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政治を語ろう

2021.10.28 公開 ツイート

ちんぷんかんぷんの自分のまま、堂々と投票に行く 和田靜香

真面目に働いても豊かな生活が送れない今の日本。これは自分が悪いのか? 政治が悪いのか? 問題はどこにあるのか? そんな疑問や憤りをまっすぐに政治家にぶつけたライターの和田靜香さん。書籍『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』をまとめたあとに思うのは、誰もが自由に、自分の言葉で政治を語っていいということ。「たどたどしい言葉が、政治の明日を作る」のだから。

 
(写真:iStock.com/littlehenrabi)

「選挙に行く」はたどたどしい言葉のひとつの発露

私は今、今回の衆議院選挙で「一番の激戦区」とか「話題の選挙区」とネットや新聞、TVで騒がれている「香川1区」に来ている。選挙が公示された前日の18日にこちらに入り、選挙が終わるまでいる予定だ。取材というか見学というか体験というか、そんなものをして、そのことを日々書くために来ている。

「じゃあ、選挙や政治の専門のライターさんですか?」

いいえ、違います。私はこれまでは音楽や、主に相撲のことを書いてきたライターだ。炎鵬ステキ~とか、白鵬すごいよねとか(引退が悲しみです)。

でも仕事があんまりうまく行かず、バイトをしながらなんとか食いつないできた。私はもう56歳になる。しかし生活は苦しく。未来は見えず。それで今来ている「香川1区」から立候補している小川淳也さんに、私の生活の苦しさの根本は何ですか? と問い続け、対話し、それを本に書いて出版した。8月末のことだ。それから一気に仕事の主軸が政治になったが、でも、私は今も「ド」のつく政治の素人で、何も専門的なことは分かっちゃない。

分かっちゃないのだが、政治のことを話す機会が増え、本を書いた時点よりさらに政治について考えなければならなくなっている。特に香川1区の高松市に来てからは毎日、政治と選挙のことを考え、書き続けている。

1日1回、小川さんの事務所に通い、街頭宣伝(演説)を見に行き、ご本人や周囲のスタッフ、ボランティアの方々に日々接して、選挙ってこうやって進めていくんだなぁと見聞きしている。小川さんの事務所には大勢の年代もバラバラなボランティアが集い、中には専門的な特技を持った方々もおられてSNSなどで様々な新しい発信をしている。市民みんなでそれぞれが考えて共に作り上げていく選挙という形は、とても民主主義的なものだと思って見ている。小川さんという政治家の姿をよく表している。

しかし、そんな風に「これは民主主義的だな」なんて思う自分に、私は少々戸惑い、ツッコミをいれたくなる。「何をエラソーに言ってるんだ?」って。最初にも書いたように、私は政治の専門家ではない。音楽や相撲が好きなライターだ。なのに、そんな、なんか、上から? でも、それでいいんだとも思う。

それは自分の本にも書いたのだけれど、政治を誰もが自由に、自分の生活に則して考えたり、書いたり、言ったりしていくことこそが大切だと思うから。私というド素人が間違えてもちんぷんかんぷんでも、そのまま言えばいい。照れず恐れず、思ったことをそのまま言うことこそ大事だと思う。その間違いやちんぷんかんぷんさこそが、政治の明日を作る。私やあなたの分からないこと、間違いそのものが、未来の政治を形作っていくと考える。

政治って何やら専門家が専門的な言葉でキチッと語るもので、単語ひとつ間違えたら恥ずかしい、バカにされる、絶対にダメってなんだか固定観念で思い込んでやしないですか? でも、そんなこと、ないですよね? だって政治って私たちの生活を支えるもの。私たちの幸福を築く基礎たるもの。私たちの生活に直結するものなのに、私たちが分からない、専門家だけが分かる専門的なものであっていいはずがない。間違えようが、たどたどしくあろうが、私たちの言葉で語るべきものだと思う。

そして、その、たどたどしい言葉が行きつく発露が「選挙に行くこと」だと思っている。もっとも大きな力を発揮できる、その機会なんだと。その選択はもしかしたら最上のものにはならないかもしれないし、間違っているかもしれない。でも、それでいいんだと思う。たどたどしい発露であるところの選挙で、ぜんぜんいい。こんな人に投票してバカじゃないか? とか言われたらどうしよう、とか悩む必要はない。この人に決めたと思った、まさにその人に投票すればいい。そして、その人とこれから4年間共に歩んでいくんだ。

そう、選挙ってこれから共に歩んでいくパートナーを決めるものだとも思う。あなたの生活のパートナー。あなたの生活を守り支える、その一番下にいる人。それを選ぶ機会だ。なれば、少し慎重に考えないだろうか? 迂闊な人に自分の生活を支えられたら、ガタガタッと崩れてしまう。丁寧に仕事してくれる人。私の生活を守ることを第一に考えてくれる人。今の生活の苦労を分かってくれる人。私なら、そういう人をパートナーとして選びたいと思う。今やググれば、その人がどんな人かなんて、すぐに出てくるんだから。

でも結婚だってそう。会社選びだってそう。時にはパートナー選び、間違えるし、間違えてはなかったけど、だんだん相手が変わってしまうこともある。だから、そうそう臆せず、選べばいい。とにかくパートナーがいなかったらこの先4年間、一人で、自己責任で生きていかなきゃならなくなる。それは今このコロナ禍がまだまだ続きそうな中で、ちょっと苦しいでしょう? だから選んでおいた方がいい。

ちんぷんかんぷんで間違えてもいい。ただ、パートナー選びだから少し調べてみる。そして投票する。投票はほんの5分ぐらいで終わる。あっという間だ。

政治は分からない――そうだと思う。それでいいんだと思う。そのままで、ありのままの、分からないあなたで、投票に行けばいいんだ。堂々と。

*   *   *

【お知らせ】
本日(10月28日)21時~、小川淳也さんのインスタアカウントで、和田さんと小川さんのインスタライブが開催される予定です。

和田靜香『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』

50代、単身、フリーランス、お金なし。さらにコロナ禍でバイトをクビにーー。 一ライターと国会議員・小川淳也さんが繰り広げた“政治問答365日" 息が詰まるほど不安で苦しい生活が続くのは、「私のせい」? まったく分からない“不安"の正体を知るべく降り立ったのは、永田町・衆議院第二議員会館。 この「分からない」を解決するために、国会議員の小川さんに直接聞いてみることにしたーー。

和田靜香『おでんの汁にウツを沈めて 44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』

心配性で虚弱体質の音楽ライターが出版不況のため40代半ばにしてコンビニ店員デビュー。パートからのしあがった百戦錬磨のマダム店長(50代)ら人生のベテランに囲まれ経験する恐怖のレジ特訓、品出しパニック、したたかなクレーマーや万引き犯たち。身を粉にして懸命に働き、初めて気づいた人生の尊さとは。笑いと、時に涙必至の軽妙なエッセイ。

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10.31衆院選。選挙に向けても選挙後も、みんなで気軽に政治を語ろう。

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和田靜香

相撲・音楽ライター。千葉県生まれ。著書に『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)、『世界のおすもうさん』、『コロナ禍の東京を駆ける――緊急事態宣言下の困窮者支援日記』(共に共著、岩波書店)、『東京ロック・バー物語』(シンコーミュージック)などがある。https://twitter.com/wadashizuka

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