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キングコング西野が自ら『夢と金』解説

2023.06.26 公開 ツイート

VIP向けサービスの理解が無いと、経済的に余裕がない人が苦しむことになる! 西野亮廣

(※この記事を音声で楽しみたい方はコチラ

「花火大会」という日本の素晴らしい文化をどう守っていくか

先日、万年赤字体質の『阿波踊り』がVIP席(100席)を「1万5000円」で出したところ、地元民(特に高齢者の方)から「高すぎる!」「そんなの売れない!」という物言いがついた問題があったじゃないですか?

それに対して、「『全員に1万5000円で売る』と言っているわけじゃなくて、1万5000円で買いたい人(限定100名)に1万5000円で売るわけで、ここで阿波踊りがキチンとお金をいただくと、そこで働く人にお金が回るし、安い席をもっと安くできるし、『阿波踊り』という世界トップクラスに素晴らしい文化を守っていけるし、全員助かるじゃん。それより何より、『阿波踊りのVIP席』が1万5000円は安すぎるって!」という話をさせていただいたところ、Yahoo!ニュースなどに取り上げられて、大きな話題となりました。

このへんの話(日本人の誤ったお金の考え方、あるいは誤った清貧)はまさに最新刊夢と金で書いた内容だったので、めちゃくちゃタイムリーなニュースだったわけですけども、実は個人的にもタイムリーなニュースでして……このニュースが出た日はちょうど地元・兵庫県川西市の市長と話していて、「毎年恒例の花火大会をどう守っていくか?」という話になっていたんです。

花火大会を開催するには、お金がかかるんです。

特に「警備費」ですね。

兵庫県では過去に明石市の花火大会で、歩道橋で群衆雪崩が発生して、183名の方が怪我をされ、11名の方が亡くなられる……という痛ましい事故があったので、ここらへんの「警備上の問題」に関してはメチャクチャ慎重になっているんです。

要するに、警備費をケチっちゃうと人が死ぬ可能性が上がるから、警備費はキチンを確保しなきゃいけない。

問題は「そのお金をどうやって用意するの?」というところで、花火なんてほとんどの人が無料で見るわけで、予算の確保が簡単じゃないんですね。

そこで川西市長に「5万円のVIP席を作った方がいい」という話と、「その価格に納得感を持たせるためには、たとえばこういうやり方があります」という提案をさせていただいたんです。

そして、「そのVIPの売上を花火の運営費にまわしましょう」と。

ちなみに、僕、地元の花火の実行委員でも何でもなくて、ただのボランティアです。

地元で事故が起きて欲しくないし、「花火大会」という日本の素晴らしい文化がずっと残って欲しいので、仕事の合間を縫って地元に帰って、市役所に行って、そんな時間を設けました。

ちょうどその日に「阿波踊りのVIP席」のことがニュースになったんです。

VIP向けサービスの理解が無いと、経済的に余裕がない人が苦しむ

で、この調子で丁寧に話を進めれば、川西の花火大会はVIP席(つまり花火大会の予算)が確保できると思います。

だけど、いまだに日本のあらゆる地域では(とくに年配の方々には)、VIP向けサービスの理解が無いから、その結果、経済的に余裕がない人がメチャクチャ苦しめられている。

先日、税理士の大河内さんが「コロナが明けて外国人観光客が戻ってきても、必ずしも日本が元気になるわけじゃない。大きなお金を落としてくれる外国人観光客が戻ってきても、日本人が『大きなお金を落としてもらえる受け皿』を用意していないとダメ」とツイートされていて、本当にその通りだなぁと思いました。

ここでいう「受け皿」というのは「サービス」は勿論のこと、「考え方」もそう。

本当に学校の先生にお願いしたいのは、「高いお金を払ってくれる人がいるから、僕らはあらゆるサービスを安く使えるんだよ。だから、高いお金を払ってくれる人を潰しちゃダメだよ」という教育を子供達にしてあげて。

もしくは『夢と金』を学校の教科書にして……といったところです。

時間とお金をかけた先に待っている人間心理

で、今日は「インバウンド」について、もう少しだけお話ししたいです。

「インバウンド」というと、皆なんとなく「お金に余裕がある外国人が来る」というイメージを持ってるじゃないですか?

「円安」で日本がメチャクチャ安くなってるわけだから、「お金に余裕がある外国人がたくさんお金を使ってくれる」という考え方は大きくは間違ってないと思うんですけども……「お金に余裕がない日本人」が外国に行った時も、そこそこお金を落とすんです。

日本人ってあんまり海外に行かないから、この視点が抜け落ちている人が少なくないんですけども、そもそも海外に行こうと思ったら頑張って「まとまった時間」を確保しなきゃいけないんです。

そして「飛行機代」がメッチャ高いんです。

海外に行く時というのは、ここまでのものを支払って行くんです。

たとえばあなたが「大きな時間」と「大きなお金」を払ってメキシコのカンクンに行ったとします。

カンクンではシルク・ド・ソレイユの「ホヤ」というショーがやってます。

仮に、ステージの目の前で大迫力で見れるS席が「3万円」で、ステージから遠く離れた場所にあるB席が「8000円」だったとします。

おそらく、このショーを見るのは人生で最後ですよね?

どっちの席を買います?

それでもB席を選ぶ人もいると思いますが、「大きな時間と、大きなお金を払って、ここまで来て、もう2度と来ることないんだから、S席いっちゃうか!」という人も少なくないと思います。

要するに「ここまできたら、むしろB席を選ぶ方が勿体無い」と考えるわけですね。

時間とお金に余裕がないから、むしろ高い方(せっかくなら良い方)を選ぶという行動です。

時間とお金をかけた先に待っている人間心理ってコレなんです。

わざわざ時間とお金をかけて、徳島まで行くんです。

遠方から来たお客さんは「次に来るのはいつになるか分からないから、少々お金がかかったとしても、できるだけ良い思い出を作るぞ!」というモードに入っているのに、B席しか用意していないのが『阿波踊り』です。

海外から往復50万円かけて来る人もいるんです。

中には、ファーストクラスで往復350万円ぐらいかけて来る人もいるんです。

お金に余裕があろうが、なかろうが、その人達にしてみれば、VIP席が1万5000円であろうが、5万円であろうが、「微差」でしかない。

阿波踊りのVIP席(1万5000円)に「高いぞ!」と声をあげている地元の方の頭から抜け落ちているのは、「徳島に行くまでに支払っているコスト」です。

「ここまで来たら、奮発して、いい思い出を作って帰るぞ」という気持ちは貴方にもあるでしょう?

そこを忘れちゃダメです。

最新刊『夢と金』には、お金の作り方、守り方、使い方をトコトン書いています。
読み終わったら、大切な人、守りたい人、そして子供達に贈ってあげてください。

(撮影:イシヅカマコト)

 

※このコーナーは、西野亮廣の公式ブログより転載しています。(一部修正アリ)

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関連書籍

西野亮廣『夢と金』

「まえがき」より 「夢か?金か?」という議論をキミのまわりの連中は繰り返すだろう。 耳を傾ける必要はない。あんなのは全て寝言だ。 「夢」と「お金」は相反関係にない。僕らは「夢」だけを選ぶことはできない。 「お金」が尽きると「夢」は尽きる。これが真実だ。

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キングコング西野が自ら『夢と金』解説

発売わずか1カ月で20万部を突破した、話題のベストセラー『夢と金』。

著者は、キングコング西野亮廣。絵本、映画、ミュージカル、歌舞伎…と日々エンタメを生み出している一方で、ビジネスモデルも構築し、圧倒的な実績を残しているという唯一無二の存在が、自らの経験から得た知識を、余すところなく、一冊に書き切った!

まさに、現代日本人の全てが読まずに通り過ぎてはいけない一冊を、本人自ら解説。

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西野亮廣 芸人・絵本作家

1980年兵庫県生まれ。芸人・絵本作家。
2009年、『Dr. インクの星空キネマ』で絵本作家デビュー。0.03ミリ細い黒ペンで描かれたモノクロの緻密な絵が評判に。その後、『Zip&Candy-ロボットたちのクリスマス-』『オルゴールワールド』とモノクロ絵本を執筆。『えんとつ町のプペル』で初のカラー絵本を製作し、以後の作品、『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』はすべてカラーで製作。絵本累計部数は100万部突破。
他にも、小説『グット・コマーシャル』、ビジネス書『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』『新・魔法のコンパス』『新世界』など。ビジネス書のる生餌部数も100万部突破。

製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」(2020年公開)は、映画デビュー作にして動員196万人、興行収入27億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めた。
「えんとつ町のプペル」はミュージカルや歌舞伎としても上演され、好評を博している。
プペル発のNFTでは2022年10月31日に、取引量世界一を記録。

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