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ニッポン47都道府県 正直観光案内

2022.09.04 更新 ツイート

栃木県は日光東照宮と那須高原だけじゃない!魔界の温泉宿あり、地下空間ありで、ダイナミック&ファンタジック 宮田珠己

気の向くまま、日本中を旅している宮田珠己さんが「本当にイイ!」と思ったスポットを、47都道府県別に紹介している『ニッポン47都道府県 正直観光案内』。文庫化記念で試し読み。お次は、実はダサくない!? 栃木県!

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栃木県

関東平野の北端に位置する栃木県は、東京近郊の他県同様、ダサい県ということになっています。

ですが、東京から東北新幹線もしくは東北自動車道で北上してみると、新幹線なら宇都宮あたり、高速ならもっと早くて埼玉県との県境を流れる渡良瀬川を越えたあたりで、心がだんだん穏やかになってくるのがわかります。やっとぺったんこな関東平野から脱出できる、山が見える、という安心感が、そうさせるにちがいありません。

平坦で、人工物に覆われ、人と車であふれかえった関東平野から、離れれば離れるほど人は緩やかになる。その意味で、東京から遠ざかるにつれ、ダサさはむしろ減ると言っていいのではないでしょうか。

このことから最もダサい都道府県は東京であるという隠された真理がじわじわと浮かび上がってくるわけですが、それについては東京都の項で語るとして、今は栃木県に集中しましょう。

細かくしつこく見てみよう 日光東照宮

栃木県の観光といえばなんでしょうか。

何といってもまずは日光でしょう。

「栃木県」と書いてみると、「栃」の時点で瞬く間に親近感がなくなっていきますが、「日光」と書いてみれば、がぜん輝きを増してくるからふしぎです。

日光の見どころは、やはり東照宮の圧倒的な彫刻群。なかでも有名なのが左甚五郎(ひだりじんごろう)の作とされる眠り猫ですが、見にいくと、とりたててインパクトはありません。なぜこれが有名になったのか。バリ島のおみやげに似たようなのがあった気がします。

一方で、陽明門はさすがに迫力があります。彫刻が密集していて、ひとつひとつじっくり見てみたい衝動に駆られますが、見あげていると首が痛くなってくるうえ通行の邪魔になるので、何度行っても記憶にとどめることができません。

そんなわけで、たくさん彫刻があるな、とは思っても、東照宮の真のすごさを味わって帰る人はあまり多くない気がします。

そこで私がおすすめしたいのが、回廊の壁にある彫刻です。花鳥風月や動物などが二十四面にわたって彫り込まれ、圧巻です。やや見あげる必要がありますが、見ている人は多くなく、落ち着いて楽しむことができるでしょう。

彫刻以外では、薬師堂の天井に龍が描かれてあり、その下で手を叩くとその音が反響して龍が鳴いたように聴こえるというのですが、残念なことに、ひとくさりおみやげを営業されてからでないと自由に手を叩かせてもらえません。鳴き龍は全国各地にあるので、思う存分龍を鳴かせてみたい人は、他所でやるのがいいでしょう。

日光東照宮からさらに奥へ進むと、いろは坂華厳の滝中禅寺湖などがあって全国的に有名ですが、さらにその奥、戦場ヶ原の大湿原が素敵です。尾瀬よりもアプローチが簡単で、夏はハイキング、冬は歩くスキーなども楽しめお手頃です。

日光に次ぐ栃木県の観光地といえばどこでしょうか。塩原の温泉や那須高原の名前が浮かびます。

御用邸もある那須高原には、爽やかな森と、そのなかに、なぜここにあるのかよくわからないたくさんのミュージアムがあふれています。避暑地ならではの光景と言っていいでしょう。

高原の避暑地にはなぜミュージアムが乱立するのか。牧場がたくさんあるのはわかるのです。牧場は広大な草地が必要だから。しかしミュージアムは別に高原でなくてもいいはず。

このふしぎな現象は、つまるところ、われわれ日本人が実は高原での過ごし方をわかっていないことに起因していると思われます。われわれは高原に慣れてない。来てみたものの何をしていいかわからない、それが高原というもの。高原と聞くだけで、なんだか浮わついた感じすらしてきます。いったい高原は何をするところなのでしょう。乗馬?

となると乗馬しないわれわれは、ミュージアムやアウトレットで時間を潰すしかないわけです。

魔界の宿 奥那須北温泉

ところで、那須高原には関東屈指の、いや全国でも類を見ない知られざる名スポットがあります。それは北温泉

山間の一軒宿ですが、ただの温泉宿ではありません。魔界です。

安政の時代からある迷路のような建物に、巨大な天狗の面がかかる混浴の浴室(数年前までは廊下が更衣室でした)、なぜか建物内に神社があり、温泉の川が流れ、日露戦争のポスターが貼ってあって、外には巨大プールのような露天風呂。

いったいここは何なのか。というか温泉宿ですが、これほど魔界めいた場所はなかなかありません。強力おすすめです。

この雰囲気だけで行く価値あり。(イラスト:宮田珠己)

そのほか、宇都宮からほど近い場所に大谷石の採掘場跡があり観光地になっています。付近の町は奇岩がそびえるふしぎな景観で、それ自体も面白いのですが、さらにその下に野球場が入るほどの大地下空間があるというから驚きです。すぐ隣には巨大な観音像が彫られていたり、磨崖仏(まがいぶつ)が国の重要文化財に指定されている大谷寺などもあって、このあたりちょっとユニークなゾーンとなっています。

今のところ観光客はその三ヶ所だけを見て帰りますが、実はほかにも全体で二百五十以上の地下空間があるそう。水が溜まって地底湖ができている場所もあり、最近になって探検ツアーが組まれるようになりました。何か恐ろしい生物が棲息していたりするかもしれません。

さらに町のはずれには、平らな畑の一画に、突然巨大な竪たて坑こうがぱっくり口を開いていたりして、大地の下に知られざる地下世界が広がっているというダイナミックな驚きは、この場所ならでは。新しい感覚の観光スポットとして注目です。

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この続きは幻冬舎文庫『ニッポン47都道府県 正直観光案内』をご覧ください。

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ニッポン47都道府県 正直観光案内

スペクタクルな富山県、果てしなく遠い和歌山県、大分県は大魔境、何かとやりすぎな徳島県、青森県はSFの世界、愛知県の可能性は無限大、埼玉県がダサいと言われる本当の理由とは? へんてこ旅を愛する著者が、知名度や評判に惑わされず本気で「イイ!」と思った観光スポットのみを厳選。かつてなく愉快な、妥協なき47都道府県観光案内。

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宮田珠己

旅と石ころと変な生きものを愛し、いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追究している作家兼エッセイスト。その作風は、読めば仕事のやる気がゼロになると、働きたくない人たちの間で高く評価されている。著書は『ときどき意味もなくずんずん歩く』『いい感じの石ころを拾いに』『四次元温泉日記』『だいたい四国八十八ヶ所』など、ユルくて変な本ばかり多数。東洋奇譚をもとにした初の小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』で、新境地を開いた。

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