
家事ができない夫と、家事を一切しない父が、家事をはじめたのは同じ理由でした。
それは、「家事をせざるを得ない状況になった」から。
夫の場合は、私が妊娠中に安静令が出されたときに家事をはじめました。医者から、「低置胎盤で母子ともに危険。トイレとお風呂以外は歩いてはいけない」と、言われたのです。
私は情緒不安定になり、毎日泣きながらベッドの中で過ごしました。家事なんてできる状態ではありません。
夫はそれまで、家事をほとんどしたことがありませんでした。独身のころは寮で暮らしていて、料理はしたことがなく、会社の作業着も会社がクリーニングしてくれていました。食事も毎日外食でしたから、洗い物したことがありません。
でも、そんな夫が、会社から帰宅したあとに、家事をしてくれるようになりました。
最初は慣れない姿を見て、落ち着きませんでしたが、頑張ってくれている様子が嬉しくて、私の気持ちも落ち着いてきました。そのあと安静令も解かれて、無事に元気な息子と出会えることができました。
そして父も同じような理由で家事をはじめたのです。母が脳梗塞になり入院したことが、家事をはじめたきっかけでした。
父は、性格が根っからの昭和の頑固親父。「男は働くもの!」「女は家事をするもの!」それが当たり前の時代に育った人でした。
私は母が退院したときのために、実家を掃除しようと帰省しました。「父は一切家事をしないし、きっと、家は荒れてるんだろうな~」と思って。でもいざ、家のドアを開けると……。
廊下にほこりがない……。
冷蔵庫に麦茶がある……!
洗濯物、干してあるー!
父が家事をしていたんです。家事を知らなすぎて、洗濯物を手洗いしていましたけど。笑
その動画を入院中の母に送ったら、母はとても喜んで、その日からみるみる回復し、退院することができました。医者から「回復するのはお母さん次第」と聞いていたので、驚きました。とても不思議なことだけど、父が家事をしてくれたことが、よっぽど嬉しかったのだと思います。
私も母も、命に関わるような大変な思いをしましたが、それはこの先、パートナーと長く付き合っていくためにも、経験してよかったことなのかもしれません。
だからといって、家事シェアをするために無理やり体調を崩したろ! なんて思わないでくださいね。健康が一番大切です。
でも、「家事をやらざるを得ない状況」を作ってみるのはいいかもしれません。
トモコように、仕事で出張があったら、家族に家事をお願いしたり。
たまには友人と旅行に行ったり。
少し体調が悪いなと感じたら、大袈裟に寝込んでみたり。
私が家事をしなければ家庭が回らない、と心配してしまうかもしれませんが、やらざるを得ない状態になって、ようやく本気で家事シェアに向き合う人もいます。
家族を信じてみるのも、いいと思います。
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