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アルテイシアの熟女入門

2022.05.01 更新 ツイート

ジェンダー知らなきゃヤバい時代がやってきた③ アルテイシア

モブおじさんとの対話が好評につき、続きを書きます。

今回もそれぞれ好きな声優さんの声に変換してくださいね。私は無論、CV子安武人にします。

アル:前回話したように、差別はたいてい悪意のない人がするんですよ。

「盛り上げよう」「笑わせよう」と思って、うっかりやらかす場合が多いんです。

モブ:うっかりやらかさないためには、どうしたらいいんだろう?

 

アル:まずは差別について学ぶことです。

宝塚市が公開している『差別的な言葉や表現について考えてみましょう』という資料を見てください。

モブ:この中のいくつかは、僕もうっかり言ってたよ……ヤバいな。

アル:たとえば、ホモ、オカマ、オネエ、レズ、オナベ、ニューハーフ……こうした言葉はいまだにテレビで聞くことがありますよね。

「俺の声ってオカマっぽいよね笑」と冗談ぽく言ったりだとか。

モブ:僕も自虐ネタっぽく言っちゃうことがある……。

アル:大切なのは「このネタに笑えない人は誰か?」を考えることです。

性的マイノリティの多くは「あいつオカマっぽいよな」「ホモなんじゃないの?」とか言われて、傷ついてきたわけです。

これは「ソジハラ」というハラスメントになります。

SOGIとは性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)のことです。ソジハラとは、性的指向や性自認に関する差別的言動、暴力、いじめなどを指します。

モブ:こちらは自虐ネタのつもりでも、「オカマ」という言葉を聞くだけで傷つく人がいるよね……。

アル:エイプリルフールの「同性婚ネタ」もそうですよね。

有名人が同性同士で「結婚しました」とSNSに写真を投稿するやつです。

それを見て、同性のパートナーと結婚したくてもできない当事者はどう思うか?

マジョリティにとっては「エイプリルフール限定のネタ」だけど、同性婚できない当事者は今までずっと苦しんでいたし、今後も苦しみは続くんですよ。

それに、そんな投稿を見たら「自分はネタとして消費される存在なんだな」と思いますよね。

現実にそうした差別や偏見があるから、当事者はカムアウトもしづらいわけです。

モブ:やってる本人たちに悪気はないんだろうけど……。

アル:そう、本人たちは「ファンを喜ばせよう」と思ってやってるんです。「悪意はなかった」「差別する意図はなかった」というのは嘘じゃないんですよ。

でもそっちに踏むつもりがなくても、踏まれた側は痛いんです。

モブ:その痛みに気づかずにいられることが「特権」なんだね。

アル:おお~モブさんが進化している!

モブ:ンッン~~~~~♪実に! スガスガしい気分だッ!

アル:落ち着け。

ただね、個人的意見としては、この手の「やらかし」を責めすぎるのはどうなの? と思うんですよ。

差別意識丸出しの発言とかは、バチボコに批判されて当然です。

でも「無知ゆえの過ち」は本人だけの責任なのか? と思うんですよ。

日本の学校はまともなジェンダー教育や人権教育をしないから、差別について学ぶ機会がなかった。それって社会や政治の責任ですよね。

あとは周りの大人の責任もありますよね。芸能事務所はタレントを守るためにも、しっかり研修をしてほしいです。

つかマジでやって! マジで頼むからマジで!!

モブ:落ち着け。

アル:だって自分の推しが炎上したらショック死しちゃう(泣)

誰だって間違うことはあるし、間違った後にどうするか? が大切ですよね。

たとえば、BTSは全ての新曲の歌詞をジェンダー研究者にチェックしてもらってるそうです。

それは、彼らが過去の失敗から学んだから。BTSのメンバーも過去に女性差別的な歌詞や発言を批判されて、謝罪して改善すると約束したそうですよ。

大切なのは、批判を真摯に受け止めること、アップデートのために努力することですよね。

そういう姿勢はむしろ称賛されるし、だからこそBTSは世界的に愛される存在になったんでしょう。

あと、真摯に批判しづつけたファンも偉いと思います。

モブ:たとえ推しでもダメなことはダメと批判することで、結果的に推しを守ることになるんだよね。

アル:私も最近、ジェンダーの講演依頼をよくもらうんですよ。

「ジェンダー知らなきゃヤバい時代がやってきた」と危機感を抱く企業や組織が増えてるんです。

吉野家の件を見ても「ああいう発言をする人がいることは、とんでもないリスク要因だ」とわかりますよね?

モブ:まさに「燃えるべきものが燃える時代になった」わけだよね。

アル:私個人は「炎上回避」が目的でもいいと思ってます。

それをきっかけにジェンダーを学んで、「性差別や性暴力を許さない」という人が一人でも増えてほしいから。こんなんなんぼあってもいいですからね。

モブ:僕みたいに無関心だった人が関心を持つことで、社会は変わるんだろうな。

アル:おお~モブさんが進化している!

モブ:クルクルクルクル。

アル:ゲロゲロゲロゲロ……カエルになってる場合じゃねえわ。

繰り返しますが、「このネタに笑えない人は誰か?」を考えることが大切です。

たとえば、テレビでいまだに痴漢ネタ等を見かけます。また、最近はかまいたちの山内氏の発言に批判が殺到しました。

現実に多くの女性が性被害に遭ってるんですよ。

それで女性が警戒すると「自意識過剰w」とネタにされ、いざ被害にあうと「なぜ自衛しなかった」と責められるんです。

警戒されて腹が立つ男性もいるでしょう。でも女性にとっては命を守るための真剣な行動なのだから、茶化してネタにするのはやめてほしい。

それを見てフラッシュバックする被害者もいるでしょう。そういうことを想像してほしいんです。

モブ:特に有名人の発言は影響力があるから。

アル:そう、下ネタがNGなんじゃなく、「性暴力を下ネタとして扱うな」と批判してるんです。

現実に性被害にあって外出できなくなる人、通学や通勤ができなくなる人、鬱になる人、命を絶ってしまう人もいるんです。被害にあった後も被害者の苦しみは続くんですよ。

モブ:そういう現実を知らないから、ネタにしてしまうんだろうな。

アル:児童虐待や動物虐待はネタにしないのに、性暴力をネタにしてしまうのはなぜか?

それは性暴力をネタにする文化、軽視する文化がずっと続いているから。いい加減、私たちの世代でなくしましょうよ。

私は二丁目劇場に通うお笑い大好き少女でした。令和の芸人さんにはアップデートした笑いを見せてほしいです。

モブ:正直、耳が痛いよ……。僕も女性に警戒されると「俺がそんなヤバい奴に見えるか?」とつい思ってしまうから。

アル:誰がヤバい奴かなんて見分けがつかないから、こちらは全方位に警戒するしかないんです。

それはむしろ男性側に「性犯罪者に対する間違ったステレオタイプ」があるからでしょう、キモい男とかモテない男とか。

でも現実の痴漢の多くは「ごく普通の既婚サラリーマン」であるように、女性の方が「ごく普通に見える人が性犯罪をする」ことを体験的に知ってるんですよ。

モブ:警戒するな、でも自衛はしろ、なんて無茶な話だよね……。

アル:そんなトンチ、一休さんでも解けませんよね?

女友達は出張先のホテルで男性上司に「部屋で仕事の打ち合わせをしよう」と言われて「警戒したら失礼かも、自意識過剰と思われるかも」と部屋に行って、性被害にあいました。

多くの女性はこのように考えて、自衛するのをためらうことも知ってほしいです。

念のため言っときますが、「部屋で飲もう」と言われて「いいですね、飲みましょう!」と部屋に行ったとしても、同意したのは「部屋で飲むこと」だけです。

モブ:それで性被害にあうと「なぜ部屋に行った?」と女性が責められるんだよね。

アル:「なぜ同意をとらなかった?」と加害者を責めるべきなのに、被害者が責められるんです。

それを「二次加害」と言います。二次加害が怖くて被害を相談できず、支援につながれない被害者もすごく多いんですよ。

モブ:それで結局、加害者が野放しになるのか。

アル:テレビで芸能界の性暴力問題を取り上げた時、男性芸人が性被害にあった女優さんについて「家行くかなぁ?」と言ったそうです。

その彼に「明石家さんまに家に来いと言われて断れるか?」と聞きたいです。

それでもし大御所芸人が後輩芸人を殴ったとして「家に行った方が悪い」と責めるか? と聞きたいです。

この手の発言をする人は「自分には性被害にあった女性を責めたい心理がある」と気づくべきです。

何より、こんな二次加害を垂れ流すテレビ局に問題がありますよね。今すぐ性暴力の研修を徹底してほしいです。

モブ:これだけしょっちゅう炎上してるのに、なぜ誰も止めなかったんだろう?

アル:偉い人に忖度して意見を言えない環境もあるでしょうね。だから第三者によるチェックが必要なんですよ。

私でよければ「こんなもん全裸でキャンプファイヤーするようなもんやぞ」と教えてあげますよ、ギャラは50円でいいです。

モブ:50円だったら頼みやすいね。

正直、僕も性暴力について無知だったよ。そんなに多くの女性が被害に遭ってるなんて知らなかった。

アル:性犯罪は暗数がすごく多いんですよ。

痴漢被害を警察に届けたのは1割で、10倍の暗数があると言われてます。レイプを届けたのは5%以下で、20倍以上の暗数があると言われてます。

しかも被害届を受理されないことや、加害者が起訴されないことも多いんですよ。

ちなみに性犯罪の加害者の95%以上が男性で、被害者の90%以上が女性です。男性の被害者は未成年の子どもが多いです。

モブ:やっぱり男性は女性に比べて性被害に遭いづらいから、他人事になっちゃうのかな……。

告白すると、僕も痴漢の話とか聞くと「女性側にも隙があったんじゃ」と思ってたし。

アル:電車でスリに遭った人を「隙があった」「そんな高級な服を着てるから」と責めないし、加害者が100%悪いとわかりますよね?

それが痴漢になると「隙があった」「そんな薄着をしてるから」と被害者が責められる、そこには認知の歪みがあるんですよ。

モブ:僕も認知が歪んでたんだろうな。それに「なんで警戒されなきゃいけないんだ」と思ってたけど、警戒せずに暮らせることが特権なんだね。

まずはそれを認めることが大事なんだと気づいたよ。

アル:それを認めるのは大変なことなんです、すごく勇気がいることなんですよ。

モブ:人間讃歌は勇気の讃歌ッ! パパウパウパウ!!

アル:別キャラになっとるがな。

認知の歪みを直すには「学び落とし」が必要なんです。なので一緒に学びながら「性暴力を許さない」と法螺貝を吹きましょう。

モブ:この俺のためにファンファーレでも吹いてるのが似合っているぞッ!

アル:法螺貝や言うてるやろ。

批判に真摯に耳を傾けるのも、すごく大変なことなんです。でもそれをしないと同じような失敗を繰り返すし、永遠に変われないんですよ。

モブ:BTSの話みたいに、ファンが批判してくれたおかげでアップデートできたりするし。

アル:そうそう、それに批判する側も大変なんですよ。特に日本は批判する側が叩かれるじゃないですか。

「表現の自由ガー」と言うてくる人もいるけど、表現の自由は批判されない権利じゃない。それに批判するのも表現の自由なんです。これ言うの何回目? って感じだけど。

モブ:ほんと僕もアップデートしなきゃヤバいな……そのためのコツってある?

アル:たとえば、何かに批判の声が上がった時に「自分は気にならないけど」と言う人がいますよね?

「自分は気にならないけど」で思考停止するんじゃなく「気にならない自分はヤバいんじゃ?」と考えるといいです。

それで「なぜ批判の声が上がっているのか?」を調べるといいです。

それの何がどう問題なのか解説してる記事とか読むと「なるほど、こういう部分が差別的なのか」と気づくきっかけになるから。

モブ:そんなふうに学ぶことで、自分もうっかり誰かを傷つけずにすむよね。

アル:そうそう、これまで学ぶ機会がなかったなら、これから学べばいいんです。みんなアップデートの途中なんだから。

では次回はもっと気づきにくい、「えっこれがNGなの?」みたいな事例を取り上げます。

ここまでは超初心者向けでしたが、ちょっとだけレベルアップしますよ。モブさん、準備はいいですか?

モブ:行こう。俺達は、ただ進むだけだよな……エレン。

アル:誰がエレンや。あとやっぱジークが言うと縁起が悪いな。ではまた~♪

*   *   *

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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