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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2022.09.12 更新 ツイート

「ヘビ貿易」から考えた「無料で公開すること」にまつわるあれこれ カレー沢薫

明日掲載の記事を今日書いているタイプの作家だよ!

これはにしおかすみこネキではない。

まず何故明日掲載の記事を今日書いているかというと、従来通りウマ娘をやっているというのもあるが、最近は「ヘビ貿易」というフリーゲームにハマってしまったというのもある。

ウマとヘビ、ここから導き出せる答えは「駝」。
つまり3ヶ月後ぐらいには「ラクダ男」みたいなゲームにハマって今日掲載の記事を今日書いている可能性がある。

ヘビ貿易とは、アイテムの売却や購入、物々交換などで財をなしながら、ヘビをドンソクの二の腕のように強化したりするシンプルなゲームである。
しかし、レベルをあげて物理で殴ればいいというわけでもなく、逆にHP3のえのき状ヘビの方が勝てる敵や、HPとMP数値が同じ正方形ヘビの時だけ弱くなる敵がいたりと脳トレ要素もあってボケ防止にもちょうどいいのだ。
ただどれだけ脳を鍛えても、やればやるほど「締切」などやらなければいけないことは忘れる、という仕様である。

このゲームはコツコツレベルやアイテムを稼ぐRPG要素もあるが、マップやアイテム配置はランダムなため運要素も非常に強い。
それゆえに「次こそは豪運に見舞われるかもしれない」という期待感から何度もリトライしてしまうのだ。
またフリーゲームなため、ガチャのように金という有限制がないのも抜け出せなくなる原因の一つだ。
実際は「時間」という有限かつ、ある意味金より取り返しがつかないものを失っているのだが、時間も玄関にあった謎のフックも失って初めてその価値に気づくものである。

次こそはという期待感と金が減らないという安心感から無限に時間を消費してしまうという意味では、ウマ娘も似たようなシステムである、つまり次は確実にラクダが来る。

さらにヘビ貿易はゲームが面白いのに加えてキャラが可愛いのである。
その名の通りプレイヤーが操作するキャラはヘビで取引する相手もヘビが多いのだが、自ヘビとモブヘビの区別がないので、一瞬どれが自ヘビかわからなくなるのだが、私も描く猫の顔が全部一緒なので親近感を覚える。

また冒頭で書いたような独特のヘビ口調があり、それが妙にツボに入るのである。

ここ数日、ヘビ語りやヘビ口調で話したくて仕方がないのだが、流石に相手がいないのでぜひ皆様もプレイして、大事なものを失ってほしいニョロ。
ちなみに語尾がニョロのヘビは一切出てこない。

このように最近は有料ゲームに引けを取らないフリーゲームがたくさんあるのだが、疑問なのは「何故これを無料で公開しちゃうのか」という点である。

おそらく漫画の無料公開同様、ゲーム自体はタダでも広告費で収益を得ているのだとは思うが、世の中には本当に無償で自分が時間をかけて作り出したものを公開している人たちがいる。

ピクシブに投稿されている作品や、Twitterに投稿されている作品もリプ欄にアフィリエイトを貼っていなければ、ほぼ完全に無償公開である。

そんな無料大作を見ると「何故これを無料で見せる気になるのか」と恐ろしくなる。
却ってアフィリエイトや欲しいものリストを公開している方が安心するぐらいだ。

そういう、無償で作品を公開する人は、無料でいいから見てもらいたい、そして楽しんでもらいたいのだと思う。
確かに、無料と有料の壁は高く、無料なら見るが100円でも取るなら別にいい、という人は多いので、見てもらいたいなら無料で公開するのが一番である。
それに課金制になると「クレカ」という、ちょっと特殊な社会的地位にある人間が超えられないウォールマリアが出現してしまう場合があるので、そういう意味でも敷居が高い。

私も創作者として、タダでいいからたくさんの人に見てもらいたいし喜んでもらいたいという気持ちはわかる。
ただついでに「これが気に入ったら続きを有料で買ってくれよな」と言わずにいられないのと、商業作品を無料公開するときは必ずそれが収録されている本のアフィリエイトをぶら下げてしまうというだけだ。

そういう小賢しいことをせず、さらに「バズったら商業からお声ワンチャン」を期待せず無料で公開している人は、本当に見てもらって楽しんでもらうことを目的にしているのだと思う。

もしそこに欲があるとしたら、楽しむだけではなく「楽しかった」という一言の感想だけだと思う。

何故これが無料なのかという作品に出会うと、どうにかして作者に現金を渡したいと思ってしまうものだが、そういう人にとっては無言で胸やケツの間に札を突っ込もうとしてくる奴より、一言面白かったと言ってくれる人の方がありがたかったりするのだ。

しかし、自己肯定感を子宮どころか親父の尿道に置き忘れて生まれてしまったため、一言おもしろかったと伝えるより、無言で相手の家のドアノブに現金の入った封筒とホットアイマスクをぶら下げる方が楽、という悲しきモンスターが多いのも事実だ。

しかし、直接伝える必要などなく、Twitterなどで、作者名や作品名を入れておもしろかったとつぶやく、お得意の独り言をするだけで、作者はエゴサでそれを見つけるものである。

無償で提供するということはそれだけ反応には貪欲なのだ。
何かお返しがしたいと思ったら、どうにか札を挟む谷間や小銭をねじ込む穴を探すのではなく、虚空に向かっておもしろかったと叫ぶのが一番なのである。

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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