記憶の中にある父親の年齢は36歳で止まっている。
両親が30歳のときに私は生まれたので、おそらく、自分が親の年齢を認識出来るようになったのが6歳くらいなのだろう。
36歳のときには年長の子がいたのか。なんて驚きつつ、私には兄も妹も居るので、36歳のときには小学6年生の子が居て、すでに4人の子どもを育てていると考えると、自分とはかけ離れすぎて想像がつかない。
8月生まれの宿命。
子どもの頃は学校がある日にお誕生日を迎えて、教室でみんなから「おめでとう!」と言われている子が羨ましかった。夏休みに誕生日がある私は教室のみんなから祝ってもらえるわけもなく、毎年毎年、静かに誕生日を迎えていた。
と言っても、もちろん家族には祝ってもらった。
夏だからだろう。何故か毎年、さっぱりとしたヨーグルトケーキ。たまに缶詰のみかんがのっていたけれど、シンプルに何もトッピングされていない年もあった。母の手作りがお決まりだったけれど、3月生まれの兄はいつもイチゴがのったショートケーキでこれまた羨ましかった。
手作りのケーキを家族の誕生日のたびに作ってくれていた母はすごいと今なら思うけれど、私は手作りケーキに喜ぶことは少なく、兄を羨んでいた。
そんな私が今年はお盆に集まった家族にお祝いしてもらった。小さな頃から進化した、新しいメンバーが増えた家族。
電気が消され暗くなった部屋。
流れるバースデーソング。甥っ子がバランスをとるのが難しそうにろうそくのついたケーキを、慎重に運んできてくれた。
みんながハッピーバースデーを歌ってくれた。
ちびっこたちと一緒に写真を撮ろうと大人たちが「愛の横ならんで〜」と言う。
1番下の子はまだよくわかっておらず、言われるがまま並ばせられて写真に収められているのが面白い。
みんなでケーキを食べた。
全員が一度に座りきれないほどの大家族のため、ちびっこたちと私が先に一緒に食べる。
おいしいねぇと言いながら夢中になってケーキと向き合う横顔を見ながら、この子たちが楽しく生きていってくれるといいな、良い未来が待っているといいなと心から思った。ほんとに思った。
初めてかもしれない。そう思える存在が居てくれることが、私の幸せだなぁと、おばさんはおばさんであることを嬉しく感じた。
数日前、妹と居るときに兄から電話がかかってきた。
妹はお盆の集まりの連絡だと思い、私にも聞こえるようにスピーカーフォンにした。
兄「お盆って愛美も来るの?」
妹「うん、居るよー」
義姉「ねぇねぇ、愛ちゃんのお祝いするー??」
妹「・・・っ、っあっあ愛ちゃん今いるからまたかける!」
我々、爆笑。
サプライズをしてくれようとしたことが、全て丸聞こえ。笑いながら、ジーンとしていた。有り難いなぁと思った。
新しい家族である義姉が私を祝おうと考えてくれたことが。もちろん毎年みんなお祝いメールをくれたり、会えれば祝ってくれるけれど、夏に家族が集まることが今まであまりなかったので、とってもじんわりした。
8/20。ここ数年、お誕生日当日は仕事以外の予定は入れず、自分が1番行きたい場所に行って、自分と過ごすと決めて毎年決行している。
今年は本業が入らなかったので、映画祭関連の事務作業は山ほどあるが、
連日やることに追われていたので、誕生日くらいどこかに行こうと考えていたところ、姪っ子に熱が出て保育園をおやすみしなければいけないので子守ヘルプの連絡がきた。
「お誕生日にごめんねー!」と言われたけれど、大好きで大切な大切な姪っ子と過ごせるなんて1番ハッピー!と踊りながら伝えた。
結局仕事もして、遊んで、お昼寝して、ごはんを作って、忙しなく過ごした。充実していた。
夜はまたケーキを用意してくれた。
すっかり元気になった姪っ子が
「ケーキ食べるのって楽しいね!」と歌った。最近オリジナルソングが流行っているのか、思ったことを面白い歌詞とリズムに落とし込み、1人ミュージカルを披露してくれる。
おいしいではなく、たのしい。ハッとした。
もちろん美味しいけれど、楽しいんだ。
その解釈は私にはなかったので、ケーキを食べることをちゃんと楽しんでいる姿に感動した。
30代はあっという間ということをひしひしと感じているけれど、30代後半。なんだかとってもとっても楽しみで仕方がない。
記憶の中の父と同じ歳。父も母も、子どもからハッとすることを教えてもらっていたのだろうか。
20歳で子どもを生んで、若いママになる!なんて夢が全く叶っていないけれど、そんなことが全く気にならないほど、面白い人生を送っているような気もする。
楽しいを楽しむ。何でも面白がって、楽しんじゃう36歳にしようと思う。
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いつまで自分でせいいっぱい?
自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。