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パパ活女子

2021.12.07 公開 ツイート

パパ活のパパに多かった飲食店経営者はコロナ禍で撤退 中村淳彦

女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探す「パパ活」。今、コロナ禍で困窮した女性たちが一気になだれ込んできているといいます。パパ活は、セーフティネットからこぼれ落ちた女性たちの必死の自助の場だという『パパ活女子』(中村淳彦著)より、第一章「女子たちが没頭する『パパ活』とはなにか?」から、ユリアさんの事例を抜粋してお届けします。

(写真:iStock.com/Hakase_)

景気が悪いとパパ活女子は増え、逆にパパは減る

午後3時以降にお会いできる方が嬉しいです。
エスニック料理とカラオケが好き♡
グラマー体型なので細身が好きな方はごめんなさい。
楽しくお話できる年上が好きです。

これはユリアさんのプロフィールだ。オンラインのパパ活は、パパ活に特化したマッチングサイト(パパ活サイト)が利用される。男性会員は女性会員の、女性会員は男性会員のプロフィールを閲覧して気になる相手にメッセージを送る。相手の情報は写真とプロフィールだけ。男性たちはまずパパ活女子が書いた数行の文面から、自分のニーズに合う女性かを探る。

それにはパパ活女子の立場に立った読解が必要になる。

「グラマー体型なので細身が好きな方はごめんなさい」と体型に言及していることから、食事だけの関係ではなく、相手によっては肉体関係OKの可能性がある。「年上の方が好み」とわざわざアピールするところに、活動に慣れたあざとさ、ビジネス的なニュアンスを感じる。

男女のどちらかが気にいった相手にメッセージを送り、やりとりしながら、実際に会う〝顔合わせ〟に進むか、進まないかを決める。

パパ活が流行した背景に、誰でも安価で簡単に活動ができるオンラインツールの発達がある。素人女性にとって、業者が介入する交際クラブはハードルが高い。そのため婚活、恋活と同じく、おもにインターネットサイト、アプリを使ってパパ探しが行われている。どのサイトも登録のときに写真つきの身分証明書の提示が必要で、男性会員は利用料を支払い、女性会員は登録と審査だけで異性の情報を閲覧できるシステムだ。

パパ活は性的被害やストーカーなどのリスクもあり、男性も女性も多くが匿名で活動している。身バレや相手の危険性も気になるので、文字の自己紹介のみが普通である。

ユリアさんは華やかな印象を与える写真を掲載していた。「その日はダブルで茶飯か顔合わせをいれるので、新宿ならいいですよ」とメッセージが返ってきた。

「ダブル」とは一日2人以上の男性と会うこと、「茶飯」とは男性と喫茶店で会う、もしくは一緒に食事することをいう。

そして「顔合わせ」は、オンラインや交際クラブで繫がった男女が、最初に会うことだ。

ユリアさんは、時間ぴったりに現れた。写真では華やかで若々しかったが、実際は年齢通り、メイクは濃く、やや太っていた。大きな胸を強調した服装で、印象は水商売っぽい。おそらく男性には写真詐欺とガッカリされるほど、写真と実物に差があった。

「元々はモデルと地下アイドルやっていたの。そこから、水商売とかイベントコンパニオンとかいろいろやって、なんとか生きている感じかな」

元アイドル、元モデルと自称する女性がパパ活女子に一定数いる。

パパ活は「パトロン探し」という一面もあり、実際に人気アイドルやタレントのパパ活女子だった過去がよく暴露されている。芸能の仕事は売れなければ、自分の生活を支えることもできない。パパ活は男性が写真やプロフィールを見て会いたいと思えばオファーがあり、魅力が認められれば援助してもらえる。時間が自由で自分の魅力がお金になるパパ活は、ブレイク前の芸能人には取り組みやすい仕事なのだろう。

しかし、未来のある芸能人の卵ならばまだしも、行き場所がなく、生活のためにパパ活をする元・売れない芸能人は厳しい。アイドルやモデルの経験があってもルックスが優れているとは限らない。人によるが、おおむね自己顕示欲が強く、自己評価も高い傾向がある。現実以上に自分を高く売りたい、直接会うだけでも価値があるはずという意識が少なからずあり、素人女性との恋愛を求める男性のニーズとズレていることがほとんどだ。

「正直、パパ活はうまくいってないかな」

浮かない表情、半分投げやりになっていた。32歳になり、元アイドル、元モデルという経歴がもう評価されなくなっている。19歳のときに地下アイドルユニットが解散、それ以降はキャバ嬢、イベントコンパニオン、イベントでのスタイリスト、バーテンダーなどを経験しながら、現在に至る。年をとり、体型が変わっても、若い、かわいいと認められていたアイドルやキャバ嬢時代の意識から抜けだせていないように見えた。

「いままでの収入のメインはイベントコンパニオン。それがコロナで全部なくなって、本当に大打撃。最初の緊急事態宣言でほぼ全部の仕事がなくなった。ゼロ。それとコロナの前は定期っぽいパパもいて、その人は飲食店経営者だったけど、コロナで自然消滅しちゃった。仕事もパパもなくなってパパ活再開したのが、いまかな」

「定期」とは特定のパパやパパ活女子がいる状態をいう。お互いが納得して、定期的に会う関係である。パパ活界隈でもっとも頻出する言葉の一つである。

コロナによって“定期っぽかった”飲食店経営者と会えなくなってから、1年近く活動している。しかし、まだ新しい定期は見つかっていない。パパ活も、恋活、婚活と同じく、特定のパートナーを見つけるのは簡単ではない。

元パパだった飲食店経営者は、コロナによって女性に援助できる状態ではなくなったようだ。パパを希望する男性の収入は高い傾向にあり、属性としては中小零細企業の経営者が多い。事業がうまくいっている中小企業経営者は、従業員に売り上げを分配するのは嫌でも、女性にはどんどんお金を使ったりする。

パパ活は景気に大きく影響される。景気が悪いとパパ活女子は増え、逆にパパは減る。コロナによる景気悪化は女性の新規参入が増えただけでなく、男性にも変化があった。緊急事態宣言で繁華街から人がいなくなった2020年4月以降、パパ活市場から飲食店経営者が一斉に引いている。

パパ活は経済的に順調な男性たちが女性にお金を使う現象でもある。

関連書籍

中村淳彦『パパ活女子』

「パパ活」とは、女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探すこと。主な出会いの場は、会員男性へ女性を紹介する交際クラブか、男女双方が直接連絡をとりあうオンラインアプリ。いずれもマッチングした男女は、まず金額、会う頻度などの条件を決め、関係を築いていく。利用者は、お金が目的の若い女性と、疑似恋愛を求める社会的地位の高い中年男性だ。ここにコロナ禍で困窮した女性たちが一気になだれ込んできた。パパ活は、セーフティネットからこぼれ落ちた女性たちの必死の自助の場なのだ。拡大する格差に劣化する性愛、日本のいびつな現実を異能のルポライターが活写する。

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パパ活女子

11月25日発売の幻冬舎新書『パパ活女子」について

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中村淳彦

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

 

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