1. Home
  2. 生き方
  3. アルテイシアの熟女入門
  4. 「男の子はどう生きるか?」JJからボーイ...

アルテイシアの熟女入門

2021.10.01 更新 ツイート

「男の子はどう生きるか?」JJからボーイズへの遺言 アルテイシア

某ボーイズグループのファンの友人が、沈痛な面持ちで話していた。

「推しが水中で溶ける海パンを履かされるドッキリを見て、本気でつらくなりました」
「私は彼らのパフォーマンスが好きなのであって、テレビでそんなものを見たいわけじゃないのに……」

テレビ、特にバラエティ番組の人権意識やジェンダー意識の低さにはめまいがする。

若い子を見ると自分が産んだ子のように思うJJ(熟女)は、アイドルが人権侵害される様子を見ると怒髪天を衝く。

あの子たちはみんな生身の人間なんやぞ。

 

メディアのトップにいるおじさんたちは、自分の子どもにも同じことをさせるか? という視点を持つべきだ。

大人には子どもや若者を守る責任がある、と肝に銘じるべきだ。

といっても彼らは聞く耳を持たなさそうなので、視聴者が批判の声を上げることが大切だろう。

ライターの雪代すみれさんがこちらの記事で以下のように書いている。

『テレビでは(略)全裸ドッキリや股間ネタが再生産され続け、多くの視聴者が疑問を持たずに享受している』

『テレビ番組の内容は多かれ少なかれ、確実に社会に影響を与えるものであり、男性へのセクハラの軽視や、男性が性被害やジェンダーステレオタイプに声をあげにくい状況と無関係でないだろう』

『男性タレントであれば、裸にされたりプライベートゾーンを痛めつけられる姿をエンタメとして楽しんでよいのか、私たちは今一度考える必要があるだろう』

教育関係の友人から、小学校でズボンおろしをされて学校に行けなくなった男の子の話を聞いた。
おろした側の男の子は周りが笑ってくれるから、冗談のつもりでやったらしい。

子どもを被害者にも加害者にもしないために、まずは大人が正しい性教育を学ぶべきだ。

そして男性の身体を雑に扱ったり、男性へのセクハラを笑いにするのは、もう本気でやめよう。

これも根っこに「男はこれぐらいで傷つくな」「男は強くあるべき」というジェンダーの呪いがあると思う。

また、私はイジリ文化を撲滅したいフレンドとして「STOP!!イジリ」と提唱してきた。

イジリ文化もお笑いやバラエティ番組の影響が大きい。

人を揶揄する笑いを見て育った子どもたちは「人をイジれば笑いがとれる、場が盛り上がる」と刷り込まれてしまう。
サービス精神から、つい人を茶化すような発言をしてしまう子もいるだろう。

イジリの厄介な点は、イジメやハラスメントを「笑い」というオブラートで隠してしまうことだ。

「冗談なのにマジギレすんなよ笑」的な空気があると、イジられた側は傷ついても傷ついたと言えないし、イヤでもイヤと言えなくなってしまう。

私も女子校から共学の大学に進んだ時に、イジリの洗礼を受けた。

男子から見た目イジリや非モテイジリをされて傷ついたけど、当時は「ひょうきんなブスでーす(ダブルピース)」と自虐して笑いで返していた。

でも自虐すればするほどナメられて、扱いがひどくなった。それで自尊心を削られ続けた結果、過食嘔吐するようになった。

イジる側は冗談のつもりでも、それは人を一生苦しめる呪いになるのだ。

女性陣からは「男子のイジリ文化って何なんですかね?」「女同士はあんなふうにイジりませんよね?」という声が寄せられる。

たしかに女同士で見た目イジリ、非モテイジリ、処女イジリ等をすることはめったにない。

一方、男同士で「その腹ヤバいだろ笑」「だからモテないんだよ笑」「おまえその年で童貞なの?」とか言い合う場面はよく見かける。

これも男らしさの呪いが根っこにあるのだろう。

「相手より優位に立ちたい」という競争意識から、相手を見下すような発言をする。
「女をモノにできない男は一人前じゃない」というホモソーシャルな価値観から、非モテをバカにする。

それがインセル問題にもつながっている(インセル/恋人や性愛のパートナーがいない原因を女性に押しつけ、女性嫌悪をつのらせる異性愛の男性)

某人気少年漫画に「男を褒める男は、ホモか策士(タヌキ)かどっちかだ」というセリフがあって「この時代によくこれがオッケー出たな」とびっくりした。

男同士が褒め合ったり仲良くしていると「ホモか!」とイジるおじさんはいまだにいる。

また策士(タヌキ)という言葉には「男は他人を蹴落として競争に勝つべき」というジェンダー観が表れている。

私も初対面の男からイジられた経験が何度もあるが、マウント意識やミソジニー(女性蔑視)とともに「女を雑に扱える俺イケてる」的なイキりも感じた。

また、イジることで距離が縮まるという勘違いもあるんじゃないか。

たしかに仲良しの友人同士でからかいの言葉を交わすことはあるが、「イジったら仲良くなれる」というのは間違いだ。
それに仲良しであっても、イジられた側は内心傷ついていることも多い。

「いきなり失礼な発言をされたら『死ねクソが』としか思いませんよ」「普通に尊重してほしいに決まってますよね」と女性陣からは盛大な膝パーカッションが寄せられた。

“人から尊重されたければ、自分も人を尊重するべき”

九九でいうと一の段だが、大人が子どもにそれを教えるどころか、呪いをかける場面が多いと思う。

たとえば「男子は好きな女子をいじめるもの」という呪いも滅びるべきだ。

男子に髪を引っ張られたりスカートめくりをされた時、先生から「あいつはお前のことが好きなんだ、許してやれ」と言われた、みたいな話に「誰が許すか! 末代まで呪ってやる!」と膝パーカッションで地面が揺れた。

セクハラ加害者が「相手を好きだったから」と言い訳するケースも多い。

好きという言葉でハラスメントを矮小化せず、絶対にしてはいけないと子どもたちに教えるべきだ。
「意地悪しても好意は伝わらないし、嫌われるだけだよ」「呪われて生霊を飛ばされちゃうよ」と。

攻撃的で乱暴なふるまいを「男の子だから」「男の子はバカだから」「ヤンチャだから」と容認するのもやめるべきだ。

女児が男児の髪を引っ張ったりズボンをおろした場合「女の子はバカだから」とは言わないだろう。

男の子の加害や暴力は許される、そんな呪いを次世代にかけないことが大人の責任である。

子どもは大人をお手本にして育つ。だから大人が尊重しあうコミュニケーションを実践すること、「リスペクトって、何かね?」と菅原文太顔で自問する必要がある。

特にメディアにいる人間はその影響力を自覚して、人権やジェンダーについて学ぶべきだ。

たとえば「好きな異性の好みは?」みたいな、セクシャリティを無視した質問はやめよう。「メンバーの中でイケメン第一位は?」とか、ルッキズム丸出しの質問もやめよう。

そのへんのことは拙著『モヤる言葉、ヤバイ人』に口酸っぱく書いているので、よかったら参考にしてほしい。

子育て中の友人からは、夫婦間の意識のギャップに悩む声が寄せられる。

「夫が子どもをイジるんだよね。やめてと言っても『そんなに目くじら立てなくても』とまともに聞いてくれない」

「うちの息子はおとなしいタイプでいじめられがちなんだけど、夫は『男だったら泣くな』『強くなってやり返せ』とか言うのよ。息子が部屋でこっそり泣いてるのを見て、胸が潰れそうになった」

という話に私も胸が潰れそうになったし、他人様の夫だけど「しばきたい~♪」と玉置浩二顔になった。

「男はこれぐらいで傷つくな」「男は強くあるべき」と呪いをかけられて育つと、子どもは自分の傷つきや苦しみを認められなくなる。
感情を抑え込むようになり、感情を言葉にできなくなってしまう。

自分で自分の感情がわからないと、他人の感情もわからない。自分の感情を言語化できないと、他人と理解共感しあい、深いつながりを築くことも難しい。

また自分の弱さを認められないと、他人に助けを求められなくなる。弱さを否定してウィークネスフォビア(弱さ嫌悪)に陥ると、他人に優しくできなくなる。

そんな大人の男性をたくさん見てきた。

会社員時代、落ち込んでいる後輩男子に先輩が「くよくよするな、飲め!」と酒を注いだり「パーッと風俗でも行くか!」と誘う場面を見て、ゲー吐きそうになった。

まずは大人がジェンダーの呪いを手放し、男らしさのプレッシャーから解放されてほしい。男同士で感情ケアしあう姿を見せてほしい。

そうして男性自身が幸せになって、男の子たちにお手本を示してほしい。

と書いたところで、男性はめったに私のコラムを読まない。男性の多くはジェンダーやフェミニズムに無関心で「そういうとこやぞ」と言いたくなる。

だからこのJJが若い人たちに言いたい。

「感情的になるな」「感情より理性を優先しろ」とか言われるけど、感情はめちゃめちゃ大切だから、自分の感情を大切にしよう。他人の感情も大切にしよう。

あと弱音や愚痴を吐くことは、排便と同じぐらい大切だと覚えていてほしい。

うんこと同様、人はつらい感情をためこむと病気になるので、言葉にして吐き出そう。

誰かにつらさを話して「わかる」「つらいよね」と聞いてもらうことで、人は心の健康を保つことができる。

逆に「自分で解決しなきゃ、人に頼っちゃダメだ」と抱え込むと、どんどん追いつめられてしまう。
ストレスや不安が強くなると思考力が鈍って、適切な判断ができなくなる。

弱音や愚痴を吐くことで心のHPが回復して、解決に向けて動けるのだ。

なにより、長期間ストレスにさらされると「学習性無気力」という状態になり、逃げる気力すら失ってしまう。やばたにえんの麻婆春雨である。

自己責任教の弊害で「人に迷惑をかけちゃいけない」と刷り込まれている若者は多い。でも人は誰かに信頼されて頼られると、嬉しく感じるのだ。

逆に自分が頼られた時には助けてあげて、困った時はお互い様で支え合える社会のほうが生きやすい。そんなの当たり前田のクラッカーである。

また感情を言葉にするのが苦手な人は、自分の心を見つめて、文章に書いてみよう。自分だけが読むブログを書いて練習するのもいいと思う。

そのうえで、それを人に話す練習をしてみよう。

相手の反応が怖い場合は、事前にLINEとかで「真面目に話したいことがあるんだけど聞いてくれる?」と予告するといいと思う。そしたら相手も心の準備ができるから。

もし自分が聞く側になった場合は、茶化さず真剣に耳を傾けてほしい。

気のきいたアドバイスとかいらないから、相手の言葉を否定せず最後まで聞いてあげよう。それだけで相手は安心するし、気持ちに寄り添ってくれることに救われるから。

そして「話してくれてありがとう」と言ってあげてほしい。

JJなので同じことを何度も言うが、当事者は傷ついても傷ついたと言えない場合が多い。

帰国子女の友人は、日本語の間違いをイジられるのがつらかったそうだ。本当は笑われるたびに傷ついたけど、イジられキャラとして振舞ううちに、しゃべるのが怖くなったという。

このように本人は言いづらいからこそ、周りが「そういうのやめようよ」と注意してあげてほしい。注意するのが無理でも、少なくても同調して笑わないでほしい。

周りが真顔で無反応をキメれば、イジる側が「これってマズいかも」と気づくキッカケになる。

そうやっていたわりと友愛の心で生きてくださいね。以上がJJからボーイズへの遺言です(完)

もうちっとだけ続くんじゃ。私は若い人たちと接するたびに「何といういたわりと友愛じゃ……」と合掌している。

みんなスマホの操作とか優しい孫のように教えてくれるし、モラルや人権意識が高いし、他人を傷つけない気づかいや思いやりがある。

「最近の若者は傷つきやすくて繊細すぎる」とボヤく老人がいるが、繊細で何が悪いと言いたい。

繊細でいることは、自分と他人を大切にすることだと思う。

男も女も繊細でいいし、傷ついていいし、泣いていいし、弱くてもいい。自分の弱い部分を認められて、助けを求められることが強さなのだ。

この強さとは人に勝つための強さじゃなく、生きる力としての強さなのじゃよ。

そして我々中年の役割は、若い子たちが社会に潰されないよう盾になることだ。

今後テレビで全裸ドッキリや股間ネタを見かけたら「リスペクトって、何かね!!」とカボチャをぶん投げて、抗議したいと思う。

*   *   *

新刊発売中!
フェミニズムに出会って長生きしたくなった。』アルテイシアさんの大人気連載が1冊になりました! 爆笑フェミニスト宣言エッセイ。アルテイシアさん長年の憧れ、田嶋陽子さんとの対談も特別収録です。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

{ この記事をシェアする }

コメント

東畑幸多  某ボーイズグループのファンの友人が、沈痛な面持ちで話していた。 「推しが水中で溶ける海パンを履かされるドッキリを見て、本気でつらくなりました」 「彼らのパフォーマンスが好きなのであって、テレビでそんなものを見たいわけじゃないのに」… https://t.co/FAvmIUNXea 22時間前 replyretweetfavorite

Maki😷🌻  “「感情的になるな」「感情より理性を優先しろ」とか言われるけど、感情はめちゃめちゃ大切だから、自分の感情を大切にしよう。他人の感情も大切にしよう。 あと弱音や愚痴を吐くことは、排便と同じぐらい大切だと覚えていてほしい。” 私よく… https://t.co/l8J1Z1ebwD 1日前 replyretweetfavorite

アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

バックナンバー

アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

この記事を読んだ人へのおすすめ

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP