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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2021.10.12 更新 ツイート

ドラ氏の裏技で大昔から異世界転生していて学んだこと カレー沢薫

ドラゴンクエストシリーズでおなじみの作曲家すぎやまこういち氏がお亡くなりになった。

私は長年オタクを名乗ってきたが、最近になってオタクではなく「ただ見た目と言動が気持ち悪い人」という、オタクどころかオタクのイメージを著しく損なうだけの存在ということが判明してきた。

もしかしたらオタクの敵はパリピやギャルなのではなく、こういうオタクの顔したアニメを10年ぐらい見てない人なのではないだろうか。

 

そんなわけでオタクとしては既に自我が崩壊し、体は半透明、後ろのジョイフルの看板が透けて見えているという状態だが、私の消滅を唯一阻んでいる巨悪がいるとすればそれは「ゲーム」である。

今でもソシャゲに大金を投じ、少年期から青年期をほぼゲームに費やしてきたのは事実なのである。
そしてそのきっかけとなったゲームはやはりドラゴンクエスト、略してドラ氏である。

私があたえられたはじめてのファミコンソフト
それはドラゴンクエスト2で私は6歳でした
それは正確には兄にあたえられたもので世間はすでにドラクエ3
この時私は自分が特別な家には生まれていないと確信しました

今では私があのときの親より年上、やっていることといえば未だにゲームだけ、どうやら私は悪い意味で特別な存在だったようです。

私の家は別段貧乏ではないが裕福というわけでもなく、玩具が無尽蔵に与えられるような家ではなかったが、かと言って与えられないわけでもなく、全ての文明の力が世間より数年遅れてやってくるという家であった。

よってドラ氏やファイファン氏などは3が出るころ2が来るという規則正しい周回遅れをしていた。

ちなみにファイナルファンタジーの略し方は「ファイファン」と「FF」勢がおり、FF勢はツイッターの謎あいさつ「FF外から失礼します」を「ファイナルファンタジー外とは?」とイチイチ無駄な逡巡をしなければならないので、やはりこの挨拶はクソである。

そんなわけで私のドラ氏は「2」からだ。

ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ

これは突然キーボード、もしくは私がぶっ壊れたわけではない。
私のキーボードは私が打った文章を端から消していくというもっと悪質な壊れ方をしている、見くびらないでほしい。

この文章が何だかわかる、そして今でも見ずに打てるという人はソウルメイトである。そんなことにタダでさえ少ない脳のリソースを幼少期から割いている時点で現在もさぞやパッとしていないことだろう。

これは「ふっかつのじゅもん」である。

現在のゲームはデータセーブが基本である、しかし昔は「データをセーブしますか? はい」で全て終わるなどということはなく上記のような「ふっかつのじゅもん」を書き記し、それを入力することで続きからプレイすることができたのだ。

つまり、書き損じると今までの苦労が全部無駄になる。
今わざわざ書き写さなくてもスマホで撮影すればいいじゃない、と言ったアントワネットは残念ながら斬首が決定したので、ふっかつのじゅもんの代わりに遺書を書くことをお勧めする。

そして上記のじゅもんは裏技のようなもので、これを入力すると最初から「レベル48」からスタートすることができるのだ。
ただし主人公の名前は強制的に「もょもと」である。

私はこの裏技を知ってから、専らもょもとを使用していた、名前もギャル語の先取りと思えばイケている。
もうこの時点で「できれば人より楽をしたい、端的に言えばズルをしたい」という性根が透けてしまっている。

何せ本来ならレベル1からはじめなければいけないものを48から始められるので序盤は無双である。
しかしドラ氏2はドラクエシリーズの中でも屈指の難易度を誇っており、例えレベル48でも無策で進んでいたら割と早い段階で詰まるようになっているのだ。

そこではじめてレベル上げをするようになるかというと「やめていた」。
そして再度上記のじゅもんを入力し、再びもょもと無双をはじめ、無双できなくなったら最初からやりなおしていた。

この「自分が勝てるフィールドだけで戦って無双する」という経験を活かし、オタサーの姫として君臨するなどの青春時代が送れれば良かったのだが「自分が勝てるフィールドが見当たらない」「オタサーすら入れない」という諸事情により「図書室の番人」という序盤の中ボスになるのがやっとであった。
ゲームは大事なことを全部教えてくれるが実践できるかは別なのである。

今思えばこの裏技は今流行りの「異世界転生」を疑似体験させてくれたと言って良い。
突然世界を救う勇者ポジになり、しかも最初から強く、これからの展開もある程度知っているというのは、異世界転生のテンプレと言って良い。

しかし、中途半端に高いレベルと前世ごときの記憶で勝てる範囲などたかが知れているのである。
しかも、いままで努力もせずに勝ってきたため、いざ行き詰まっても今更努力などできないのだ。

30年以上も前に異世界転生システムを先取りした上「そんなにいいものではない」というところまで子供に示してくれていたドラ氏はやはり神ゲーと言って良い。

ただ、教えてもらっていたのに未だに「今の記憶を持って幼稚園ぐらいに戻れば無双できるのでは」という妄想から足を洗えていないのを申し訳なく思う。

関連書籍

カレー沢薫『人生で大事なことはみんなガチャから学んだ』

引きこもり漫画家の唯一の楽しみはソシャゲのガチャ。推しキャラ「へし切長谷部」「土方歳三」を出そうと今日も金をひねり出すが、当然足りないのでババア殿にもらった10万円を突っ込むかどうか悩む日々。と、ただのオタク話かと思いきや、廃課金ライフを通して夫婦や人生の妙も見えてきた。くだらないけど意外と深い抱腹絶倒コラム。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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