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ニッポン47都道府県 正直観光案内

2022.07.17 公開 / 2023.09.22 更新 ツイート

お手元の「ガイドブック」でガッカリしたことありませんか?この本は、本気でイイ!と思ったところしか載っていません【再掲】 宮田珠己

旅先で変なもの・奇妙なもの・すごいものを探しては、おもしろエッセイを執筆している宮田珠己さん。面白旅の達人が、47都道府県別に魅力的なスポットをまとめた本『ニッポン47都道府県 正直観光案内

あらためて国内旅行を面白がってみませんか?身近な場所や地元に、意外なスポットを見つけて足を延ばしてみるのも、楽しそうです。

当作品を現在開催中の、#エキナカ書店大賞 にエントリーしたところ、大変な反響があったので、「はじめに」を再掲します。このポストに「いいね!」をお願いします。投票期間は9月30日まで。ぜひ応援してください!

*   *   *

はじめに~奇妙で正直な47都道府県観光案内

観光とはなんでしょうか。

観光の真髄は、すごいもの、奇妙なものを見ることだと私は考えています。日々の生活ではお目にかかれないすごいものを見にいくこと。それによって今までの自分の価値観に揺さぶりをかけ、わずかでも新しい自分に生まれ変わって帰ってくるわけです。

であるならば、なるべく意外なもの、知らなかったもの、不思議なもの、とりわけすごいものを見たいと思うのは当然でしょう。

ところが実際に観光してみると、そんなにすごくないものを見ていることが多いように思います。

美観地区とか、なんとかタワーとか、滝とか、武家屋敷とか、ローソク岩とか、鳴き龍とか、「○○○ゆかりの地」とか。なかにはすごいものも混じっているのかもしれませんが、まあだいたいあんまりすごくありません。

思えば、昨今はB級スポット巡りや路地裏散歩に人気があり、私も好きですが、そういうところが流行るのも、もとはといえば、今までさんざんすごくない観光スポットばかり見せられたせいで、みな飽き飽きしているからではないでしょうか。しょうがないからハードルを下げ、その結果としてB級スポットや路地裏の面白さに気づいたということでは?

B級スポットも路地裏もそれ自体べつに悪くありません。誰にも珍妙なものを見てクスクス笑いたいときがあります。ノスタルジーに浸りたいときもあります。ですがその心の奥に、本当はもっとすごいものが見たいという観光客魂の叫びが聞こえないでしょうか。

道の駅で地元の特産品を買い、鄙ひなびた土地に知られざるおしゃれなカフェを見つけ、路地裏でかわいい雑貨を買うこと。それもまた今どきの観光なのでしょう。けれども、あくまでそれは観光の枝葉に過ぎません。枝葉が充実するのは構いませんが、肝心の幹の部分はどうなってるのでしょうか。

すごい観光地はどこにあるのでしょう。

ためしに旅慣れた人に聞いてみますと、嬉々として教えてくれることがあります。「○○県に○○というところがあってね、云々」

ただ、旅慣れた人は自分の好みがわかっているので、同じような場所ばかり巡る傾向があります。どんな場所を巡ろうと本人の勝手ですが、あまりマニアックな旅人の話は参考にならないと思ったほうがいいでしょう。城とか水族館が好きというのならまだしも、たまにお墓とかダムとか言いだす達人がいて役に立ちません。たとえば坂本龍馬の墓とか言われても、坂本龍馬によほど思い入れがなければ、ただの大きな石です。与謝蕪村でも、源頼朝でも同じです。どんなに有名人であっても、墓なんかとくに面白くない。唯一日本で面白い墓があるとすれば、キリストの墓ぐらいでしょうか。そしてダム。おお、これは日本唯一の三連続中空重力ダムだあ、ってどんだけ珍しいのか知りませんが、一般人の知ったことではありません。

やはり一般人には見た目が大事。一見してわかるすごさで驚かせてほしいものです。

言うまでもないことですが、すごいと言っても、必ずしもでっかいものや派手なものばかりがすごいわけではありません。細かかったり素朴なもの、地味なもののなかにも、すごいものはある。B級スポットや路地裏にも、武家屋敷やタワーのなかにも探せばすごいものは当然あると思います。奇妙なお墓、すごいダムなら私も見たい。つまり専門的知識がなくてもマニアの目で見なくても、誰が見ても来てよかったと思える、手ごたえの感じられる場所を観光したいということです。

というわけで己の観光客魂に従い、妥協なき観光案内を書いてみることにしました。想定している読者は、その県に行くのは最初で最後かもしれない人です。一度しかない機会をみすみすつまらない観光地で過ごしてしまわないために、参考にしてもらえればと思います。

最初にスタンスをはっきりさせておきます。

⃝マニアでなくても、専門知識がなくても楽しめる観光スポットのなかから、正直にいいと思う場所だけを厳選し、都道府県別に紹介する。

⃝グルメや、おみやげ、店、宿などの情報は枝葉だから扱わない。ただしものすごいものに出会った場合に限り、とりあげることもある。

⃝めんどくさいのでアクセス情報、入場料、休館日などは扱わない。行きたい場所があれば各自調べるように。

ということで、47都道府県観光案内はじめます。

*   *   *

この続きは幻冬舎文庫『ニッポン47都道府県 正直観光案内』をご覧ください。

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ニッポン47都道府県 正直観光案内

スペクタクルな富山県、果てしなく遠い和歌山県、大分県は大魔境、何かとやりすぎな徳島県、青森県はSFの世界、愛知県の可能性は無限大、埼玉県がダサいと言われる本当の理由とは? へんてこ旅を愛する著者が、知名度や評判に惑わされず本気で「イイ!」と思った観光スポットのみを厳選。かつてなく愉快な、妥協なき47都道府県観光案内。

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宮田珠己

旅と石ころと変な生きものを愛し、いかに仕事をサボって楽しく過ごすかを追究している作家兼エッセイスト。その作風は、読めば仕事のやる気がゼロになると、働きたくない人たちの間で高く評価されている。著書は『ときどき意味もなくずんずん歩く』『ニッポン47都道府県 正直観光案内』『いい感じの石ころを拾いに』『四次元温泉日記』『だいたい四国八十八ヶ所』『のぞく図鑑 穴 気になるコレクション』『明日ロト7が私を救う』『路上のセンス・オブ・ワンダーと遥かなるそこらへんの旅』など、ユルくて変な本ばかり多数。東洋奇譚をもとにした初の小説『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』で、新境地を開いた。

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