誰かを待つ時間、その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽をモチーフに、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに言葉を綴っていただきます。
突然に押し寄せる後悔の念に、自ら決定的な止めを刺せた事なんてなかった
何もかも思い通りに物事を進められた君は、努力とそれに伴う成果を必ず手にしてきたから
想像力が届かない虚しさを受け入れることなんて、人生の気軽なチョイスとして持ち合わせていない
どうして手に入れたばかりの安息の時間を、退屈や怠惰と感じるのか
適当に佇んで、戦いもせずに二の足を踏んでいると捉えるのか
埋まらないディスタンスについて、明確な反応をいちいち返すほど子供じゃないからって
少しも傷つかずにぼんやりと、平常心で居られたわけじゃない
神泉の裏道りを早足で歩きながら、俯いて月の光も浴びずに、静かに絶望を殺した
この感情が速やかに死んでしまえば、新しい顔に生まれ変われるのかな
現実は何一つ冴えないけれど、過去は僕なりに身を粉にして、状況という大きな壁に争ってきた記憶だけは確かに
何の価値にもならないことはわかっているが、決して消せない足跡のように
努力が足りなかったのか、運が悪かったのか、自覚があるのは器用じゃなかったということ
それが僕であり、僕の限界で、僕の履歴書で、僕の現在地
いっそのこと世界がひっくり返ったらいいのに、そんなふうに子供っぽいから
こんな世の中では相変わらず、綺麗な顔した器用な人に寝首をかかれるよ
虎視眈々と新しいページをめくることに集中したい
君の想像を少しだけ越えてゆく、努力と奇跡の結晶を手にするように
だけど本当は君の機嫌が良くなって、穏やかな顔を眺めていたいだけなんだ
あらゆる困難を通過して手にした幸福を、生きる悦びとして感覚が鈍らないうちに心底感じぬきたい
そんな時間を堪能することが、もっと許される世界になったらいいなぁ
YUKI『こぼれてしまうよ / Hello, it's me』(2024年、ソニー・ミュージックレーベルズ)収録
渋谷で君を待つ間に
誰かを待つ時間、あなたはどんな風に過ごすでしょうか。
その人が来たときの第一声を考えたり、そのあとの時間に思いを馳せたり、あるいはメールチェック、SNS、携帯ゲームなど、過ごし方はさまざま。
この連載では、そんな「待つ時間」にそっと寄り添う音楽を、DJ、作詞、音楽演出など幅広い活動をしているカワムラユキさんに毎回紹介していただきます。
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