1. Home
  2. 生き方
  3. うかうか手帖
  4. 我は大人に なりにけり

うかうか手帖

2022.05.09 更新 ツイート

我は大人に なりにけり 益田ミリ

「カプリコ」をかじったときのあの食感を人はどのように表現するのか。

 

カフカフ

カルカル

モカモカ

ガコガコ

オノマトペ大好きジャパンにおいても、アレの表現は一筋縄ではいかぬだろう。個人的には「カ」は入れたい。サクサクの「サ」ではないんやよな、なのである。

子供時代のわたしにとってカプリコは謎なやつだった。

見た目はアイス、でもお菓子。お菓子っていうかチョコレート?

形状から鑑みて冷凍庫に入れてみたこともあった。凍らせればアイスになるんじゃないかと思ったのだがカプリコは微動だにしなかった。

カプリコには芸術性もあった。前歯だけで作るカプリコ彫刻。ガジガジ削りオリジナルの形を目指した。母に「やめなさい」と呆れられるまでがカプリコ派の芸術だった。

カプリコ。

久しぶりに食べたくなってコンビニへ。何年ぶりだろう? いや何十年ぶりか?

一軒目のコンビニ。ない。

二軒目のコンビニ。ない。

わたしの心は固まった。あるまで帰れま10である。

三軒目。あった。いちご味。

わたしのイメージではカプリコは陳列棚にぶら下げられているお菓子であったが、コンビニのカプリコは棚に寝かされていた。

家に帰ってさっそく紙をはがす。子供の頃は大きなお菓子と思っていたが、大人の手ににはそれほどでもなく、

「カプリコよ 我は大人に なりにけり」

脳内で会話しつつ、いざカプリコ。

めくるめく不思議な食感。おいしくて翌日も買って食べた。

そしてわかったことがある。カプリコを買ったあとの帰り道はなんだかちょっと幸せで、口の中がすでにカフカフ、カルカル、モカモカ、ガコガコなのだった。

{ この記事をシェアする }

うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。

イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。

バックナンバー

益田ミリ イラストレーター

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に、漫画『すーちゃん』『僕の姉ちゃん』『沢村さん家のこんな毎日』『週末、森で』『きみの隣りで』『今日の人生』『泣き虫チエ子さん』『こはる日記』『お茶の時間』『マリコ、うまくいくよ』などがある。また、エッセイに『女という生きもの』『美しいものを見に行くツアーひとり参加』『しあわせしりとり』『永遠のおでかけ』『かわいい見聞録』や、小説に『一度だけ』『五年前の忘れ物』など、ジャンルを超えて活躍する。

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP