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パパ活女子

2021.11.25 更新 ツイート

「パパ活はみんなやっている!」過熱するパパ活ブームの裏側 中村淳彦

女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探す「パパ活」。今、コロナ禍で困窮した女性たちが一気になだれ込んできているといいます。パパ活は、セーフティネットからこぼれ落ちた女性たちの必死の自助の場だという『パパ活女子』(中村淳彦著)より、冒頭の「はじめに」を抜粋してお届けします。

(写真:iStock.com/west)

衰退国家から生まれた「パパ活」現象

緊急事態宣言中の東京新宿、午後4時。たまたま入った老舗喫茶店は、ほぼ満席だった。新宿三丁目エリア、普段は学生やビジネスマンがおもな客層だ。暇つぶしに本を読んでいた。しばらくして、ふと見まわすと、店内は40~50代の中年男性と20代の若い女性のカップルばかりだった。それぞれのカップルたちには笑顔も、醒めた表情もあったが、総じて不自然な違和感を放っている。

違和感は2人の関係性がわからないことが理由だった。彼らは親子ではないし、上司と部下には見えない。夫婦や恋人同士にも見えず、商談でもなさそうだ。しばらくしてから、カップルたちのほとんどがパパ活の“顔合わせ”であることに気づいた。緊急事態宣言下の夕方の老舗喫茶店は、パパ活カップルだらけだったのだ。

パパ活はおもにインターネットのアプリ、または交際クラブを通じて行われる。顔合わせとは、オンラインや交際クラブで繋がった男女が、最初に顔を合わせるアポイントのことだ。初めて出会った男女は1時間程度の顔合わせで、お互いを値踏みし、これから目の前の異性とどう付き合っていくか決める。交際をするかしないか、交際するならば、男性が女性に支払う金額はじめ、どのような条件かを話し合う。

パパ活は、代金をもらって女性がサービスを提供する風俗や水商売、援助交際とは異なる。似て非なる行為である。

パパ活はオンラインや業者を通じて男性と女性が出会い、そこから長期的な関係を目指す自由恋愛であり、どのような関係を構築していくかは2人で決める。ソープランドのような違法行為を誤魔化すための建前の自由恋愛ではなく、関係のなりゆきは双方の意思に委ねられることがパパ活の大きな特徴になる。

これから本書には多くのパパ活女子が登場する。女子大生も、医療従事者も、売れないモデルやタレントも。そして誰もが口を揃えていうのはこうだ。

「パパ活はみんなやってるよ!」

ビジネスマンや学生が利用するこの喫茶店がパパ活カップルだらけなことが象徴しているが、いまは過熱状態ともいえるパパ活ブームの最中だ。

特に都市部の20代女性においては、パパ活はもはや常識で、経済的な問題を解決するための選択の一つとして、同年代の女性間では十分に認められている。たとえば友だちがパパ活をしているなら、否定することなく、受け止めるほうが普通だ。

理由の一つは、女性の貧困が広がる社会のなかで、都心の一部に生息し、キラキラした華やかな生活をする「港区女子」と呼ばれる女性の存在が注目されたことが大きいだろう。港区女子とは六本木、麻布、赤坂などの高級歓楽街で、高収入&ハイスペックな年上男性を求めて遊び、セレブリティな日常をSNSで発信する女性たちのことだ。

日本全体で女性の貧困や雇用の非正規化による低賃金が深刻な問題となる一方、かわいく、オシャレに着飾った拝金主義の20代前半の女性たちがおじさんやハイスペック男性から奢られ、悪意ある言い方をすると、彼らにたかっていた。そんななか、2016年にパパ活という言葉が生まれ、さまざまな人がパパ活という言葉を使うようになり、2017年以降に一般社会に浸透している。

働いても自分の生活を支えられないほどの低い賃金であったり、高額な大学の学費納入に追われる多くの一般的な若い女性たちは、男性に奢られ、華やかな日常を積極的に発信する港区女子たちに、少なからず羨望の意識があったはずだ。パパ活と港区女子的な行動には、上層の年上男性とかかわることによって、お金がもらえる、利益がある、再分配される、という共通項がある。

最近よく耳にするパパ活をすることで、少しでも自分の生活が楽になるんじゃないか、未来が明るくなるんじゃないかと思うのは、決して特別な感覚ではないだろう。

そして、女性の貧困がギリギリの状態のなかで新型コロナウイルスが蔓延した。

未曽有の感染症は女性や若者たちの生活を直撃し、仕事を失って困窮したり、時間を持て余す者が激増した。必然の結果として若い女性たちのパパ活参入に拍車がかかった。それまで経済的に困った女性の受け皿は、繁華街のガールズバー、キャバクラ、性風俗店といった夜職だったが、繁華街も感染症の大打撃を受けている。いくつかの要因が重なったことで、若い女性たちが濁流のようにパパ活になだれ込んだ。

昭和からずっと続く男女格差、そして平成からはじまった世代格差、収入格差によって、どこからも利益を得る側に立てなかった若い女性たちの意識や行動様式は大きく変化している

結婚や出産は贅沢品であり、良妻賢母など夢のまた夢という社会で、高額な学費の納入や奨学金の返済に追われれば、意識が変わらないほうがおかしい。まず大前提として、若い女性たちの経済的に厳しい状況が「パパ活はみんなやっている!」という現状に繋がっている。

パパ活女子だらけのいまの状況は、伝統的に続く男性優位と高齢者優遇の社会のなかで、社会的強者である男性中高年の勝ち組に、弱者である若い女性がたかっている、と見えなくもない。類似した現象として戦後混乱期のパンパン、社会保障が行き渡っていなかった時代の物乞いなどを連想した。これが、格差が広がり続ける衰退国家の一つの姿なのだ。

2016年に生まれた「パパ活」という言葉はまだ新しく、いまは援助交際、児童買春、売春、愛人、港区女子的な行動といったものがすべてパパ活と呼ばれている。パパ活は違法という人もいて、言葉の意味や解釈は統一されていない。

実はパパ活という言葉は、交際クラブの大手事業者がマーケティングのために生みだした造語で、事業者の思惑以上に浸透した背景がある。パパ活とは「パパを探す活動」の略、または「パトロンを探す活動」という説もあり、あらゆる面で割を喰っている若い女性たちの能動的な行動から生まれた現象だ。

本書では、若い女性たちの間で常識となっているパパ活と、パパ活女子たちの行動を通じて、日本になにが起こっているのかを探っていこうと思う。

関連書籍

中村淳彦『パパ活女子』

「パパ活」とは、女性がデートの見返りにお金を援助してくれる男性を探すこと。主な出会いの場は、会員男性へ女性を紹介する交際クラブか、男女双方が直接連絡をとりあうオンラインアプリ。いずれもマッチングした男女は、まず金額、会う頻度などの条件を決め、関係を築いていく。利用者は、お金が目的の若い女性と、疑似恋愛を求める社会的地位の高い中年男性だ。ここにコロナ禍で困窮した女性たちが一気になだれ込んできた。パパ活は、セーフティネットからこぼれ落ちた女性たちの必死の自助の場なのだ。拡大する格差に劣化する性愛、日本のいびつな現実を異能のルポライターが活写する。

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パパ活女子

11月25日発売の幻冬舎新書『パパ活女子」について

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中村淳彦

1972年生まれ。ノンフィクションライター。AV女優や風俗、介護などの現場をフィールドワークとして取材・執筆を続ける。貧困化する日本の現実を可視化するために、さまざまな過酷な現場の話にひたすら耳を傾け続けている。『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)はニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞ノミネートされた。著書に『新型コロナと貧困女子』(宝島新書)、『日本の貧困女子』(SB新書)、『職業としてのAV女優』『ルポ中年童貞』(幻冬舎新書)など多数がある。また『名前のない女たち』シリーズは劇場映画化もされている。

 

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