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体調は習慣でできている

2022.05.02 公開 ツイート

<腸を整える>大便革命

免疫力がアップする“美腸”習慣 辨野義己

体が何となくだるい、お腹の調子が悪い……。それは、腸内環境が悪く、免疫力が下がっているのかもしれません。「うんち博士」辨野(べんの)義己さんの『大便革命』(幻冬舎新書)より、食と生活を改善して腸内環境を整える方法を紹介します。

(写真:iStock.com/metamorworks)

(2020.03.04 更新「美腸」を維持して免疫力アップ。食物繊維は2:1で摂るべし/2020.03.10 更新「9つ超えたら要注意! 自分でできる「腸年齢」チェック」より)

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腸内細菌は「バランス」が肝腎

「美腸」とはどんなものでしょう。それは胎児のようなまったくの無菌状態ではなく、腸内細菌のバランスが理想的に保たれている状態のことです。

大腸内では「発酵」か「腐敗」のどちらかが起きています。どちらになるかを決めるのが、腸内細菌です。これまで私たちが「善玉菌」「悪玉菌」と呼んできた細菌は、腸内でそれらが引き起こすプロセスと深い関係があります。

一言でいえば、腸内で「発酵」を引き起こすのが「善玉菌」で、「腐敗」を引き起こすのが「悪玉菌」といえます。発酵が起きるようにバランスのとれた環境が「美腸」であり、腐敗が起きやすいのが「醜腸」というわけです。

腸内で起きる腐敗現象は、肥満やがん、免疫不全など多くの疾病に関わっており、「醜腸」すなわち悪玉菌が多い腸は病気への第一歩といえます。

食物繊維こそ「美腸」の決め手

腸内環境を整え、いいウンチが快適に出る「美腸」をつくるには、なんといっても食物繊維をたっぷり摂ることが必要です。

なぜ、食物繊維は重要なのでしょうか。

それは、小腸で吸収されずに大腸まで届くからです。大腸まで届いた食物繊維は、そこで水分をたっぷりと吸収するため、ウンチのかさが増えてスムーズに排泄できるのです。さらに食物繊維は腸内の酪酸菌のエサとなることで酪酸濃度を高めて腸内環境を整える働きもします。

参考までに、食物繊維の多い食材の一覧を列挙します。

 

【食物繊維が多い食材】

◎不溶性食物繊維が多い食材

  • 豆類:いんげん豆、ひよこ豆、えんどう豆、大豆など
  • 穀類:玄米、ライ麦、大麦、雑穀など
  • 芋類:さつまいも、こんにゃくなど
  • 種実類:栗、アーモンドなど
  • キノコ類:干ししいたけ、エリンギ、まつたけ
  • 野菜:ゴボウ、たけのこ、とうもろこし、アボカド、モロヘイヤ、ダイコン、かぼちゃ、ブロッコリーなど
  • その他:切り干しダイコン、高菜漬けなど

 

◎水溶性食物繊維が多い食材

  • 果物:バナナ、リンゴ、キウイ、みかん、アボカドなど
  • 海藻類:わかめ、昆布、もずく、ひじき、寒天など
  • キノコ類:なめこ、しいたけ、エリンギ、エノキ茸など
  • 芋類:さつまいも、さといもなど
  • 野菜:あしたば、モロヘイヤ、オクラ、ゴボウ、ゆりねなど
  • その他:納豆、らっきょう、エシャロット、かんぴょう、抹茶など

腸内細菌が免疫力を高める

年齢や食事によって腸内環境は変化するため、「美腸」を維持するには、ビフィズス菌を増やし、悪玉菌を減らす環境を整える必要があります。

ビフィズス菌はヨーグルトや乳酸菌飲料、食物繊維を摂取することで増やすことができます。とくにビフィズス菌や乳酸菌をそのまま摂取できるヨーグルトは、効率よく腸内環境を改善できます。

食べるときの分量の目安は1日200~300グラム。ただし空腹時は避け、乳酸菌飲料は、食事中か食後に摂るようにしましょう。

ヨーグルトや食物繊維の摂取は、腸内環境の改善や快便、すなわち「美腸」の維持によいだけではありません。どちらも腸内環境にいい影響をおよぼすため、免疫力を高める効果があることが知られています。

というのも、腸には免疫細胞の約7割が集中しているからです。

免疫力を高めるには、脳と腸がリラックスした正常な状態であることが大切とされています。その状態を保つためにも、腸内細菌を「善玉優位」に保つ必要があるのです。ヨーグルトを食べることで花粉症が治った、という話がよく聞かれますが、おそらくそれは腸内環境の改善によって、免疫力が強化されたことから来ています。

「腸年齢」と実年齢のズレ

ヒトは赤ちゃんから成長して大人になり、やがて老いていくにつれ、腸内環境も変わっていきます。その変化をわかりやすく示す指標が「腸年齢」です。

実際の年齢と腸年齢は一致するのが普通ですが、じつは日本人の腸年齢はいま、実年齢に比べてとても高くなっています。まだ若いにもかかわらず、腸内は「老人」という人が多いのです。以前、あるテレビ番組のために私たちが調査をしたところ、実年齢20代の人の腸年齢が平均45・7歳、30代では51・3歳でした。

私はこれまでにたくさんの方の「腸年齢」を調べてきました。そのなかには、実年齢は20歳なのに「腸年齢」が70歳以上に達していた女性もいました。

その方は、いつもお菓子やペットボトル飲料で食事を済ませており、ご飯類をほとんど摂らずにいました。「腸年齢」の測定のために提供してもらった便も、2週間も便秘が続いたあとに、下剤でやっと出したという、筋金入りのウンチでした。

この女性の例からもわかるように、「腸年齢」が実年齢以上に老いる最大の原因は食生活にあります。

食べ物は小腸で消化・吸収され、大腸へと送られますが、その間に消化しきれない食べカスなどを腸内細菌がエサにするので、食べ物は腸内細菌のバランスに大きな影響を与えているのです。胃で分解された食べ物は、小腸でほぼ消化・吸収され、さらにその残りが大腸へ行き、大便となります。

大腸の腸内細菌のバランスが崩れると、さまざまな病気を引き起こすことが知られています。日本人の食生活はこの50年ですっかり欧米化し、肉類の消費量は10倍以上に増えました。またファストフードやスナック菓子などの摂取も日常的になっています。高脂質・高タンパク質の食生活が普及したことが、日本人の腸を急速に老化させる原因となっています。

腸内の悪玉菌の大好物は、タンパク質や脂肪を多く含む食品です。これらが腸内細菌によって利用され、アミン類や脂肪を分解するために必要な胆汁酸を分解し、発がんを促進する物質に変えてしまいます。

最近の若い人々の大好物であるハンバーガーなどのファストフードは、悪玉菌が好む典型的な食事といえるでしょう。他方、長寿菌の好物は食物繊維を豊富に含む野菜、海藻、穀類などです。

食物繊維は腸にとって非常に重要なもので、不足すると腸内に便が長時間とどまり、悪玉菌の増殖を招くことになります。

自分の「腸年齢」の調べ方

食生活の乱れや運動不足によって腸内環境が悪化すると、腸の老化も早まります。腸の老化は大腸がんや大腸ポリープ、過敏性腸症候群といった、大腸に由来するより深刻な病気を引き起こす危険もあります。大腸がんは実年齢とは関係なく、むしろ腸年齢によって発症の危険性が決まります。年をとった人がかかる病気だろうと思って腸内環境に無関心なまま、腸年齢を上昇させるのは危険です。

自分の腸年齢は、生活習慣や食事、トイレのなかで観察できたことについて、簡単な質問に答えることでわかります(以下の項目のうち、当てはまるものの数を数えてみてください)。

◎生活習慣に関する質問

◎食事に関する質問

◎トイレに関する質問

  1.  

チェックの数: 0 項目

※環境によって、チェックできないまたはチェック数が0のままの場合があります。その場合はお手数ですがご自分でカウントをお願いします

 

以上の24項目のうち、チェックしたものが3個以下であれば、あなたの「腸年齢」は実年齢どおり、もしくは実年齢より若く、腸内環境は理想的といえます。

チェックが4~9個ついた方は、実年齢プラス10歳が「腸年齢」です。やや腸が老けている傾向にあるので、食習慣をはじめとする生活習慣を改善する必要があります。

チェックが10~14個の方は要注意です。あなたの腸は老化が進んでおり、腸内環境に黄色信号が灯っています。「腸年齢」は実年齢プラス20歳なので、いますぐチェックした項目を改善しなければなりません。

もしチェックが15個以上もついた方がいれば、あなたの「腸年齢」は実年齢プラス30歳で、腸内環境は高齢者と同じ状態にあります。いますぐ食事や生活習慣を改善しないと、がんになる危険があります。

「腸年齢」は年齢とともに上がっていくのが自然ですが、食事や生活習慣からも大きな影響を受けます。「腸年齢」が実年齢に比べて高い人は食生活に問題があることが多く、ファストフードやスナック菓子ばかりを食べている人や、動物性脂肪の多い食事を好む傾向にある人は、実年齢の2倍も3倍も腸が老けていることがあります。

 

腸内環境を良くするには、食事や生活習慣を見直すことがなによりも肝腎です。

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辨野義己

1948年大阪府生まれ。国立研究開発法人理化学研究所イノベーション推進センター特別招聘研究員。農学博士。専門領域は腸内環境学、微生物分類学。酪農学園大学獣医学科卒。東京農工大学大学院を経て、2009年より現職。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気の関係を掘り下げて研究し、文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門・2009年)ほか数々の学会賞を受賞。ビフィズス菌・乳酸菌の高い健康効果を訴える「うんち博士」としてテレビ、雑誌などのマスコミに広く取り上げられており、講演活動も多い。『自力で腸を強くする30の法則』(宝島社)、『腸内細菌の驚愕パワーとしくみ』(C&R研究所)、『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)、『大便革命』(幻冬舎新書)など著書多数。

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