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美しい暮らし

2021.11.20 更新 ツイート

天神下つれづれ日記#22

テレビを消しましょう 矢吹透

誰かの家に遊びに行って、ずっとテレビが点けられていることがある。

おそらくその家の人は起きている間、ずっとテレビのスイッチを入れているのだと思う。

それが親しい人の家ならば、僕は頼んでテレビを消してもらう。

来客である僕はその家の人と会話をしたいのであって、その人たちと一緒にテレビを見たいわけではない。

 

ちなみに僕も昔はテレビが好きだった。子供の頃はヒマさえあれば、ずっとテレビを見ていた。

そして僕は大学を卒業し、テレビ局に就職する。

テレビの番組を作っていると忙しくて、自分がテレビを見る時間があまりなくなる。

でも商売なので頑張って、仕事上、必要と思われる番組は見るように心がけた。

そうして三十年近くテレビ局で働いて、退職して、今、僕はテレビをまったく見ない。

友達が関わっている番組などを見てくれと頼まれたら見るけれど、それ以外、テレビのスイッチを入れることはほとんどない。

一年に一度、大晦日に「年忘れにっぽんの歌」と「紅白歌合戦」だけは見る習慣だったが、「紅白」がコロナ禍でNHKホールからの中継をやめてからは「紅白」も見るのをやめてしまった。「年忘れにっぽんの歌」だけは見る。

ちなみに我が家にはテレビは四台ある。60インチ、55インチ、32インチ、16インチ(お風呂にも持って入れるやつ)の合わせて四台。

WOWOWにもNetflixにも加入しているし、AppleTVも繋いでいる。全録画ビデオデッキも持っており、地上波全局の番組を三週間録り続けているので、大抵の番組はいつでも見ることが出来る。

テレビ屋だった時代に、必要となった時、いつでもどんな番組でも見られるようにと揃えたフル装備だ。

フル装備してあるけれど、宝(?)の持ち腐れでほとんど見ることはない。

正直に言おう。

私はテレビが嫌いだ。

まず、うるさい。音もうるさいし、デカいテロップがべたべたと表示される画面もうるさい。そして情報もうるさい。要らんこと、知らんでもいい情報をやたらと押しつけられているような気持ちになる。ウザっ、と言って、僕はすぐにテレビのスイッチを切ることになる。

でもさあ、世の中の人たちはほんとにテレビが好きよね。

テレビがひどい、偏っているなどと言う人の多くが、実によくテレビを見ているように思える。

教えてあげましょう。

テレビがひどい、テレビ局が偏向している、テレビマンの倫理感が狂っている、と思ったら、テレビを見なければいいんです。

あなたがテレビを見ることを止めたら、視聴率が下がります。そうするとテレビ局は困ることになるんです。

テレビ局だって必死です。どうやって視聴率をコンマ1パーセントでも上げるか、どうやったら一人でも多くの人が自分たちの作る番組を見てくれるか、毎日朝から晩まで必死に頑張っているわけです。

テレビのスイッチを切ったり、チャンネルを変えて、あなたの意に添わないテレビにはNOを突きつければいいんです。

そうしたら、テレビも少しは変わる可能性があります。

テレビがひどいと思ったら、ツィッターやSNSで「テレビがひどい」と発信するよりも、テレビを消すことの方が効果的です。ただ、見なければいいんです。それが非常にダイレクトなNOの表現となります。

元テレビ屋が言うのですから、これは本当です。

テレビがひどいのは、もちろん、テレビの作り手・送り手もひどいのですが、見ている人たちもひどいのです。

視聴率というのは、選挙と同じようなものです。数字を獲得したら、認められたという意味になります。

問題発言があったり、偏向報道があった番組やテレビ局に対して、BPOに訴えを起こしたり、スポンサーにクレームしたり、謝罪の放送を求めるのもよいでしょうが、それよりもまず見るのを止めましょう。皆が少しずつチャンネルを変えたり、テレビを消したりして行けば、やがてその番組は打ち切りになり、そのテレビ局は経営難に陥ります。

逆に言うと、ひどい番組、ひどい局がのさばっているのは、それを支えているひどい視聴者たちがこの国に確かに多くいるからなのです。

あなたはそうではないかもしれない。でも、数として、あなたやあなたと同じ意見を持っている人たちよりも、ひどい番組、ひどいテレビ局を(意図せずとも)支持している人々の方が確実に多くいるのです。

ひどい番組はひどい民度・民意の反映と捉えて頂くとわかりやすいかと思います。先ほど書いたように、視聴率は選挙結果と一緒なのですから。

さあ、もし今、あなたのご家庭のテレビが点いているとしたら、リモコンを取り上げて、電源スイッチを押してください。

ああ、なんてすっきり。

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関連書籍

矢吹透『美しい暮らし』

味覚の記憶は、いつも大切な人たちと結びつく——。 冬の午後に訪ねてきた後輩のために作る冬のほうれんそうの一品。苦味に春を感じる、ふきのとうのピッツア。少年の心細い気持ちを救った香港のキュウリのサンドイッチ。海の家のようなレストランで出会った白いサングリア。仕事と恋の思い出が詰まったベーカリーの閉店……。 人生の喜びも哀しみもたっぷり味わせてくれる、繊細で胸にしみいる文章とレシピ。

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美しい暮らし

 日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。

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矢吹透

東京生まれ。 慶應義塾大学在学中に第47回小説現代新人賞(講談社主催)を受賞。 大学を卒業後、テレビ局に勤務するが、早期退職制度に応募し、退社。 第二の人生を模索する日々。

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