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帆立の詫び状

2024.02.20 公開 ツイート

歌舞伎リハビリ 新川帆立

ある日、目が覚めると、身体に異変があった。やる気がみじんも湧いてこないのだ。一ミリも頑張れない。これはおかしいぞ、と思った。

 

嘘のような本当の話だが、デビューして三年間、私は布団に入って寝る前に毎晩「明日はもっと小説がうまくなりますように」とお祈りしていた。朝は「ようし、今日も小説を書くぞ!」と飛び起きる。少年漫画の主人公みたい(しかも修行中のエピソードのよう)だが、実際にそんな感じだった。それなのに今は力が湧かない。

 

この話をすると、多くの人が「頑張りすぎたのでは」「働きすぎでは」「燃え尽き症候群では」と反応する。だが自分としてはどうも違う気がしてならない。仕事をしたくないだけで、依頼もなく書いている趣味の小説は捗っているからだ。私はやはり小説が好きだし、小説に限らず物語や表現物、創作物に触れるのが好きだ。

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新川帆立『帆立の詫び状 てんやわんや編』

デビュー作『元彼の遺言状』が大ヒットし、依頼が殺到した新人作家はアメリカに逃亡。ディズニーワールドで歓声をあげ、シュラスコに舌鼓を打ち、ナイアガラの滝で日本メーカーのマスカラの強度を再確認。さらに読みたい本も手に入れたいバッグも、沢山あって。締め切りを破っては遊び、遊んでは詫びる日日に編集者も思わず破顔の赤裸々エッセイ。

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帆立の詫び状

原稿をお待たせしている編集者各位に謝りながら、楽しい「原稿外」ライフをお届けしていこう!というのが本連載「帆立の詫び状」です。

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新川帆立

1991年2月生まれ。アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部卒業。弁護士。司法修習中に最高位戦日本プロ麻雀協会のプロテストに合格し、プロ雀士としても活動経験あり。作家を志したきっかけは16歳のころ夏目漱石の『吾輩は猫である』に感銘を受けたこと。2020年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した「元彼の遺言状」でデビュー。他の著書に『剣持麗子のワンナイト推理』『競争の番人』『先祖探偵』『令和その他レイワにおける健全な反逆に関する架空六法』『縁切り上等!』などがある。

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