
暖かかった東京の11月。いよいよ来週くらいから寒くなりそうで、薄着で紅葉を見に行くなら今日が最後かもという日曜日の午後、思い立って新宿御苑へ。
新宿駅から歩行者天国をのんびり進み、紀伊國屋書店、伊勢丹を過ぎれば右手に見えてくる「追分だんご本舗」。
なにはなくともだんごである。
新宿御苑で食べるためのだんごを1~2本、のつもりが、よもぎ、七味、抹茶、海苔、みたらし……あれもこれもとほしくなってカゴに入れる。ずっしり重たい袋を手に再び歩行者天国へ。画材屋の世界堂を通り越せば前方に見えてくる新宿御苑。
入場券を買うための列ができていた。
「都会で気軽に紅葉を楽しみたい」
みな考えることは同じである。
中に入る。人が多くても広々しているので混み合うこともない。思い思いに紅葉を眺め、写真を撮る人々。ピクニックシートを広げてお弁当を食べる家族連れも。
少し散策した後、ベンチに腰掛けだんごタイム。まずはよもぎあん。持参した水筒の熱いコーヒーを飲み、つづいてみたらしだんご。辛いものも食べたくなって七味だんごも。
風が吹くたびはらはらと黄色い葉っぱが降ってくる。積もった落ち葉の上を子供たちが走り回っていた。小さな靴底から聞こえてくる「カサカサカサカサカサ」という音をしばし楽しむ。世界に美しい音楽は数あれど、この「カサカサカサカサカサ」もまた引けを取らぬ美しさである。
遠くに行列が見えた。
え、なに?
スタバに並んでいる若者たちだった。いつのまに新宿御苑にスタバができていたのか。最後尾の人は閉園時間に間に合うのか心配になるほどの大行列。なにか特殊なスタバなのかもしれないと検索してみれば、店内から望む景色がとても美しいようだった。真冬の平日にゆっくり来てみようか。
その後、プラタナス並木を散策し、バラ園を見て、最後はこの季節のお楽しみジュウガツザクラ。冬の桜である。おはじきほどの小さな花が満開だった。
新宿御苑を後にして来た道を戻る。途中、新宿中村屋で野菜カレーをテイクアウト。数時間後に行われるサッカーワールドカップ・日本VSコスタリカに備えて早目に帰宅した秋の夕暮れだった。
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うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。