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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

2023.08.18 公開 ツイート

横並び主義、決断の遅さ、過剰な品質重視…世界で「買い負ける」日本企業の宿痾 武器になる教養30min.編集部

バブル崩壊以降、すっかり国際競争力を失ってしまった日本企業。いま大きな問題になっているのが、いわゆる「買い負け」です。水産物をはじめ、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材まで、あらゆる分野で日本の「買い負け」が顕著になっています。著書『買い負ける日本』を上梓した、調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんに、なぜ日本企業はここまで落ちぶれてしまったのか、その根本にある原因をうかがいました。

*   *   *

「横並び意識」を手放せない日本企業

── 本書を読んで、日本企業の変わらない体質にもどかしさを感じました。

(写真:iStock.com/Ca-ssis)

以前、こんな話を聞いたことがあります。お笑いコンビは、2人の実力が5×5になるのがいいと。1×9だと9にしかならないし、3×7でも21にしかならない。5×5=25に勝てるやつはいないんです。

人数が多くても同じことです。10人だろうが、100人だろうが、全員が同じ実力を持って、平等に力を発揮するのがいちばん強い。いかにも社長が朝礼で話しそうなことですね(笑)。

 

たしかに製造業などでは、いまだにこの考え方が正解なのかもしれません。しかし、いまはもうかけ算の世界ではないと思います。べき乗、累乗で実力が決まる世界がやって来ていると思うんです。

たとえばグーグルは、1人飛び抜けて才能のある社員がいたら、その才能の2乗、3乗、4乗で企業が成長し、グローバルを覆うようなサービスをしています。

一方、日本企業は、昔ながらのかけ算の考え方でずっと来ているので、飛び抜けた才能、飛び抜けた意見を認めることができない。いまだに横並び主義なんです。

 

── それでは当然、買い負けてしまいますね。

現場はめちゃくちゃ頑張っているんです。でも、たとえば日本の企業人が不足している半導体を中国で見つけたとします。そのとき、他国の企業人なら「自分が責任取るから」と言って、ガンガン買い集めるわけです。

ところが日本の企業人は、「係長と、課長と、部長と、本部長と、調達役員と、常務取締役と、CPO(チーフ・プロキュアメント・オフィサー)の承認が必要で……」と言っている間に買い負けてしまう。

 

こんなふうに融通がきかなくて、横並び意識が手放せない日本は、そりゃ買い負けるよね、というのが実感です。

面白いのは、この話をすると全員が納得するんです。ここに日本の宿痾の深さがあると思います。みんな気づいていながら、それでも40年間、同じことをやり続けている。日本の多層主義、横並び主義、全員納得主義、平等主義は、本当に根深いと思います。

なぜ日本人は「価値」を売るのが苦手なのか?

── 日本企業は品質にこだわって、価値を売ってこなかったことを、坂口さんは問題視されていますね。

(写真:iStock.com/ponsulak)

最近、労働生産性についての議論が盛り上がっていますが、「労働生産性を高めるにはどうすればいいと思いますか?」と聞くと、多くのビジネスパーソンは、効率的に仕事をするとか、短い時間で仕事をすると答えると思います。でも、本当にそうなのかなと思うんです。

労働生産性を計算式にすると、価値(分子)を、時間、日数、労働者の数など(分母)で割ったものになります。このとき、日本企業の多くは分母に注力しがちです。でも私は、分子に注力したほうがいいと思うんです。

ここで言う分子とは何でしょうか。経済学者の方から怒られるかもしれませんが、簡単にいえば「高く売る」ということだと思います。同じものを売っていても、高く売っていれば分子の数が大きくなるので、労働生産性は上がるんです。

 

── たしかにそうですね。

以前、自動車メーカーの研究所で働いていたときに聞いた、こんなエピソードが印象に残っています。

ドイツ人は勤勉だけど、日本人ほどではない。なのに、どうしてドイツ人の労働生産性は高いのか? この疑問に、ある人がこう答えました。「そんなの簡単ですよ。ドイツは日本よりはるかに高い自動車を売っていますから」

こんな当たり前のことになぜ気づかなかったのか。技術では日本のほうが上かもしれません。しかしドイツは、付加価値をつけて高く売ることができる。その点ではドイツ、あるいはイタリアといった国々のほうが上だと思うんです。

 

私にはこんな仮説があります。日本人はあまりにも同質だから、付加価値をつけたり、価値を追求したりすることができなかったのではないかと。

というのも、アメリカやヨーロッパの人たちはマーケティングリサーチをするとき、本当にたくさんの人の意見を聞くんですね。当たり前だと思われるかもしれませんが、私にとっては新鮮な驚きでした。

アメリカやヨーロッパでは、自分と似たような人はいないという前提からスタートします。だから、これならいくらで買うとか、いくらまでなら出すとか、真剣に聞くわけです。

 

一方、日本のマーケティングリサーチの多くは、インターネットで調べるとか、調査会社に頼んでウェブアンケートをとってもらうとか、それくらいなんですね。

日本人の根底には、自分と似たような人しかいない、全員同じといった考えがある気がします。だから、いろんな人の話を聞いたところで意味がないと思ってしまうのではないでしょうか。しかしそれでは、自分の想像力から脱皮することはできません。

いまこそ旧来の日本人像をぶち破って、いろんな人に話を聞いてみる。それによって、価値を売ることができるようになるんじゃないかと思っています。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前半】坂口孝則と語る「坂口孝則と語る『買い負ける日本』から学ぶ日本企業の体質と想像力の重要性」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

 

 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』はこちら

 

書籍『買い負ける日本』はこちら

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武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

AIの台頭やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進化で、世界は急速な変化を遂げています。新型コロナ・パンデミックによって、そのスピードはさらに加速しました。生き方・働き方を変えることは、多かれ少なかれ不安を伴うもの。その不安を克服し「変化」を楽しむために、大きな力になってくれるのが「教養」。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は、“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにしたAmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組です。

幻冬舎新書新刊の著者をゲストにお招きし、内容をダイジェストでご紹介するとともに、とっておきの執筆秘話や、著者の勉強法・読書法などについてお話しいただきます。

この連載では『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』の中から気になる部分をピックアップ! ダイジェストにしてお届けします。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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武器になる教養30min.編集部

AmazonオーディブルのオリジナルPodcast番組『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』を制作する編集部です。

『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』は“変化を生き抜く武器になる、さらに人生を面白くしてくれる多彩な「教養」を、30分で身につけられる”をコンセプトにした番組です。

番組はこちらから『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書

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