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アルパカ通信 幻冬舎部

2022.12.27 公開 ツイート

薬丸岳『罪の境界』/三國清三『三流シェフ』―魂を感じる、小説とノンフィクション! アルパカ内田/コグマ部長

幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
三國清三『三流シェフ

北海道・増毛町での極貧の幼少期、 “料理
人の神様”に近づきたくて生やした口髭、
30歳での開業とバッシング、ミシュランとの
決裂―。時代の寵児と言われながら、が
むしゃらに突っ走ってきたぼくが、一大決心
をして「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉店する理
由と、ぼくが戦ってきた人生のすべて。

一方こちらは天才シェフのノンフィクション。フレンチのカリスマ・三國清三の自伝である。

北海道の漁村・増毛に生まれ、中学校卒業を機に単身札幌に出て、昼間は住み込みで働きながら、夜間の調理専修学校に通った。ある日、住み込み先でハンバーグが出てくる。少年は見たこともなかった。初めて食べて思わず声を漏らす。「旨め、旨め」。市内の高級ホテル「札幌グランドホテル」ではさらに本格的なハンバーグを出すと知ると、わずかな糸を手繰り寄せるようにして、なんとか厨房で働き始める。

そこから料理人の道を歩む。休まなかった。寝なかった。仕事以外のことは何も考えなかった。当時を三國は振り返る。「必死だったのは、なにもできないし、なにも知らなかったからでもある」と。

やがて東京・帝国ホテルに職を得て、その後スイスの日本大使専属の料理人に転身する。すべてはまったく順調ではなかった。行く先々でトラブルに遭い、絶望もした。だが、そんなとき、冬の荒れた海で船を漕ぐ三國少年に父が呟いた言葉を思い出す。「大波が来たら逃げるな。船の真正面からぶつかってけ」。逃げて船腹に大波を受ければ沈没するように、どんな困難にも舳先をまっすぐに向けて立ち向かうしかないのだ。

15歳で親元を離れた三國は、いま68歳になった。世界中のシェフが憧れる存在になり、東京・四谷のグランメゾンに加え、全国に店舗をもつ成功者だ。それでも自分を「三流」と称し、すべてをリセットし、新たな道を歩もうと決めた。小手先の努力では何も得られない。

読者は三國の人生を追体験しながら、前を向く力を得られる。こんな熱い本を年末年始に読めるのは幸せだ!

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。

幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!

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アルパカ内田 ブックジャーナリスト

内田剛(うちだたけし)。ブックジャーナリスト。約30年の書店勤務を経て2020年2月よりフリーランスに。NPO法人本屋大賞実行委員理事で創立メンバーのひとり。文芸書をメインに各種媒体でのレビュー、学校や図書館でのPOP講習会などを行なっている。これまでに作成したPOPは6000枚以上で著書に『POP王の本!』『全国学校図書館POPコンテスト公式本 オススメ本POPの作り方(全2巻)』あり。無類のアルパカ好き。
Twitter @office_alpaka

コグマ部長

太田和美(おおたかずみ)。幻冬舎営業本部で販売促進を担当。本はミステリからノンフィクションまでノンジャンルで読みまくる。アルパカ内田(内田剛)さんとは同学年。巨人ファン。
Twitter @kogumabuchou

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