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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2022.05.12 更新 ツイート

実写デビルマンとの間に信頼関係はあるのか問題 カレー沢薫

最近ゴールデンカムイの話をしすぎだったので今回はやめておこう。

そんなわけで今回は実写デビルマンの話をしようかと思う。

 

実写デビルマンに関してはどれだけ語っても「語りすぎ」ということはない。

コミュ症にとって饒舌に語ってしまった後「喋りすぎた……」と後悔する大反省会は日常茶飯事だが、これはいつも半笑いでその場に存在するだけの置物だった自分が突然早口で喋り出して周囲はさぞキモかっただろう、という反省であり推しについて語りすぎたという後悔ではない。

そもそも推しについては「語りすぎた」などという概念はない。常に「今日も推しの魅力を三分の一も伝えられなかった」と純情な感情がマイハートなのである。

私は今までもことあるごとに実写デビルマンについて語ってきた、時にはテーマを無視しても語ってきたし、そもそもこれだけ語っているのに、今までテーマが「実写デビルマン」だったことは一度たりともなかったような気がする。

そのかいあって「あまりにもしつこいから見た」という人も相当数おり、私の布教活動の中で一番成功しているのは実写デビルマンと言って間違いない。

しかし私が実写デビルマンを推す方向性というのは一歩間違えれば危険なもののような気がしてきた。

「推し」と一言で言ってもその推し方には様々ある。

ひたすら神のごとく崇める場合もあれば、基本的に全肯定だが推しがクソ曲などを排出した時は「自分には合わなかった」と言葉を選んでお気持ちを表明する派、お近づきになるなんて滅相もない、自分は推しの家の壁のシミで十分、という謙虚に見えて意外と高望みしているやつもいれば、何とかして近づきたく、できればワンナイトというグルーピーと呼ばれるような人たちもいる。

本人としては、どんな形でも応援してくれるなら嬉しいとは思う、しかし、推しとファンの間には時として「認知の歪み」が起こる場合がある。

これは推し活だけではなく、セクハラやパワハラ、痴漢やストーカーなどの犯罪行為にもよく見られる現象だ。

されている本人にとっては「嫌がらせ」でしかないのに、している側からしたら、コミュニケーションや愛情表現であり、「されてる側も喜んでいる」と信じて疑っていないケースがかなり多いのだ。

推し活でも、自分は応援しているつもりでも、本人にとっては迷惑行為ということはある。

だが何せ自分は応援しているつもりなので、それに気づけない以上行動を改めることはできないし、自分でそれに気づくのは困難かつ、大人になると注意してくれる他人もなかなか存在しないため、最終的に国家権力に注意されることでやっと気づく、もしくはそれでも気づけない場合すらある。

私も自分的には「ファン歴15年以上の実写デビルマン推し」なのだが実写デビルマンからすれば「15年以上文句を言い続けている粘着にも程がある輩」の可能性がある。

私にとってはデビルマンに対する「クソ」は褒め言葉なのだが、そんなのはセクハラしている側が「コミュニケーションの一環としてケツを揉んでいた」と言っているようなものである。

 

では、このコンプラ社会において「一見悪態に見える愛情表現」というのは一切やめた方が良いのだろうか。

 

もしそうだとしたらデビルマンの話は今回で最終回になってしまうので、何とか避けたい。

 

ハラスメントの定義というのは厳密に決められておらず「された側が不快に感じるか否か」で判断される場合が多い。

 

ゆえに「※ただしイケメンに限る」という言葉が流行ったように、結局イケメンならパンツの色を聞かれてもセクハラではなく、ブサメンなら天気の話でも「空模様を訪ねるふりをして私の股間の具合を聞いているに違いない」と、セクハラ扱いするのだろう、とも言われてきた。

 

確かに「相手による」という場合はある。

ただし、それは相手がイケメンかブサメンかではなく、双方の「信頼関係による」のだ。

 

毒蝮三太夫が高齢女性を「死にかけのババア」と呼ぶのもそろそろアウトになってきているのかもしれないが、それでも死にかけのババア側が、毒蝮を信頼し「毒蝮ならOK」と思っているならそれはジョークとして成立しなくもない。

 

ジョークの成立範囲というのは関係性に大きく変わり、信頼度カンストなら「ブス」という滅びの呪文すら「おいおい、人前でそんなに褒めるなよ、皆バカップルと思うだろ、美味しいパスタ作った俺マジギレ」となるのだ。

 

しかしそれは「お互いの信頼度」が一致している場合であり、一方が勝手に信頼度カンストだと勘違いすると「自分は愛情表現のつもりでブスと言っているのに何故か彼女は怒る、解せない」という歪みが生じてしまうのだ。

 

私は実写デビルマンのクソさを心から信頼し、クソと言い続けているのだが、もちろん相手がそう思っているかはわからないし、嫌だからやめてくれ、と言われたらやめざるを得ない。

 

しかし、できれば実写デビルマン側にも私を信頼してほしいと思っている。

ストーカー野郎の供述でしかないかもしれないが、私は実写デビルマンを心から推しているのである。

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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コメント

カレー沢 薫  実写デビルマンとの間に信頼関係はあるのか問題|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - 幻冬舎plus https://t.co/3BwN6FzJ4v 実写デビルマンは俺のことをどう思っているのかふと気になった 多分どうとも思ってない 7日前 replyretweetfavorite

Andy@sv650s  実写デビルマンとの間に信頼関係はあるのか問題|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - 幻冬舎plus https://t.co/Tfw5Ewn5O1 6日前 replyretweetfavorite

そらした👁氏  ほんこれ。推し。 実写デビルマンとの間に信頼関係はあるのか問題|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - 幻冬舎plus https://t.co/sMwcI2UCSk 6日前 replyretweetfavorite

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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