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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

2022.01.08 更新 ツイート

パンデミック中に「留学生を受け入れた韓国」と「鎖国した日本」の違い 鈴木綾

「本気で日本を諦めて、韓国に行こうと思っている。コロナ前は日本に決める可能性はあったけど、今はもうだめそう。世界の専門職員や企業がこれから日本じゃなくて別の国を選ぶに違いない」とウルグアイ居住の学者が今週ツイッターで悔しげにつぶやいた

日本で勉強したり働いたりする夢を諦めている外国人は彼女だけではない。この2年間、日本政府は外国人の入国をほぼ全て拒否した。まるで鎖国時代に戻ったようだ。コロナの脅威が終息する様子を見せない中、この政策は日本の将来に大きなダメージを残す可能性が非常に高い。

 

みなさんもテレビやネットで読んでいると思う。ビザがもらえず、日本への留学に諦めた人の話。何年も日本に住んでいる子供に会えない人たち。苦しんでいるのは外国人だけではない。私の日本人の友達は日系アメリカ人と結婚して3年前に日本国籍を放棄した。根っこから日本人の彼女も日本に帰れないし、親戚にも会えない。

私は、日本に最後に行ってからもうすぐ2年が経つ。最後のとき、暖かいマフラーを巻いて伊豆半島に友だちと早咲き桜を見に行った。肌寒い初春の微風に揺れていた花はとても弱く見えた。このひとときも桜と同じように、いつまにか散っていくという気がした。自分の勘がどれほど当たっていたか、そのときは知るよしもなかった。

日本語を忘れたり、日本人の友達との連絡がどうしても減ったりしてきた。最近は東京のことを思い出すと寂しくなる。大好きな人たちに次いつ会えるか分からないって本当に悲しい(担当の竹村編集者がこのコラムを2年間、私と顔を合わさずに編集しているのもなかなかすごいと思う)。

とても残念に思うのは、圧倒的多数の日本人がこの鎖国政策に賛成していることだ。日本経済新聞・テレビ東京が12月に行った世論調査によると、88%の回答者は「外国人の新規入国を全面禁止するなど強力な防疫対策」は「妥当だ」と支持した。長年に日本に住んで、日本を愛している人間として、とても遺憾な結果だ。

日本が外界から遮断されたこの2年の間に隣の韓国のソフトパワーが増している。韓国のドラマ「イカゲーム」がロックダウン中にNetflix史上最大のヒット作になった。2020年に韓国のグループBTSは韓国出身アーティストとして初めてアメリカのビルボードチャートで1位を獲得した。K-POPの世界的人気は別に新しい傾向というわけでもないが、韓国は「韓流ファンたち」をパンデミック中でもずっと大事にしてきたし、外国人留学生たちも受け入れて続けてきた

少子高齢化する日本の将来はいろいろな意味で外国人にかかっている。日本政府は訪日客を2030年に6000万人に増やす目標を変えていない。外国人観光客の需要に頼っていた旅館、レストラン、観光スポットは何年もの観光客ゼロ政策に耐えられるのだろうか。また、その6000万人目標を達成するためには国内の観光インフラをもっともっと強化する必要がある。それはホテルや交通機関の建設・整備だけじゃなくて、大量の外国人観光客に対応できる人材を確保し、育成するという意味でもある。国境が閉まっていたのはそれは無理。

短期滞在の観光客はともかく、留学生やビジネスマン、研究者のような日本で長期滞在しようとしている人たちの入国を拒否している理由が全く理解できない。科学技術大国としての地位を守るためには優秀な外国人研究者をどんどん受け入れる必要がある。パンデミックが続いていても世界の優秀人材は動くから、日本が受け入れないと他の国の勝ちになる。留学生の受け入れは特に大事。学生は母国に戻ったあと、日本文化を愛する日本の強い味方であり続けるのだから。

経済が長年低迷している日本では、日本文化の世界的人気を背景に生まれた「ソフト・パワー」は重要な経済的武器だ。でも、日本の良さを知ってもらうために人を入れないと、そのパワーは揺らぐ。

もちろん、日本国民の健康を守るのは政府の責任だということは理解できる。人の命は経済活動よりはるかに大事だ。だったら香港みたいに入国後の隔離を徹底すればいい。韓国も留学生に対してかなり厳しい制限を入れていて、全ての留学生は入国後14日間隔離しなければいけないし、入国直前と隔離中に何回もコロナ検査を受けなればいけない。

でも本当を言えば、外国人入国禁止政策はコロナを止めない。国を完璧に封鎖しない限り、変異株は必ず入ってくる。

日本と同じ島国で、私が今住んでいるイギリス政府の見解も同様だ。 「国境対策でオミクロン株の侵入を阻止できると考えるのは非現実的」であり「コロナが消えてなくなることはなく、インフルエンザのような季節性ウイルスと同じような防疫対策を取りつづけなければいけない。」とイングランド主任医務官のクリス・ウィッティは言っている。コロナは「これからもずっと問題であり続ける。年によって、その問題が大きかったり小さかったりするだけだ」と彼は言っている

私たちは「平常」が戻るのをずっと待っていたが、コロナの蔓延が平常なのだとしたら、私たちはどうすればいい? どこかでコロナと共存する道を見つけなければいけないだろう。アフターコロナはウイズコロナで、ゼロコロナではないのだ。

去年前半、2021年のお正月はなんとか日本で日本人の友達と過ごせるなと期待していたけど、結局ダメだった。今年はもうお正月も過ぎてしまったから、せめて桜は見たい。2022年の夢は日本で桜を見ること。

Photo by Harold Wainwright on Unsplash

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月が綺麗ですね 綾の倫敦日記

イギリスに住む30代女性が向き合う社会の矛盾と現実。そして幸福について。

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鈴木綾

1988年生まれ。6年間東京で外資企業に勤務し、MBAを取得。現在はロンドンの投資会社に勤務。2017〜2018年までハフポスト・ジャパンに「これでいいの20代」を連載。日常生活の中で感じている幸せ、悩みや違和感について日々エッセイを執筆。日本語で書いているけど、日本人ではない。

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