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アルテイシアの熟女入門

2021.12.01 更新 ツイート

「性が乱れる」に歯茎がめっさ痛いやないか アルテイシア

JJ(熟女)は「顔がきれいですね」よりも「歯周ポケットがきれいですね」と言われた方が、テンションが上がるお年頃。

私もフロスと歯間ブラシのW使いで、歯周病予防に努めている。

歯と歯茎の健康を保って、RJ(老女)になっても分厚いステーキを食べたいから。

ところがどっこいしょういち、ある朝目覚めたら、歯茎がめっさ痛いやないか。

めっさ痛いやないか、歯茎が(倒置法)

 

オギャーと歯医者さんに駆け込んだら「歯を強く食いしばったんでしょう」と言われたが、歯を食いしばるほど何かをがんばった覚えはない。

思い当たることと言えば、こちらの東京新聞の記事である。

前日にこれを読んで「おのれ……ギリギリ」と歯を食いしばったおかげで、分厚いステーキを食えなくなった。
この恨み晴らさでおくべきか……とギリギリするとまた歯茎が痛くなる。

記事によると、8年ぶりに子宮頸がんワクチンの積極勧奨が再開されたが『自民党内の保守的なグループが、ワクチン接種が「性の乱れ」につながると長く抵抗していた』という。

この言葉に、髪型をいじられた仗助ぐらい怒髪天をついた。

ワクチンを推奨すると、子宮頸がんを恐れなくなった女たちがセックスに奔放になるって理屈か?

頭わいとんかコラ??

「ワクチンも打ったし、乱交パーティーとしゃれこもうかしら」みたいな女が激増するとお考えなら、そっちの頭がどうかしている。

日本では年間約3500人の女性が子宮頸がんで亡くなっている。

また年間1万人以上が子宮頸がんと診断されて、子宮を切除する女性も大勢いる。

一方、ワクチン接種率の高いオーストラリアでは、子宮頸がんは根絶に近づいているという。

女性や少女の命に関わることを、こんなふざけた理屈で反対するなんてマジ万死。

ピルの承認は何十年もかかったのに、バイアグラは一瞬で承認して「バイアグラが広まると男たちの性が乱れる」なんて声は一切出なかった。

女の体のことを男が決めるこの国では、女の命や体がどこまでも軽視される。

もしこれが子宮じゃなく陰茎を切除する手術だったら、ワクチンも一瞬で承認しただろう。

そもそもこれだけ男性向けの風俗が溢れている国で「性が乱れる」ってどの口が言う?

男の性欲はケアしてほしいけど、女が主体的にセックスを楽しむことは許せない、女がセックスする時は命をリスクにさらす覚悟でしろと?

女の性の乱れは心配するけど、性暴力や性搾取についてはガバガバで性交同意年齢も引き上げない、男がセックスする権利だけは守れって?

冗談も休み休み言えオブザデッドやぞ?

それで「女性差別なんてもうない」「むしろ男のほうが生きづらい」だと?

冗談はよし子さんやぞアホボケカス、アホボケカス死ね!!!

と、ギリギリ歯を食いしばったわけである。

おらこんな村イヤだけど、諦める気はさらさらない』で次のように書いた。

『もし男に対する「妊娠させた罪」があれば、DNA鑑定で父親を特定して責任を負わせる法律があれば、男も本気で避妊するし、緊急避妊薬も薬局で買えるし、経口中絶薬も承認されているんじゃないか』

もし政治家の半分が女性だったら「妊娠させた罪」が作られるんじゃないか。

もし政治家の半分が女性だったら、ピルの承認も子宮頸がんワクチンの推奨ももっと早く進んだだろう。

もし政治家の半分が女性だったら、賃金や雇用の格差、セクハラや性暴力、DVや児童虐待、シングルマザーの貧困、生理の貧困、不妊治療、待機児童問題、保育士介護士看護師の賃金アップ、選択的夫婦別姓……といった問題にもっと本気で取り組むだろう。

世界では100カ国以上がクオータ制を導入して女性議員が増えているのに、日本の衆議院では女性が1割以下しかいない。

おまけに女性の政調会長が選択的夫婦別姓に反対したり、「女性はいくらでも嘘をつく」「男女平等は絶対に実現しない妄想」などと発言する女性議員もいる。

やっぱり女性が1割以下ではダメなのだ。

男社会にとって都合のいい女、わきまえた女しか生き残れない、そんな状況を変えるには数を増やすしかない。

数が増えれば「ワクチン接種が性の乱れにつながる」とか抜かすおっさんに「冗談はよし子さんやぞアホボケカス!」と言える。アホボケカスは言わなくても、忖度せずに意見を言える。

半分とは言わない、まずは3割でいい。

とこちらは現実路線で言ってるのに「クオータ制は逆差別」「女性を特別扱いするのはいかがなものか」とか言う男性が多くて白目になる。

しかも「男尊女卑を守るのが俺の使命だ」みたいな右翼おじさんじゃなく「ジェンダー平等に賛成です」という男性がそんな発言をしたりする。

クオータ制とは、今ある差別をなくそう、今が偏っているから正そうというものだ。

男性は徒競走だと思ってるけど、女性の走るトラックには障害物がいっぱいあって、その障害物をどけようという話なのだ。

なんでそんな簡単なことがわからないの? ひょっとしてアホなの? と聞きたくなるが、性差別の話の時だけアホになる男性はむっさ多い。

それはそもそも知識がないからだ。知識を得るために学ばないのは「性差別は自分には関係ない」と他人事だからだろう。

そうやって無関心でいられることが、マジョリティの特権なのだ。

たとえば内閣のメンバーはおばさんとおばあさんばっかりで、国会議員の9割が女性で、企業の管理職の9割が女性。

そんな絵面を想像すれば、今が偏りすぎだと気づくだろう。それが逆だと気づかないのは、感覚が麻痺しているからだ。

オギャーと生まれた瞬間から男尊女卑に浸かっているから、性差別が見えなくなってしまう。

それがアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)なのだ。なんせアンコンシャスなもんだから、自分ではなかなか気づけない。

この世に偏見の全くない人はいない。特にこの日本で生まれ育って、男尊女卑を刷り込まれてない人はいないと思う。

かくいう私も新入社員の時に「〇〇ちゃんは女子だけど、同期で一番優秀なんだよ」とか発言していた。

「男子だけど優秀」とは言わないわけで、私の中にも「女は男より劣っている」という偏見があったのだ。

「あたしったら……うっかりミソジニー発言しちゃうみそっかす」と気づけたのは、たまたまフェミニズムに出会えたからだ。

ブツブツブツ……とフェミニズムの本を読むことで「学び落とし」ができた。

もし20代で田嶋陽子さんや上野千鶴子さんに出会わなければ……ゾ~~恐ろしい子! と白目になる。

人はみんなアップデートの途中なのだ。

だからまずは本を読んで学んでほしい、よかったら拙著もどうぞ、今ならキンドル読み放題で読めますよ。

 

ノルウェーの児童書『ウーマン・イン・バトル』も読んでほしい。

本書には、女性たちによる女性たちのための150年の闘いが描かれている。

自由と権利を求めて戦った女性の1人、マーガレット・サンガーは1879年アメリカに生まれた。

サンガーの母親は18回の妊娠の末、若くして亡くなった。

労働者が暮らす地域で看護師として働いていた彼女は、母親と同じ運命に苦しむ女性がいかに多いかを目の当たりにしていた。

サンガーは逮捕され投獄されながらも、女性たちに避妊の指導を行い、ピルの開発に成功した。

『自分の身体をコントロールできるようにならない限り、女性は自由とは言えない』

マーガレット・サンガー先輩の言葉である。

私の母は59歳の時に拒食症が原因で亡くなった。拒食症になるのは圧倒的に女性が多い。

「女は痩せて美しくなければ」と極端なダイエットをして食事をとれなくなった母も、身体の自己決定権を奪われた女の1人なんじゃないか。

1950年生まれの母と同世代の女性とお話しする機会があった。

彼女は「実は私ね、7回中絶したのよ」とおっしゃっていた。

夫が避妊してくれなかったため、夫に黙って7回中絶手術を受けたのだと。

その話を聞いて胸が潰れるような思いがした。そして「もっと前に日本でピルが承認されていれば」と思った。

いま私たちがピルを使えるのも、進学して就職して選挙に行けるのも、バックラッシュに負けず闘ってくれた先輩たちのおかげだ。

私はそんなフェミニストたちに感謝して、バトンをつないでいきたい。

私たちは「女を特別扱いしてくれ」と言っているんじゃない。「人間扱いしてくれ」と言っているのだ。

女は産む機械じゃない、男の性欲を満たす道具じゃない、男の世話をするロボットじゃないと。

『自由であるべきは心のみにあらず。人間はその指先1本、髪の毛1本にいたるまで、すべて神の下に平等であり自由であるべきなのだ」

オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ先輩の言葉である。

私は10代の頃からこの言葉を脳内バイブルに刻んでいる。

『あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、この女に石を投げなさい』

ヨハネによる福音書第8章のイエスの言葉である。

10代の私は聖書の授業でこの言葉を聞いて「イエス!」と膝パーカッションした。

この世に罪を犯したことのない者などいない。

私自身も無知ゆえに、うっかり誰かを傷つける発言をしてきた。

その反省があるからこそ、「アップデートを怠るべからず」とJJべからず帖に刻んでいる。

この世に間違ったことのない人などいないし、間違ったことのない人しか語っちゃいけないとなると、誰も何も語れなくなる。

私はジェンダーについてみんなと語り合いたい。「性差別や性暴力をなくそう」と声を上げる仲間が増えることを願っている。

余談だが、うっかりミスが増えるのもJJのチャーミングなところだ。

先日もキンドル読み放題の契約書が5冊分届いて、5冊分とも間違って「代表取締役社長 見城徹」のところに捺印してしまった。

私は見城徹ではなくアルテイシアだ。でも面倒くさいのでそのまま甲と乙の両方に捺印して返送した。

このように日々間違っているので、他人の間違いも気にならない。

当連載の担当さんから、ブレイディみかこさん宛のメールが届いた時も「お疲れ様です、ブレイディみかこです(^O^)」と返信した。

担当さんがげっさ恐縮していたので「よくあることさ、JJだもの」と慰めた。

次は阿佐ヶ谷姉妹宛のメールが届くといいな、と楽しみにしている。

*   *   *

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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