1. Home
  2. 生き方
  3. アウトドアブランド新入社員のソロキャンプ生活
  4. キャンプ迷子です

以前、何のためにキャンプへ行っているのか、分からなくなったと書いたことがあります。

再びです。キャンプ迷子に陥ってしまいました。

 

アウトドアラビリンスを作り上げた犯人は、Instagramです。

キャンプに来ているのに、リラックスする暇もなく、投稿用の写真撮影で大忙し。くわえて、作った料理が美味しくないこともザラにあり、完全に自分は何をしているのだろう状態。

 

 

「しなければならない」に埋め尽くされたことに、幸せを感じる余地なんてあったもんじゃありません。

そんなわけで、今回のソロキャンプでは「何もしない」ことに決めました。それこそが、本来のキャンプです。

 

迷えるソロキャンパーを救い出してくれたのは、「食」でした。

結局、人間を幸福たらしめるのは、食です。

 

本日は、シンプルにバーベキューだけします。

レシピなんて要らない。ダッチオーブンなんて使わない。

炭を起こして、食材を焼く。ただ、それだけ。

炭火で焼けば何でも美味しい。

手始めに、脂がのりにのった牛カルビ。

脂身の白が、純白のウエディングドレスを思わせます。花嫁の美しさに浮かされた式場のように熱々なった網にお肉投入。ジューっというおいしさを約束する誓いの音が山中に響き渡ります。

それではファーストバイトです。肉がまとった輝く油のヴェールが舌に触れた瞬間、脳汁がパンパカパーンです。

 

最初からこれでよかったんです。

今日は純粋にソロキャンプを楽しんでいる。その実感に嬉しくなります。

 

コテコテでコリコリのシマチョウをビールで流し込むときの快感を味わうために、ぼくらはキャンプをするのだろう。

高級極太ソーセージが情け容赦なく全ての味の記憶を薙ぎ倒すときの絶望に打ちひしがれるために、ぼくらはキャンプをするのだろう。

 

そして、本日の主役の登場。

ホッケである。

 

ホッケって、アホみたいに旨い。

いいんでしょうか。こんなに幸せになって。

神秘の魚、ホッケ。ありがとうホッケ漁師さん。

うまいよなあ。ホッケ。

ただ、実物を見たことがない。どんな顔をした魚なのだろうか。本当は存在しないのかもしれない。もしかしたら、人類が七百万年の叡智を集結して作り出した人工物かもしれない。

 

手元にあるスマホを使えば、すぐに検索できるのだけど、「ホッケ」という神性を残しておきたくて、そっとテーブルにスマホを戻した。

 

ホッケ漁師さんがいて、ホッケを捌いて、ホッケを運んで、ホッケを売ってくれる人がいるから、自分はこの幸せを享受できている。

ぼくはいつまで経ってもホッケを捕獲できないし、ホッケを開くこともできない。

 

ホッケ漁師の人がどんな志で、ホッケを捕らえているかは分かりません。

けれど、仮にホッケを食べた人を幸せにするという想いで、リスクの大きい仕事に命をかけているのなら、今ぼくのこの笑顔を見せたい。

 

ここにいますよ。

あなたの仕事でこんなにも幸せになっている人が。

 

ありがとう、ホッケ漁師さん。美味しいホッケを。

ありがとう、ホッケ漁師さん。キャンプの楽しさを思い出させてくれて。

ひっそりとした山奥のキャンプ場。何もしないキャンプがいちばん。

{ この記事をシェアする }

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP