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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.10.18 更新 ツイート

「ぼくの推しを守って」イマジナリー桶を打ち鳴らす仲間たちへ アルテイシア

「男の子はどう生きるか?」JJからボーイズへの遺言』は多くの方に読んでいただき、共感の声をいただいた。

男性からも「子どもの頃にズボンおろしをされて嫌だった」「男同士のホモソ的なイジリがつらい」といった声が寄せられた。

メディアがセクハラやイジリを「笑い」として表現する罪は大きい。関係者は人権やジェンダーについてしっかり学ぶべきだ。

と私は繰り返し書いてきた。

なぜなら、メディアの社会に対する影響力はきわめて大きいから。かつ、自分の推しがセクハラや雑なイジリとかされたら泣いちゃうから。

 

あと万一、自分の推しが不適切発言とかで炎上したら死んじゃうと思う。

我が推しに限ってそんなことはないと信じている……が、しかし。

ほとんどの日本人はまともなジェンダー教育や人権教育を受けずに育っている。

そのため無自覚に不適切な言動をしてしまい、推しの炎上に泣くファンがあとを絶たない。

たとえば、某男性アイドルが子どもの頃にスカートめくりしたことを「笑えるネタ」として話していた。

本人的には無邪気なイタズラのつもりだろうが、これは性暴力である。

スカートめくりされたショックで学校に行けなくなる少女や、大人になってもスカートを履けない女性も存在する。

新刊『フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』に収録した『ジャニーズはジェンダー担当に拙者を雇ってはどうか』で次のように書いた。

〈昨今あちこちで炎上の狼煙が上がっていて、燃えるべきものが燃える時代になった。

時代は少しずつでも良い方向に進んでいるな……と思っていた矢先、『快感インストール』の予告を見て腰を抜かした。

私がキスマイのファンだったら、ショックで憤死しただろう。

なぜファンの女性の多くが性被害に遭っていると想像できなかったのか、なぜ誰も止めなかったのか……??

と天を仰いでいたら、キスマイファンの女子から「ショックで自律神経が乱れまくって、命の母ホワイトを飲みました(泣)」とLINEをもらって胸が痛んだ。

彼らもファンを悲しませる気はなかったはずだ。まともな性教育を受ける機会がなかったことが悲劇を招いたのだろう。

というわけで、ジャニーズはジェンダー担当に拙者を雇ってはどうか。ギャラはいらないので、ファンに命の母ホワイトをプレゼントしてほしい〉

ジェンダー教育や性教育を受ける機会がなかったことは、本人のせいじゃない。だけど人はいくつになっても学べるのだ、本人に学ぼうとする意志さえあれば。

一番の問題は「あなたには学びが必要だよ」と言ってくれる人がいない環境だろう。

芸能事務所はタレントを守るために、ジェンダー教育や人権教育を徹底してほしい。

マジでお願いだから、ぼくの推しを守って……!!!

少し前に、お笑いコンビ見取り図の番組が炎上した。詳しくはこちらの記事を読んでほしい。

私もこの件を知って、以下のようにツイートした。

〈盛山は《今日の東京スケッチは一般女性の留守宅へガチ侵入をする、ほぼ空き巣企画です。是非! 》と紹介。「ガチ児童虐待企画です。是非!」とかはありえないのに、女性宅に侵入してパンツを盗む行為はギャグにする。いい加減、性暴力やジェンダーについて学ぶべき〉

このツイートは広く拡散されて「ひどすぎて震える」「吐きそう」とコメントが寄せられた。
「見取り図のファンだからショックで泣いてる」といったコメントもあった。

うんうん、泣いちゃうよね……と私も胸を痛めて、命の母ホワイトを送りたくなった。ついでに養命酒も送ろうかしら。

誰か~彼らに伝えてくれよ~~!!!

とアンダルシアじゃなくアルテイシアは叫びたい。

我々は下ネタやエロがNGなんじゃなく、性暴力をエロやギャグとして描くな、と言っているのだ。

ドリフの痴漢コントの時代から、いい加減アップデートしてくれよ。ファンや視聴者の中にも性被害に苦しむ人がいることを想像してくれよ、と。

下着泥棒に入られて、怖くてその家に住めなくなった女友達がいる。

彼女は「すごく気に入ってた家だったけど引っ越して、お金も手間もかかって本当につらかった」と話していた。

性犯罪の被害者の90%以上が女性で、加害者の95%以上が男性である。

女性が一階に住むのは危険、駅から遠いのは危険、セキュリティのいい物件に住むべきと言われるため、住居費が高くなる(にもかかわらず女性の平均賃金は低い)

みたいな現実を知っていれば、当事者の声を聞く機会があれば、「この企画は絶対アウト」と彼らも判断しただろう。

この企画が通ってしまったのは、男同士のホモソノリで「これヤベー、絶対受ける!」と盛り上がっちゃったんだろう。

この手の企画が炎上した際に「スタッフの中には女性もいた」と制作側がコメントしたりするが、女性がいればいいってわけじゃない。

女性だからといってジェンダー意識が高いとは限らない、そんなの当たり前田のクラッカーだ。

男社会でミソジニー的な価値観に染まっている女性もいる。

女性の政治家にも「中身はトランプ元大統領」みたいな人がいるように。「女性はいくらでも嘘をつける」とか抜かす人がいるように。

なおかつ、日本の組織で決定権をもつ立場にいるのは圧倒的に男性が多い。そんな環境で反対意見を言いたくても言えない女性も多いだろう。

そもそも制作スタッフはジェンダーの専門家じゃないんだから、餅は餅屋に頼むべきだ。

第三者の専門家にチェックを頼めば「全裸でキャンプファイヤーするぐらい燃えますよ」と答えるだろう。なんなら私も答えますよ、ギャラは15円でいい。

最近は「ジェンダー意識が低いと生き残れない」と危機感を抱く企業が増えている。芸能人も「アップデートしないと、やばたにえんの麻婆春雨」と危機感をもってほしい。

業界全体のアップデートが進めば、我が推しも守られると思うから。

なにより、私はもう推しの葬式みたいなファンの顔を見たくない。

先日も某お笑いコンビを20年推している友人から悲しみの報告が届いた。

その男性コンビがYouTubeで「フェミニストがセクシーな格好の女性を叩いている」系の話をしていたそうだ。

「一番つらかったのは、『フェミは頭が悪い』系のド直球のミソジニーコメントに彼らがイイネしていたことです」

「私自身もフェミニストだし、彼らをずっと応援したいのに……もう悲しすぎて怨霊になりそうです……」

そうしめやかに語る友人を見ながら「我が推しがそんな話をしていたら、アルマゲドンになっちゃうよ」と思った。

我は路地裏の野良作家だが、お笑い芸人の難しさを多少はわかるのだ。

ハッピーフェミニスト、バッドフェミニスト……などいろんな自称があるが、我はひょうきんフェミニストでありたいと思っている。

読者が笑って元気になるものを書きたい。そんな思いで16年やっとりますが、かつては「笑ってほしい」と思うあまり、きわどいところを攻めることもあった。

そもそも過去の私はジェンダーやルッキズムの感覚がガバガバだった。かつ「この表現はマズいかも?」と内心思いつつ、面白さを優先してしまうことがあった。

過去の文章を読み返して「これは書くべきじゃなかった、間違っていたな」と反省することは多い。

だからこそ、今の私は「これを見て笑えない人は誰か?」と考えるようにしている。

これを見て笑えない人や傷つく人がいるかもと思ったら、たとえ笑えるネタでも書かない判断をしている。

人はみんなアップデートの途中なのだ。これは職業や属性を問わずみんなそうだと思う。

一度も間違ったことのない人間なんていないし、間違ったことのない人間しか語っちゃいけないとなると、誰も何も語れなくなる。

あれは間違っていたなと気づいたら、反省して改めればいい。変わらなきゃと気づいたなら、そこから変わればいい。

過去は変えられないけど、未来の言動は変えられるのだから。

私も過去にさんざんやらかした反省があるからこそ、アップデートを怠ってはいけないし、声を上げなきゃと思っている。

そして、子どもや若者を守ることが大人の責任だと思っている。

45歳の私はガチ保護者目線でアイドルを見ている。

彼ら彼女らが露出の多い衣装を着ていると「お腹が冷えるんじゃないかしら」と心配になり、腹巻きを送りたくなる。ついでに養命酒も送ろうかしら。

そんなわけで、加護ちゃんの話には「わかる!」と膝パーカッションを連打した。

加護ちゃんはYouTubeで「三人祭(過去に所属したユニット)が一番嫌いでした。本当に嫌だったです」と告白。

「本当によく考えてほしいの。大切な中学2~3年生の時に、ピンクのカツラでパンツを出すってことがどれほど恥ずかしいことだったか」「お腹を出すことも本当に嫌だった」「PV撮影も泣いてました」と20年越しに正直な思いを話していた。

そりゃそうだよね、つらかったねえ……と20年越しに腹巻きを送りたくなったが、その動画には「だったらモー娘。に入らなければよかったのに」といったコメントもついていた。

小中学生にまで自己責任教を押し付けるヘルジャパン。

そういう人は自分がパワハラを受けた時に「だったらこの会社に入らなければよかったのに」と言われたら、どう思うのか。

また、この手の話題には「好きでやってるアイドルもいるだろ」「体を露出する女性を否定するのか」系のコメントが湧きがちだが、「やる」と「やらされる」の区別もつかんのか。

加護ちゃんは嫌だと泣いてもやらされたのだろうし、嫌でも嫌と言えないアイドルもいるだろう。

先月、Twitterで「#桶ダンスやめてください」という投稿が広がった。

桶ダンスとはジャニーズの舞台の演出のひとつで、出演者がほぼ全裸の状態で股間を桶で隠しながら踊るというものだ。

出演者の中には未成年もいることから、多くのファンから批判の声が上がり、「#桶ダンスやめてください ジャニーズ事務所は桶ダンスを廃止し、未成年の保護に取り組んでください」という署名運動も行われた。

だが今のところジャニーズは桶ダンスの演出をやめてないらしい。

未成年の少女がほぼ全裸で桶ダンスをやらされていたら、その異常さに気づくはずだし、性的搾取だと大問題になるだろう。

男性に対する性的搾取やセクハラもやめるべきだし、男性の身体の尊厳も守られるべきだ。

「桶ダンスに喜ぶファンもいる」との声もあったが、喜ぶファンがいるからといって、問題視するファンがいる事実は変わらない。

厳しい言い方だが、桶ダンスを支持するファンは性的搾取に加担していると思う。

もし私がファンだったら、桶をかついで打ちこわしを行うだろう。桶騒動を起こさずに署名活動で訴えたファンは立派である、ノーベル平和賞を贈りたい。

私も署名に賛同するツイートをしたが、それに対して「うるさいフェミがまた騒いでるww」系のコメントが一部の男性からついていた。

私は彼らに問いたい。なぜあなたたちが声を上げないの?

「男性の身体の尊厳も守られるべき」

これが社会通念になれば、男性に対するセクハラや容姿イジリも減るだろう。これはあなたたちの問題なのだよ。

それにあなたも元少年だったら、少年たちを守りたいと思わないの?

そこで「思いません」と返す奴に用はない。私は大人として少年も少女も守りたいし、それが中年の役目だと思っている。

そして同じ思いをもつ人がいっぱいいることを知っている。そんな仲間たちと協力しながら、イマジナリー桶をドンドコ打ち鳴らしたいと思う。

*   *   *

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アルテイシアの59番目の結婚生活

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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