロフィール
1965(昭和40)年、北海道釧路市生れ。2002(平成14)年「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞。’07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。’12年に『ラブレス』で「突然愛を伝えたくなる本大賞」、’13年に同作で島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で直木賞をそれぞれ受賞。
川俣めぐみさん(紀伊國屋書店 横浜店)
ラストにぞわりとした。
紗希が怖い。理解できないからではなくて、理解できてしまいそうだから怖いのだ。わからないのは亮介のほうかもしれない。彼はこのラストを望んだんだろうか?
「愛」と「愛しみ(かなしみ)」のちがいはなんだろう? 「愛しみ」ではなく「愛」だったらちがうラストだったのにと思わずにいられない。
佐伯敦子さん(有隣堂 伊勢佐木町本店)
情念です!!情念!
人は誰も夢の残骸を心に持ちながら、さみしく悲しく生きているのかなあと思いました。
伊澤はたぶん章子に出会うまで、普通の人生を歩んでいたし、紗希は美少女なんて、選ばれた分、つけが回ってきたようだし、吉田プロは悲しい!
どんどんひき込まれました。そして、雪国の本当にだだっぴろくて誰もいないところで、ふと向き合ったそれぞれの孤独が、たまらなくイタかったです。
しかし、桜木紫乃の小説はクセになる。一気読みしてしまいました。
昼間匠さん(リブロ 本部)
限られた登場人物や舞台の中で、実際には結構ハードな出来事が起きているのとはうらはらに淡々と物語が進んでいく点や主人公たちがそれぞれ抱える孤独感など、どこかフランス映画をイメージさせる雰囲気が、今までの桜木さんの作風にスタイリッシュさが加わった感じで、個人的は非常に好きな作品でした。
ラストに紗希がとった行動が「狂気」なのか「究極の愛」なのかをジャッジ出来るほど人生経験が豊富ではないですが、タイトルへ導くある人のセリフを含めて「やられた~」と読後に一人で叫んでしまいました(笑)
柳幸子さん(丸善 横浜ポルタ店)
桜木さんの小説には、いつも心を揺さぶられます。ただ普通に生きているだけなのに、逃げられない業を感じます。そして立ち向かうというより、すべてを受け入れる桜木さんの小説が私は大好きです。運命に流れていくのも一つの生き方だと私は思います。
それがとても嬉しかったです。
若木ひとえさん(文教堂 北野店)
このラストを望む「つよさ」を持つ作家が読者に問いかけている。
愛ではないとしたら何と呼ぶの?かと。
小川誠一さん(マルサン書店 仲見世店)
久しぶりにエンディングに驚かされた! こんな形の終わり方はまったく想像できませんでした。 登場人物たちの過去と現在の愛の形が見えてきた時から物語は急に進みだし始めました。前に進むことも後戻りも出来ず、今を生きていくしかない人たちの悲しみと諦めが丹念に描かれていました。
永遠の幸せの中で生きられるように……と願った彼女の愛し方はそれほど特別なことではないかもしれません。
松本愛さん(積文館書店 本部)
同封されていた案内文で、「行きつくところはまったく想像の範疇を超えた場所でした。」とあったので、ずいぶん期待させるなあと思いつつ読みました。しかしその案内を読んでいてもなお、最終章の頭の部分はとにかく驚きました。一瞬自分が登場人物の名前を間違って覚えていたのかと、前のページに戻ったほどです(汗)とにかく「なんで!?」というのが一番最初の感想でした。そして読み終わって、ページを閉じた瞬間、タイトルの『それを「愛」とは呼ばず』を見た瞬間、ゾワッとしました。「行きつくところはまったく想像の範疇を超えた場所でした。」にとにかく納得させられる作品でした。
高橋佐和子さん(山下書店 南行徳店)
思いっきり騙されてしまいました!! まさか、ラストがそうなるなんて……! 衝撃でした。
「愛」を語る小説は、この世の中に溢れていて、綺麗なものも、どろりとしたものもあります。しかし、本作は綺麗と思わせてしまう「怖さ」を兼ね備えているように思いました。
たくさんのどうして! 理不尽だよ! と思う自分との葛藤……。愛と呼ばない理由が分かったような分からないような、後味の残り具合。素晴らしいと思いました。
近年は、分かりやすい小説が数多くあるように思います。その中で、この作品は一際目立つ作品になるのではないかと思っています。
本当に「愛」とは何なんでしょうね。すごいなぁ。しばし余韻に浸ります(笑)
半澤裕見子さん(岩瀬書店 福島駅西口店)
最初なぜ「それを愛とは呼ばず」というタイトルなのかわかりませんでしたが、ラストで納得しました。女性の中に眠っている自分でも気づかない違った愛の形が恐怖でした。
もしかしたら女性には屈折した愛の思い込みがあるのでしょうか……。
とてもおもしろかったです。
久田かおりさん(精文館書店 中島新町店)
唐突に現れたその一行を、何度も何度も読み直しました。なぜ、そうなるんだ?
「愛」にはいろんな形があると思う。けれど、そこには必ずなにかどこか温かみがあるはずで。報われない愛だとしても、そこにはまぎれもなく相手を思う心の温度がある。
「愛」と書いて「かなしみ」と読む男に出会ってしまったことが、彼女の中に、だれとも共感できない「愛」のタネを植え付けてしまったのだろう。
誰もそれを「愛」と呼ばなかったとしても、その瞬間、彼女は深い「愛」に包まれていたことは間違いないはず。それが全く心の温度を伴わないものだったとしても。
竹腰香里さん(MARUZEN 名古屋栄店)
ラストのあまりの衝撃に、脳髄と背筋から震えが止まりませんでした。
過酷な運命の中で開花してしまった紗希の魔性が、無自覚なままどんどん目覚めていく過程が恐ろしく、そして切なかったです。
蜘蛛の糸に絡めとられるように、紗希の思惑に吸い寄せられる亮介と男たち。
紗希と同じ孤独感じたから惹かれあったのでしょう。
愛や幸福ってなんだろう、と考えさせられました。
紗希にとって、どん底の中で輝いてみえたものが幸福と感じてしまった。本当に切なすぎました。深く、奥深く、作品世界に囚われてしまいました。
奥澤朋代さん(三省堂書店 大宮店)
蜘蛛の糸に引き込まれるようにストーリーに引き込まれた。
気が付いたときには蜘蛛の巣に絡めとられて嵌り、蜘蛛(ラスト)そのものに近づくにつれ本から離れられなくなった。
杉本博さん(戸田書店)
桜木作品に感じていた哀愁漂う作風に凄味が加わったように思います。こうと決めた時の女は強い、そして怖い。作中、それをひしひしと感じました。
この小説は切実。気が滅入っているときには読めません。それだけ力のある小説でした。
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