
もう3月も中旬になろうかという時期だが、FGOでは本日がバレンタインイベントの最終日である。
そしてその半月前から土方さんへのチョコを持って棒立ちになっている俺がいる。
ソシャゲのバレンタインイベントというのは大体持ちキャラ全員にチョコをあげたりもらったりできるようにはなっているのだが、今回のFGOは男女各一個ずつ「特別なチョコ」が用意されている。
つまりド本命チョコが存在するのだ。
この本命チョコを受け取ったキャラは、能力がアップしたりとイベント中大きな恩恵が受けられるので、絶対に早めに渡した方が良い。
実際イベント初日に渡した人も少なくないだろう。
しかし、そんなチョコをイベント最終日まで自分のワキに挟んでしまっているのがこの俺だ。
だが、ゲーム上有利になるとか、もはやそんな問題ではないのである。
冷静に考えてほしい、こんな誰が見ても本命だと丸わかりのチョコを私が土方さんに手渡しできるわけがないのだ。
まずお前が冷静になれと思ったそこのお前は冷静さと冷たさをはき違えている
自分のことをクールキャラだと思い込んでいるただの嫌な奴のまま一生を終えるので覚悟しておいた方がよい。
このようにいきなりキレだすぐらい冷静さを欠いているのは事実だが、どうしても渡すことができずにイベント最終日を迎えてしまった。
ちなみに記念でもらった土方さんのカードも未だにプレゼントボックスから出せていない。
今までもバレンタインイベントで土方さんにチョコを渡したことはあるし、その後のリアクションは正直毎年同じである。
だが、年々土方さんとの距離が遠くなっているような気がしてならない。
遠くなっていると言っても、心が離れたわけではない、ただ心とは裏腹に私が両手を前、ケツを後ろに突き出した状態で猛バックしてしまい、それを見た相手も生理的に1歩下がる感じで距離が開いてしまっている。
これはおそらく、私への土方さんへの気持ちが「夢」に近くなりつつあるせいだと思う。
確かに私が土方さんの話をするときは常に寝言っぽいのだが、そういう夢ではない。
「夢」とはジャンルの一つである。
夢に対する解釈は人それぞれであり、あまり断言すると戦争の火種なのでこれは私個人の解釈と思って欲しい。
オタクは外に出ると7人の敵がいるし、1人当たり26個の解釈と325個の地雷を持っている場合もあるので、予防線を張っておくにこしたことはない
夢とは、自分自身が、推しキャラと同じ世界線に存在する想像だと自分は考える。
必ずしもキャラと恋愛関係になるのが夢というわけではなく、家族友人、もはやモブの一人として「跡部サマー!」と叫ぶだけのポジションでも、推しと同じ世界にいればそれはもう夢なのだ。
今まで土方さんにチョコを渡していたのは「FGOの主人公」であり、私ではなかったのだ。
FGOの主人公は年若くして世界を救う力を持ったマスターである、そりゃあ土方歳三にチョコを渡すこともできるだろう。
あまり卑屈になるのもよろしくないが、私は魅力的な人物ではない。
どちらかというと乙女ゲーキャラが「つまんねー女」と唾を吐いて屁をこいて寝てしまうタイプだ。
そんな自分を好きになる推しなど逆に解釈違いなので、自分とは違う存在であるおもしれー女を作り出して推しと絡ませるのが私のスタンダードスタイルであった。
それが何故か最近になって、人類史上かなりおもしれー女であるFGOの主人公を押しのけて「俺が渡す」と言い出しはじめた感じである。
そして「俺が渡す」と言って渡せていないのだ。
思えば、推しキャラに対して夢思考になったのは、金色のコルダの土浦以来二人目の快挙だ。
しかし、土浦の時も自分がJKになって土浦と付き合う夢妄想をしたわけではない。
土浦に1回普通に話しかけられただけで好きになってしまうが、スクールカース最底辺として、その後一切関わりがないまま卒業する、というのが私の土浦に対する夢である。
前述の通り、夢というのは必ずしもキャラと親密な関係になることではない。
「どけ! 今年は俺が渡す!」と、主人公に猛ビンタをかまし、気合が入りまくったチョコを作って結局渡せないまま自分で食う、というのが私の夢なのだ。
逆に青春という感じがするし、リアリティがあって良いんじゃないか。
そう思って本当に渡さないまま終わりかけたのだが終了52分前になって「何言っているんだ、バカか」と急に我に返り、大急ぎで土方さんに本命チョコを渡した。
そして、その後のイベントを「スキップ」した。
土方さんに半月迷ってチョコを渡すが、渡した後のリアクションを直視できずに走って逃げる。
それが私の夢だ、誰にも文句は言わせない。
カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

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