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コンサバ会社員、本を片手に越境する

2024.07.09 公開 ポスト

繰り返すギックリ腰はアラーム信号?「歩くこと」からはじめる身体改革梅津奏

机の前のこわばった体では思考も限られる

 

今年の2月、出張先でタクシーを降りた瞬間、腰に変な痛みが走った。ぐきっではなくて、くきっと何かが小さくズレたような気持ち悪い感覚。生まれて初めてのギックリ腰だった。

長時間同じ姿勢を続けたことが原因だとか、寒暖差と緊張で筋肉がこわばっていたとか……。病院や整骨院でいろいろな説明を受けたが、一番はっきりしている原因はズバリ「運動不足」。その点に関してはどう頑張っても言い訳が立たない。いやはやまったく、お恥ずかしい限りです……。

 

運動部経験ゼロの文化系人間だが、これでも2年前くらいまでは結構身体を動かしていた。通勤で1駅2駅は普通に歩いていたし、社交ダンスを習ったり山登りしたり。特に仕事帰りに歩くのは、カッカした頭を冷やしたり原稿の構成を考えたりするのに役立っていたと思う。何より、外の空気を吸いながら歩いていると、身体の循環がよくなって血液が綺麗になるような……そんな気持ちよさが大好きだった。

しかしそんな習慣も、心と時間の余裕を失うほどに消え失せた。ギックリ腰になって一度は反省したものの喉元過ぎれば熱さを忘れ、先日2度目の「くきっ」体験を。ぎゃー!! 

二度目のギックリ腰はなかなかしつこい。立ち上がれるようになるまでに2日。その後もだましだまし動いているが、1時間以上椅子に座っていると痛みで立ち上がれなくなる。「ずっとつけているのもよくない」と言われるコルセットも、装着しないと座っていられなかったりする。きっと、「ちゃんと反省しろよ。運動しろよ。分かったな?」という神様からのくどい念押しなんだと思う(ちなみに着物だとだいぶ楽。帯がコルセット代わりになるからかな?)。

そんなこんなで、「一日に1駅分は必ず歩く」ことを自分に課した。最初は「あー、時間が
もったいない」なんて思っていたが、歩き始めるとやっぱり気持ちいい。深呼吸しながら、考えごとしながら、歩くことが好きだったことを思い出した。

 

歩きながら、誕生日に父からかけられた「器用貧乏にならないように」という言葉をふと思い出す。

机の前でこわばった姿勢でいるだけでは、考えられることも書けることも限られてくるだろう。無理やりにでも歩く時間をつくって、自分をもっとのびのびとさせてみたい。

ウォークス 歩くことの精神史 』(レベッカ・ソルニット著、東辻賢治郎訳/左右社)

まったく何もしないのは案外難しい。人は何かをしている振りをすることがせいぜいで、何もしないことに最も近いのは歩くことだ。――『ウォークス 歩くことの精神史』より

『説教したがる男たち』『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』など、ジェンダーにまつわる著書で近年日本でも知名度を上げているレベッカ・ソルニット。本書で彼女がとりあげるのは、「歩くこと」が私たちにもたらす力について。散歩しながら哲学したアリストテレス、「徒歩愛好家」を自称したルソーなど多くの著名人の「散歩習慣」に言及しながら、著者自身もどこかあてどなく歩くように綴る一冊。

散歩哲学 よく歩き、よく考える』(島田雅彦/ハヤカワ新書)

人々はそぞろ歩きながら何をしているかといえば、自分にふさわしいニッチを捜し歩いているということになるだろう。――『散歩哲学 よく歩き、よく考える』より

「暇と退屈を自由気ままに使いこなすのは、案外難しい。」まさにおっしゃる通り、と膝を打ってしまうようなプロローグから始まる、作家・島田雅彦さんによる「散歩のすすめ」。ぼんやり歩いているだけでは、なんだか生産性に欠ける。罪悪感を覚える……そんな人に教えたい、散歩=そぞろ歩きの効能とは。日々ブルシット・ジョブに追われる人ほど、「よく歩き、よく考える」ことで脳に酸素をたっぷり送り込み、思考の幅を広げるべきではないか。心のゆとりは散歩で作られる。

四千万歩の男 忠敬の生き方 』(井上ひさし/講談社文庫)

平均寿命の大幅な伸長は、だれもが人生の達人でなければならぬと要求しているのである。――『四千万歩の男 忠敬の生き方』より

シドニー行きの飛行機に搭乗中、「おまえも伊能忠敬の愚直さを学ぶべきだ」という声が確かに聞こえたという劇作家・小説家の井上ひさし。伊能忠敬の生涯をとりあげた大長編小説『四千万歩の男』を著した後、改めて忠敬の生涯を追ったのが本書。名家の大旦那として過ごした後、50歳で隠居して始めたのが星学暦学の勉強。そして56歳から72歳までの間に35000キロを歩き通し、日本地図を完成させたという偉業。これぞまさに、現代人が学びたいリスキリングとセカンドライフ。

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梅津奏

1987年生まれ、仙台出身。都内で会社員として働くかたわら、ライター・コラムニストとして活動。講談社「ミモレ」をはじめとするweb媒体で、女性のキャリア・日常の悩み・フェミニズムなどをテーマに執筆。幼少期より息を吸うように本を読み続けている本の虫。ブログ「本の虫観察日記

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