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フィンランドで暮らしてみた

2022.08.05 更新 ツイート

フィンランドの夏休みは「前日」から始まっている 芹澤桂

「フィンランドでは」と言ってしまうと私の周りだけだったときに赤っ恥かくので、この辺の界隈では、とぼかしてでも敢えて書きたいことがある。それは、金曜の午後遅い時間に会議を入れることは、なんとなく暗黙の了解でご法度となっているということだ。

よく日本社会には明記されていないルールがあって空気を読むのが大変、と海外出身の友人に言われるが、ここフィンランドでも同じだ。特に言わなくてもわかるでしょ、とばかりにふんわりした決まり事や、逆に決められていない事が多すぎて日々推測に苦労している。

 

そのうちの一つが金曜の午後ルール。お昼を少し回った頃から「じゃ、よい週末を!」と誰かがメールの末尾につけはじめ、櫛の歯が抜けるようにぽつぽつと誰からも返事がもらえなくなる。リモートワークがメインの私の勤務先ではそもそも金曜に出勤するのは少人数で、木曜の午後からすでに旅行先に飛んだりサマーコテージに行ったりしている人も少なくない。よって金曜の14時過ぎに会議でも入れようものならひんしゅくを買いかねない。

金曜日の午後と月曜日の午前

同じように月曜日の朝から働いているかどうかはわからないので朝一での会議も入れがたい。緊急の用事ならともかく、出勤を要する定例会議なんかはダメだ。絶対にダメ。入れてもいいけど、参加できない人多数になるだけだろう。

また、週末でなくても夏場の天気のいい日なんかはみんな仕事後にどこかに行きたくてうずうずしていたり、そのために早朝から仕事をして調整していたりするので、15時以降は捕まらないと思った方がいい。かくいう我が家も夏は夜中まで明るいのをいいことに、仕事を早く切りあげ子供たちも保育園に早めに迎えに行って、海に湖にプールに森にとここぞとばかり遊びまくっている。平日から動物園や水族館、遊園地に行くこともある。今しかできないレジャーが目白押しだから一日たりとも無駄にできないのだ。

「前日からが夏休みです」

というわけで普段の様子がそんなだから、夏休み前日ともなるともう大変だ。

社員の9割以上が明日から夏休み、という潔い休み方をしているわが社では、休み前日の午前中からもう仕事ができる人によって「休み明けにすることリスト」なるものが共有され、「みんなもうそろそろ連絡付かないだろうし休み明けは何もかも忘れているだろうから書いておくね。じゃ、素敵な夏休みを!」と添えられていた。繰り返すがまだ午前中であるのにすでに働かなくていい体だ。

私の仕事はいうなれば工程の最後の最後、社内で遅れが出ても間に合わせなければいけない、しわ寄せが一気に来るというポジションにあるので、本当に最後の最後まで粘るつもりでいたけれど、そのメールを見て一気に力が抜けた。あ、もうパソコン閉じちゃおう、と。

実際に閉じはしなかったけれど、結局そのメールを皮切りに誰もメールを送ったり電話をかけてきたりはしなかったので、落ち着いて個人作業にかかれた。

社外の人からしたら「なんであの会社のやつらもう連絡つかんねん」ってなことになっているだろうけど、きっと彼らも「あ、明日から夏休みやったな。てか夏やし今日も天気ええしな……」でカタが付いている気もする。

休む上に手当がもらえるウハウハ状態

ところで夏休みにはもう一つ、サプライズがあった。休日手当が出るのである。

休日出勤手当ではなく、休日手当。ボーナスのようなもので、雇用契約に基づいているので会社単位や組合単位で支給額は違えど、要は「休みだと何かとお金かかるでしょ?」と会社からお手当がもらえるのだ。額は平均、一か月の給料の半分ほど、と言われている。これと別にボーナスが出る会社もあるので両方だととてもおいしい。

夏休みは通常有給休暇なので、ながーい休暇を取って、通常通りの給料をもらって、なおかつ更に手当がもらえるなんて夢のような話だ。しかしフィンランドでは日本ほどボーナスがもらえることはまれなので、いざ受け取ってみると、「ま、ボーナス代わりかな」としれっと貯金に回してしまった。

ちなみにフィンランドで働き始めて最初の年に、給料の振込までもが経理の夏休みにより前倒しで振り込まれたとき、それが休暇手当かと勘違いしてごっそり貯金に回してしまったのは、今では笑い話である。

(夏だけオープンする海辺のレストラン)
(レストランからのシービュー)
(湖畔の夕暮れ)

関連書籍

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ヘルシンキ在住旅好き夫婦。休暇を沢山とれるフィンランドの制度と空港近くに住んでいる特権を利用し、世界各国年中飛び回る。つわり? 子連れ? 宿なしトイレなし関係なし! 暗黒の冬から逃れ日差しを求め目指すはスペイン、ドバイ、モルディブ、エストニア、スコットランド、でもそこでは――。想定外こそ旅の醍醐味。本気で本音の珍道中旅エッセイ

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芹澤桂 小説家

1983年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2008年「ファディダディ・ストーカーズ」にて第2回パピルス新人賞特別賞を受賞しデビュー。ヘルシンキ在住。

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