
みなさん、ハイサイ。先日「世界の果てまでイッテQ!」でオンエアになりました『女芸人一芸合宿in沖縄』。女芸人12人で沖縄民謡に挑戦いたしました。
初めて持った三線の最初の感想は、重い。三味線よりずいぶん小ぶりですし、弾いている方を見ても軽く持って演奏しているから、まずその重さにびっくり。そしてバチ。なんとなくギターのピックや三味線のバチなど平らなものを想像しておりましたが、
右手の人差し指にはめるのですが、“お琴の爪”の太い版と言うか、“1本用歯ブラシ立て”の長い版と言うか。とにかく初めて見るもの。そして楽譜。三線の譜面は工工(くんくん)四(しー)と呼ばれる、これまた初お目見え。お琴の時も譜面は漢字だったのですが、弦の手前から「一二三四五六七八九十斗(と)為(い)巾(きん)」と、最後こそちょいと難しいですが、数字が順番に並んでいたのでまだわかりやすかった。これが工工四になると三弦あるのですが、一弦目の男(うー)弦(ぢる)が「合(あい)乙(おつ)老(ろう)」、二弦目・中弦(なかぢる)は「四上中尺」、三弦目・女(みー)弦(ぢる)は「工(こう)五六七」。どうです? 何言っているかわからないでしょう? この規則性のない名前の音たちを、パッと楽譜見た時にどこを押さえるかわからないと弾けないわけで。これを頭に叩き込むのが本当に超難しく。そしてギターみたいにフレットがないから弦を押さえる場所を覚えるのも難しい。一応初心者用の目印になるシールは貼っていただきましたが、そこを見てしまうと、今度は弦同士の間隔が狭めで一弦ずつ弾くのがとても難しく、そっちも見なければならないからパニックに。まあ最終的には前を見て弾く事が理想なので、結局どちらも見ずに弾けるほど、手にその感覚をたたき込むしかなく。しかも三線本体のちょっとした角度の違いで、音がうまく出なかったりするのですが、その角度も正解がなかなか見つからず本当に難しい。更に、以前ギターを弾いていたのですが、三線は右手も左手もギターとは違う置き方・構え方になるので、すぐギター弾きになってしまう手を直すのもこれまた難しい。ああ私、何回“難しい”って書いたんだろう。いや、まだまだ“難しい”挙げられるぞ。それほど、本当に難しかったんです。
課題は沖縄の名曲3曲メドレー。1曲目の「てぃんさぐぬ花」。これはホウセンカの事で、昔はマニキュア替わりにホウセンカで爪を染めていた、と。そして、親の教えは心に染めなさい、という“教訓歌”だそう。最初沖縄の言葉は全然わからないので歌詞の意味を知らなかったのですが、この曲を聞いた瞬間、何故か涙が出そうになりまして。歌詞の意味を知ってからはより、胸ギュ、です。それだけ優しく、あたたき名曲。そして2曲目3曲目はご存じ「ハイサイおじさん」と「島唄」。「島唄」は今まで歌詞の深い意味など考えた事もなく、ただただ気持ちよい大好きな歌だなぁ、と思って聞いていたのですが、今回お恥ずかしながら、この曲が戦争の悲劇と平和への希望が込められた曲だと初めて知りまして。これまた胸ギュ、です。苦しさもあるし、でも何か空を見上げたくなる、魂を思う感じと言うか。うまく表現できないけど、めちゃくちゃ胸ギュ、なのです。
一番問題は2曲目の「ハイサイおじさん」。シンプルに、速い。速弾きの曲。そもそも1音1音弾くのも大変なのに、それがものすごいスピードで休む間もなく続く。せっかく明るく盛り上がる曲なのに、どうしてもゆっくり確認しながら少しずつ弾くので楽しい“ハイサイ”な“おじさん”はまったく出てこないし、聞いてる人ももはや何の曲かもわからないのでは? な状態。これらの曲を慣れない体勢で、全身余計な力入りまくりで練習するから53歳、肩・首・手首・腰・足など各所ボロボロ。大浴場で身体をほぐしつつ、同室の森三中ムーさんと二人で頭にタオル巻いたまま「特訓だ!」と音が響かないように弦の間にティッシュを挟んで、毎晩弾いた。
毎回言っている気もしますが、今回マジで超最難関。今までは合宿で完成してなくても、帰京後の練習でなんとかなる、という“希望”は見えていました。ただね、今回合宿終わりで感じたのは“絶望”。とうとう“出来なかった”というゴールになってしまうのではないか、と。東京ではどこ行くにもケースに入れた三線を背負って持っていきました。寸暇を惜しむとはこの事で数分あれば弾いた。一度フジテレビの楽屋で弾いていたら、別番組で来ていたムーさんが顔出してくれて。「どこにイッテQ! 女芸人メンバーがいるかわかる。」ホントだね。
そんなこんなで迎えた当日。沖縄の着物・琉装に、髪にも大きなハイビスカスをつけた。それが12人いると、まあとにかく華やかで美しい。演奏直前、内村さんが先生方に今の心境を伺うと「本当に難しいかなと思うのですごく不安ですが、いっぱいいっぱい応援しています」とゆっくり優しくお言葉をくださりまして。その時先生が涙目だったもんだから、ムーさんを皮切りにこちらも大号泣。内村さんの「弾いてないからまだ!」の声が響く中、もう涙止まらず。演奏後に泣くはよくありますが、とうとう演奏前に泣き出すとは。すいません。そこからの本番。正直自分の出来としては相変わらずの“ド緊張しい”発動で指がガタガタ震えてしまい、思うような演奏は出来ず。毎回それが本当に悔しく、「あさちゃん情けなくて涙出てくらぁ」なのですが、もうホントこればっかりはそうなっちまうんだから仕方ない。うちらの三線と、やしろとゆいPが奏でる島太鼓、ロケバスの運転手の中村さんが先生となって教えてくださった森三中・黒ちゃんの指笛、そして沖縄言葉に苦戦しながらも最終的には本当に美しき大島ちゃんとバービーの歌声。12人による3分半の沖縄メドレー、弾ききりました。
思い返せばせっかくの沖縄なのにソーキそばやジーマミー豆腐など大好きな沖縄料理を食べる機会がなかったり、宴会芸で寺尾聰さんのつもりで出てきたのにみんなから「あれ? 吉田拓郎さん?」と口々に言われたり、いろいろありましたがなんとか無事、合宿終了。以前、大久保さんと沖縄へユニコーンのコンサートを観に行った時、夜行った居酒屋さんで地元の方が急にお店にあった三線弾き始めてみんなで踊った事があるのですが、今度沖縄行ったら、あれ、やっちゃおうかな。って、毎回一芸は終わると忘れちゃうからなぁ。ま、その時はまた、泡盛いっぱい飲んで、踊ればいいか。
【本日の乾杯】せめてもの沖縄気分を、と帰京してから近所のスーパーで買ったお惣菜のゴーヤーチャンプルー。ラー油をちょいと垂らしてピリ辛で。ビールはもちろんオリオンです。