1. Home
  2. 暮らし術
  3. 日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト
  4. スタジオにいた全員が目撃した「白い手」

日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト

2024.06.23 公開 ポスト

スタジオにいた全員が目撃した「白い手」横澤丈二(ヨコザワ・プロダクション代表取締役)

謎の声が聞こえる、なぜか線香の匂いが立ち込める、天井や壁から手が出てくる、などさまざまな不可解な現象が起こるスタジオ「ヨコザワ・プロダクション」。このスタジオを30年以上運営する横澤丈二さんがその不思議な体験を綴った書籍『日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト』は、『三茶のポルターガイスト』として映画化されました。さらに6月21日からはその続編となる『新・三茶のポルターガイスト』が公開。これを記念し、書籍の一部を抜粋してお届けします。

暗くすると現れる白い手

2000年に上演した『月光石』という作品は、白塗りの家のセットで内装も白壁を施した舞台美術だった。そのため、うちの稽古場もすべて黒幕から白幕に変えたのだが、そうすると信じられないほど目が疲れるのだ。

とてもじゃないけど目を開けていられない程、目に疲労がたまるので、私は「ちょっとこれでは練習できないから、(脚本を務めた)父や、作家が来る時以外は電気を薄暗くしよう」と提案した。

 

そしてある時、父が稽古の様子を見にやってきた。すると、白いセットの中で一つだけ黒いまま置かれていた当時のアナログスピーカーを指差して、「あれも白くしてくれないと、空間のイメージが摑めない」と言い出したのだ。

仕方がないので私たちはそのスピーカーにも白幕をかけることにした。

数名のスタジオ生が電気がしっかりと点いた状況下で白幕で覆う作業をしていると、1人のスタジオ生が「あれ? 上手奥のスピーカーの後ろから何か白いものが出てませんか?」と言い出した。私は「白すぎて見えないから、もう少し照明を落としてみようか」と提案した。すると、スピーカーの後ろから半透明の白くて長い手が出現したのだ!

 

出現したというより「そこにあった・居た」という表現の方が正しいかもしれない。要するに、白い手は光と環境に負けて見えていなかっただけで、薄暗くするとハッキリと見えるのだった。

もちろん、スピーカーに幕をかけていたスタジオ生は全員ひっくり返るほど驚いた。なにせ、顔の真ん前に手が出てきたのだから仰天するだろう。その日はスタジオ生全員が白い手を目撃したのだった。

もっと前から出現していた?

ただでさえ様々な現象が起こる稽古場なので、そちらに気を取られすぎて気づかなかったのだが、ひょっとすると白い手はもっと前から出現していたのかもしれないと私は思っている。

この日まで照明を落とした状態で芝居をすることもなかったし、「能動的に“見える幽霊”を探す」という行為もしていなかったので、単にこれまで気づかなかっただけなのではないだろうか。積極的に暗くして探すようになってからはバンバン見えるようになってしまったのだ。

もう一つ、印象に残っていることは白い手が少し発光していたということだ。それも、明るい場所では見えにくかった原因なのではないだろうか。

 

後日、5~6人のスタジオ生と夜の稽古場に残っていた時にも白い手を見つけ、その際に新たに発見したこともあった。その日は白い手が何度も出現したのだが、舞台上からでなく、玄関口の天井から出てきたのだ。「あ、別の場所からも出るんだ……」とこの時初めてわかったのだった。それ以降、天井、壁、椅子、舞台セットなどあらゆる場所から手が出現するのがデフォルトとなった。また、ある時には複数本同時に出てくることもあった。場所も出方も多種多様な白い手なのであった。

白い手に好かれたスタジオ生

また、2000年は自分たちの稽古している姿をビデオに撮って客観的に見るという習慣ができた年でもある。

現在はDVDで映像をダビングしているのだが、当時はまだビデオテープを使用していた。芝居をしている姿を映像で確認できるのは良いのだが、ビデオを見たスタジオ生から白い手が映っているとか、誰も触っていないのに幕が揺れているだとか、そういう報告が相次ぎ、おかしなものが映り込む度にビデオテープをお祓いに持って行くようになった

そのうちみんな慣れてきて、何かが映ったとしてもそのまま上書きして録画するようになるのだが、最初のうちはお祓いの頻度が多くてとても大変だったのだ。

そこで、印象に残った映像がある。

実は、X君というスタジオ生が稽古場にいると明らかに白い手の出現頻度が上がるという傾向があった。

そんなX君が、ある時、室内野球に負けてその罰ゲームとして大嫌いな納豆の大盛りを食べることになった。私はその場にいなかったのだが、悪ノリしたスタジオ生たちがX君が泣く泣く納豆を食べるところを映像で撮っていたのだ。すると、撮っている最中にスピーカーからろくろ首のような6メートルくらいの手が出てきて、X君の左肩にのったのだ。

X君は肉眼では見えていないのだが、撮影者はカメラを通して見えているという状況だったそうだ。

 

私もその動画を見たが、ほんとうに長くて白くてウニャウニャと動く手だったから驚いた。残念ながら当時は映像を残すという発想がなかったので、その映像もお祓いに持っていってしまった。

明らかに白い手に好かれたX君なのだが、その後、彼の身に何も起きなかったわけではない。それはまた後で話そう。

*   *   *

続きは幻冬舎文庫『日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト』でお楽しみください。

関連書籍

横澤丈二『日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト』

【三茶のポルタ―ガイスト】として映画化! 絶対に”なにか”いると噂の稽古場。これは一体、土地の因果か、誰かの怨念か――? 30年にわたって“出続けている”心霊現象を追う、リアル怪談ドキュメント。

{ この記事をシェアする }

日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト

謎の声が聞こえる、なぜか線香の匂いが立ち込める、天井や壁から手が出てくる、などさまざまな不可解な現象が起こるスタジオ「ヨコザワ・プロダクション」。このスタジオを30年以上運営する横澤丈二さんがその不思議な体験を綴った書籍『日本一の幽霊物件 三茶のポルターガイスト』は、『三茶のポルターガイスト』として映画化されました。さらに6月21日からはその続編となる『新・三茶のポルターガイスト』が公開。これを記念し、書籍の一部を抜粋してお届けします。

バックナンバー

横澤丈二 ヨコザワ・プロダクション代表取締役

1964年生まれ。東京都出身。高校1年より、クラリネットを故・北爪利世氏に師事。日本大学芸術学部を経て、1986年、無名塾に入塾。俳優として、数々の舞台・テレビ・映画に出演。1990年には、株式会社ヨコザワ・プロダクションを設立。同年、ヨコザワ・アクターズ・スタジオ設立。現在は、脚本家・演出家として、テレビドラマを始め、舞台・映画・ラジオドラマを手掛けている。全てのジャンルを含めると、これまでに500作品以上の作品を創作している。2023年3月 日に、ヨコザワ・アクターズ・スタジオの稽古場を舞台とした映画『三茶のポルターガイスト』が全国公開される。株式会社ヨコザワ・プロダクション代表取締役。ヨコザワ・アクターズ・スタジオ主宰。劇団四重奏主宰。日本芸能マネージメント事業者協会会員。日本音楽著作権協会会員。大嶽部屋東京大竜会理事。東京江東ロータリークラブ元会員

 

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP