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うかうか手帖

2022.08.09 更新 ツイート

いくつになっても大好きなホットケーキ 益田ミリ

なんもしなかったよな~と我が10代を振り返るのであった。家の手伝いの話である。皿洗いもしない。布団の上げ下ろしもしない。洗濯物を取込むことさえ面倒で、頼まれるともったいぶってイヤイヤやっていた。学校に持っていくクッキーやカップケーキは嬉々として作るくせに、家の料理は完全スルー。配膳すらしたりしなかったり。

 

母は娘(わたしと妹)をとことん甘やかしていた。朝食の食パンにはすみずみまでマーガリンをぬって出し、リンゴはもちろん、スイカまで一口大にカットして皿に盛られていた。

朝、布団からはい出し半分寝たまま食卓に座っていると、焼きたてホットケーキが出てきた。むろん、バターがぬられ一口大にカットされたやつである。それをフォークに突き刺しねぼけ顔で食べていた。

「えっ、朝、ホットケーキ焼いてくれんの?」

友達に驚かれたことがあった。わたしは驚かれたことに驚いた。前日に食べたいものをリクエストしておけばほぼ叶えられていていることを当然のように思っていた。とんだ団地のお姫さまである。

さて、ホットケーキ。

そこそこおなかが減っていないと食べられないおやつであるが、店に入ってメニューにあると取りあえず選択肢には入れておくくらいには好きなおやつである。

子供の頃はホットケーキにメープルシロップをかけるのが苦手で、バターの塩気で食べるのが好みだった。今はたっぷりかけている。

以前、知り合いとホットケーキの話題になった。

「本当にホットケーキを食べたくなったときだけ行く店があるんです」

とその人は言った。

場所を聞くと都心からそこそこ遠く、どこかのついでに寄るような店ではなかった。電車に乗ってひとりで行ってみようかな~。思ったけど行っていない。その人はそこで知り合いに会いたくないんじゃないか。よほど疲れた日に行くのかもしれないし、あるいは自分へのご褒美のような日とか?

冷蔵庫にはホットケーキミックスがある。卵もある。バターもメープルシロップも。この原稿を書き終えたら焼こう! と今思った。

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うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。

イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。

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益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に、漫画『すーちゃん』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』『きみの隣りで』『今日の人生』『泣き虫チエ子さん』『こはる日記』『お茶の時間』『マリコ、うまくいくよ』などがある。また、エッセイに『女という生きもの』『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『かわいい見聞録』や、小説に『一度だけ』『五年前の忘れ物』など、ジャンルを超えて活躍する。

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