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その下ごしらえ、ホントに必要?

2022.02.17 公開 ツイート

鶏肉を焼くなら焦げ目を付けるのがおすすめ。鶏のにおいが苦手な人でも気にならなくなるの。 野田真外/松本仲子

コロナ禍を経て、自宅で料理をする人が男女共に増えています。でも、いざ始めてみると色々と素朴な疑問が出るものですよね。そんな料理初心者の方をはじめ「なんとなく日々料理をこなしているけど、自己流でやっていてイマイチ美味しくならない」という方にお勧めなのが『その下ごしらえ、ホントに必要?』です。必要だと思っていたけれどやらなくてよかったことや、これは外さないで! ということが分かる本書から少しずつ試し読みを掲載致します。

(写真:iStock.com/Koichi Yoshii)

野田 お肉を美味しく焼く秘訣はなんでしょうか?

松本 お肉を焼くといってもいろいろありますが、基本は「中のうま味を逃さない」ということなんです。ステーキだったら、表面に適当に焦げ色を付けておいて、中はどれくらい火を通すかですよね。レアがいいのかミディアムがいいのか。

野田 初心者だと、冷蔵庫から出してすぐに焼いちゃいますよね。僕も以前、冷たいままの肉を焼いて、中まで火が通らなくて困ったことがあります。

松本 冷蔵庫から出したばかりのお肉を中まで温めようと思ったら、相当焼かないといけない。そうすると固くなっちゃう。焼きすぎないようにと思っても、中が冷たいレアになってしまいます。

野田 フライパンの温度も重要なんでしょうか。よくフライパンから煙が出るくらい熱して、と書かれていますよね。

松本 いまでも煙が出るほど油を熱するのかしら。確かに私が高校生の頃の本には「紫色の煙が出るまで」と書いてあったんですよ。でもその頃は精製度の低い油も多かったんです。いまの油は品質がいいですから、その煙というのはフライパンに引いた油が分解して小さくなり、煙になって飛んでいったものなんですね。でもそれだと不必要なくらい熱したことになります。

それから、古い油は煙が出やすいんだけれど、新しい油はそこまでじゃないから、フライパン全体に馴染めばっていうくらいでいいでしょうね。

野田 我が家はお肉といえば鶏肉を焼くことが多いんですが、コツはありますか?

松本 鶏肉は厚いところと薄いところがあるのが少し難しいかしら。厚さの差があるんでしたら厚いところを切って薄いところに当てて平均化するやり方もあります。コツとしては、鶏なら皮付きのまま焼くことをおすすめします。

野田 その場合、よく「皮目から焼く」と書いてあるんですが、それにはどういう意味があるんでしょうか。

松本「焼いている時に脂や肉汁が下に落ちてくるので、皮がそれを受け止めるんです」という意味です。焼いて肉が締まると、うま味を含んだ肉汁や脂が追い出されて下に落ちますから、それを皮で受け止めます、ということですね。それから皮が嫌いな人は皮をはいでから焼いたりしますけど、それならむしろ皮付きで焼いてから食べる時にはがす方がいいのかなあと思いますね。においが苦手な方は、皮とその下の脂を取るといいですよ。

野田 僕は鶏肉大好きなんで、においが嫌というのは考えたことなかったです。

松本 鶏肉が嫌いな人はあのにおいが嫌いって言いますよね。学生にもいましたが、必ず焦げ色を付けて焼きなさいって言ってきました。皮目から焼いて焦げ色を付けて、身の方も焦げ色が付くまで焼いて。焦げは食材のにおいをカバーするんです鶏肉に焦げ色を付けるためには「動くようになるまで動かさない」のがコツです。すぐに動かそうとしてもフライパンにくっつきますよね。あれはもう少し我慢してしばらくおいておくと、ひとりでにはがれてきます。そうしないと焦げ色は付かないですよ。

野田 焦がした方が鍋にくっつきそうな気がするんですが。

松本 強火より少し火を弱くします。焦げ色が付いて、身がちょっと固くなってくると自然にはがれてきますね。そしたらひっくり返して反対側も焦がして。

野田 大体何分くらい焼けばいいでしょうか?

松本 はじめの火が強すぎると黒焦げになるので、中火で穏やかな焦げ色が付くように焼きます。弱火だと水気が出てきて焦げ色が付かないですね。

中火で全体にじわーっと焦げ色を付ける。7~8分するとお肉の高さの1/3くらいまで白くなってきますね。お箸で焼き色の具合を確かめたらひっくり返して、同様に焼きます。両面焼いたところで、お酒を入れたりワインを入れたりすると、わーっとにおいが飛んでいきます。お酒は最初から入れるんじゃなくて、仕上げの時にね。そうすると鶏は美味しくソテーできると思うんですよ。

野田 お肉を焼く場合は、最初に塩こしょうしますか?

松本 私はどちらかというと焼き上がりに塩こしょうすることが多いですね。ばっとにおいを飛ばして最後に。減塩しても、美味しく食べられるように工夫した味付けです。

前にも話しましたが、枝豆をゆでる時も塩水でゆでないんです。ゆで上げてからお塩を振ります。そうすると、口に持っていった時にその塩が舌に当たって塩味を感じるでしょ。結局、舌に塩が直接当たるかどうかなんですよね。重い腎臓病の人たちに出す料理には、塩を極力使わないんですけど、料理の中に入れてしまうと味を感じにくくなるので、少しのお塩を別に出してあげるんだそうです。それをなめて、塩味を満足させるという話を聞いたことがあります。料理に使うと分散してしまうので満足感がないんですって。

野田 肉を焼く時の味付けは最後に、ということですね。

関連書籍

〈教えた人〉松本仲子/〈教わった人〉野田真外『その下ごしらえ、ホントに必要? 段取り少なく美味しくできる、家庭料理の新常識レシピ』

家庭で炊事担当になった男性TVディレクターが女子栄養大学名誉教授に教わった、「本当はやらなくていいこと」を省いて美味しい料理を作るコツ

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その下ごしらえ、ホントに必要?

家庭で炊事担当になった男性TVディレクターが女子栄養大学名誉教授に教わった、「本当はやらなくていいこと」を省いて美味しい料理を作るコツ。

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野田真外 映像ディレクター

1967年生まれ。福岡県北九州市出身。CM制作会社、フリーランスを経て、2003年に有限会社グラナーテ設立。TV番組など映像の演出をメインにグラビアDVDから温泉旅番組、オタク番組まで幅広く活動。主な映像作品に『東京静脈』(03)『行くぞ! 30日間世界一周』(08)等。押井守原理主義者で1997年には研究本『前略、押井守様。』(フットワーク出版)を上梓。

松本仲子

1936年生まれ。女子栄養大学名誉教授。聖徳大学大学院兼任講師。管理栄養士。医学博士。専門分野は調理学、官能評価法、食文化論。「調理法の簡便化が食味に及ぼす影響」等の研究多数。著書に『楽しい食品成分のふしぎ 調理科学のなぜ?』(朝日新聞出版)、『調理と食品の官能評価』(建帛社)、『日本食と出汁―ご馳走の文化史―』など多数。

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