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トンガ人ラガーマンの夫と里帰り

2023.09.01 公開 ツイート

【新連載】ラグビー元日本代表アマナキ・レレイ・マフィと私が結婚した理由 マフィあずさ

9月8日のラグビーワールドカップ2023フランス大会開幕を前に、元日本代表で横浜キャノンイーグルス所属のアマナキ・レレイ・マフィ選手のパートナー、マフィあずささんの連載がスタートします。

トンガ王国出身のプロスポーツ選手との結婚生活とはどんなものなのでしょうか? どうぞお楽しみください。

(左から、長女・次女・マフィ選手・長男・あずささん)
 

「この度ぜひ、記事連載をお願いできないかと思いご連絡いたしました」

夫が母国へ里帰りしてるため、ワンオペ3週間目に差し掛かり白目をむきながら子供達を登園させていたある朝。私の元にこんなDMが届いた。

れ、連載......??

んなあほな。と一瞬疑ったが、オファーは本物だった。

私は趣味でブログを書き始めてかれこれ2年になる。きっかけは夫。トンガ王国という国の出身だ。日本ではあまり聞いた事がない国かもしれないが、昨年1月に海底火山の噴火があった国と言えばピンとくる人も多いのではないだろうか。

この夫との暮らしがあまりにも普通の家庭と違いすぎてよくびっくりされる事があるのだが、いつか日記にでも書いて残しておきたいなぁとずっと思っていた。

夫はプロのラグビー選手。日本代表にも選ばれ、ワールドカップにも出た事がある。ラグビーに関してはきっと一流だ。しかし残念ながら私生活はめちゃくちゃのポンコツである。本当に、ラグビーしかできない人だ。いや、しない人だ。

そしてもちろん、育ってきた環境も全く違うし、物事に対する感覚も違うし、面白いと感じるものも違う。(なんで結婚したん)

私に無いものを持ちすぎてる人だった。そこに惹かれたのか? と聞かれると、そうではない。

私は尽くしてしまいがちの人間なのである。

夫がラグビー留学をしていた学生時代に出会ったのだが、トンガを離れ家族のために一生懸命カタコトの日本語でラグビーを頑張る彼の生活をみて心を打たれた。放っておけなかったのだ。南の島からやって来て日本の文化も、右も左も分かってないはずなのにいきなり大学に通ってどうやって生きていってるのか......?不思議すぎる。尽くす女の血が騒いだ。これは支えてあげないといけない......ただシンプルにそう思った。謎の使命感に駆られたのだ。

そこから卒業までお付き合い(という名の身の回りのお世話)をし、彼のプロ選手としてのチーム所属をきっかけに一緒に上京した。

そこからはめまぐるしい日々だった。

国内でのシーズン、日本代表での活動、結婚、ワールドカップ、海外のチームに所属、日本のチームとの掛け持ち、出産、移籍。数年の間に一気にかけぬけた。かけぬけた後にこれはとんでもない人生を歩んでいるかもしれない......そろそろ日記に残しておかないと......と思い立ったのである。

そもそも私達夫婦、生まれも育ちも関西の私vs生まれも育ちも南の島の夫。価値観のズレが多い。価値観の違いという理由であればもう、2万回ぐらい離婚できるレベルである。ここで多少ズレが生じていても、結婚生活ってなんとなくうまくいくんだと、いつも不思議に思う。

そしてこれ。「笑いのツボが違う」

私のなかでは大事件。致命的。

例えば、「今日のおもろかった話」のシェア。これが失敗に終わる。今日あった渾身のおもろい話を身振り手ぶり披露するのだが、全く心に響いてない時がある。細かい日本語のニュアンスも通じない時があるので分かりやすいように単語を変えながら話すと、面白さも半減する時がある。なので話しながら全く手応えを感じない(笑)。ここで友達なら爆笑してくれるはず......!のところで笑わない。

「ほんでここでな、こうなってな、こうなってん!!!」と渾身のオチを披露しても、「ヘェ~~~」なのである。鼻くそをほじっているのである。

嘘やろ......と膝から崩れ落ちる。

関西人の嫁もったこと誇れよ......?

そのくせ「なぁなぁコレ見て!」と自信満々で見せてくる動画には「海外のお店で後ろから知らん奴が頭に粉をぶっかけてくるドッキリ」というスーパーミラクルおもんない動画を見せてきたりする。私、コイツに負けたん......?この、粉男に......?悔しすぎる(笑)。世界の笑いは奥深いのだ。日々笑いを追求していかなければならない。

そのおかげか、笑ってくれた時はとびきり嬉しい。世界で1番面白い事を言えた気になる。この飴と鞭。

このやりきれない思いでさえも、お互いのズレでさえも、全てありのままブログに書くことにしよう。アスリート妻っぽいキラキラライフとは無縁の真逆の方向へ行ってみよう。そう思った。

本当に彼と生活を共にしていると「なんでそうなるん??」な出来事だらけであり、ネタの宝庫とは、この事。本人はまさか私にブログのネタにされているなどみじんも思わずのびのび生活しているが、そこがまたいい。育ってきた環境の違い、感覚の違い、ユーモアの違いが、全て笑い話にすることによって、私の中で180度見え方が変わっていった。逆に夫も、私がブログをアップするとチームメイトから「あずささんのブログ読んだよ」と言ってもらえる事がとても嬉しいらしく(何を書かれているかは分かっていない)私の事をとても誇りに思ってくれている。

まさかこんな形で夫婦円満になれるとは、嬉しい誤算である。私は、国語なんて万年通知表3だったし、表現力があるに三角をつけられていた小学生だった。それがまさか、30歳を越えてから文字を使って表現することが大好きになるなんて、人生何が起こるか分からない。結婚生活楽しんだ者勝ちだ。

そんな我が家である。話は冒頭に戻り、今年の夏のはじめ頃。夫不在の怒涛のワンオペ、3週目だった。そのワケ。それは突然のひと言から始まった。

「オレ、先トンガ行ってもいいカナ?」

今年のラグビーシーズンが終わり、コロナでなかなかトンガに行けずにいたので、今年はシーズンオフに家族みんなで行こうと決めていた矢先。夫が私に聞いてきた。もちろん「いいとも~!」とはならない。子供達の夏休みが始まるのを待って、みんなで出発するつもりでいたのだ。

なんで? と聞くと
「俺の村のラグビーチームの試合があるから、コーチしに行きたい」

村のラグビー?なんだそれは?草野球的なものか?よくよく聞いてみると、どうやら夫の実家がある村のチームが国内のトーナメントに参加しているそうだ。

「そんなんあんたが行った所で変わらんて」

「変わるよ! 俺が教える! 帰らないと。みんな俺のコト待ってる」

ETか。USJの。

村のラグビーが危機らしい。ラグビーのジャージや、ボール、スパイクなどスーツケースいっぱいに詰めて持って行くそうだ。それらを見せられて、行くなとは口が裂けても言えない。私は決心した。

「分かった。お行きなさい。村を救うんだ」

こうして夫は、私達の出発よりも5週間も前にトンガに旅立つ事にしたのである。でもよくよく考えると、異国の地でずっと身体をはり続けてる夫。たまには家族とゆっくり過ごして沢山母国語を話してほしいものだ。

そして、旅立つ前、荷造りをしていた時「熱とか頭痛いときの薬持っていきたいな」と言い出した。「いやいやいや、君そこで育ったんやろう? なんなと薬あるやろう、そっちで」と言ったら

「オレもうカラダ日本人ヤカラ」

とばりばりのカタコトで言ってきた。どこがなの?片腕ポリネシアンタトゥーまみれの奴が?(笑)

結局ドラッグストアで買った薬を数個持たせた。

そして無事トンガに旅立った夫。1週間ほどたったある日......電話があり、出てみると

「ゴホッッ!! ゴホッッッ!!も......もしもし......!!!」

めっちゃ風邪ひいてる~~~笑
「薬あってヨカッタ」と電話越しに言っていてちょっとクスッとなった(笑ろたんな)。トンガ人であっても日本での暮らしが長いと身体が日本に慣れてしまうせいなのか、トンガに帰るとみんな下痢をしたり発熱したりする事があるらしい。じつはあるあるなのであった。

おかえりの洗礼なのであろう。めちゃくちゃいらんウェルカムである。ちなみに私もトンガに行くと毎回下痢は必ずと言っていいほどあり、たまに発熱もある。トンガの水をなめてはいけない。家のまな板でさえ気は抜けないのだ。今回は子連れなので細心の注意が必要である。目薬から正露丸までありとあらゆる薬を持って行く。

そして夫。おかえりの洗礼を受け、無事回復をしトンガに帰ると必ず行く場所。亡くなったお父さんのお墓にお参りに行ったそうな。(お父さんの記事はコチラ)写真を送ってくれた。

トンガのお墓には首都高のインプラントの看板レベルのサイズ感で亡くなった方の顔写真が掲げられている。誰がどこのお墓なのか遠くからでも分かるのだ。日本のお墓とはサイズもカラフルさも全く違う。夜なんかはライトアップされキラキラしている。そして基本土葬なのだが、掘り起こす事もあるらしく衝撃だった(笑)。それは日本でも家族同じお墓に入るように、土葬であっても同じ場所に入る事があるらしい。でも必ず前の人から2年以上は間隔をあけないといけないそう。

そらそうや。笑

はじめて聞いた時は掘り起こすん......?!となり、とてもカルチャーショックだった。でも逆に夫は「日本は、燃やすん......?」とショックを受けていた。私を見て「オレのこと......燃やすん......??!」とめちゃくちゃ怖がっていた。私こそ「一緒に埋まろうね」「でも2年は開けてね」なんて言われたら怖い(笑)。ホラーである。

この件についてはこれから夫婦で沢山話し合わないといけないシビアな問題だ。

こうして一つ一つの行事や冠婚葬祭もお互い全く違う文化であるが故に日々新しい発見だらけのトンガ。そんなトンガという国。私自身訪れるのは今回で4回目。まだまだ驚く事だらけ、そして自分を見つめ直す良い機会にもなる。今回は特に久しぶりに行くので何が起こるやら、楽しみである。ハプニングしか起こらない気がしてずっとソワソワしているが、子ども達もこの旅行でどんな物を見てどんな事を感じるのか。素敵な経験を沢山させてやりたいと思う。

前置きがとても長くなってしまいましたが(はよ旅立て)。次回、トンガ旅行記パート(2)お楽しみに。

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トンガ人ラガーマンの夫と里帰り

パートナーはラグビー選手のアマナキ・レレイ・マフィ。
3人の子どもを引き連れて、夫の故郷、トンガ王国へ。ドタバタ里帰り旅行記!

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マフィあずさ

京都府出身34歳。パートナーのアマナキレレイ・マフィはトンガ出身のラグビー選手。横浜キヤノンイーグルス所属。

趣味で始めたブログラジオで子育てや日常の鬱憤を晴らし、日々奮闘中。

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