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アルテイシアの59番目の結婚生活

2021.08.18 更新 ツイート

夫婦の家事問題を解決するライフハック アルテイシア

芸能にうとい夫は佐藤健を「さとうたけし」と呼び、杏を「あんず」と呼んでいる。

また、私が「すぐスマイルするもんか~奴隷じゃないからな♪」と歌っていると「へえ~いい曲だなあ」と褒めてくれる、いい奴である。

夫婦関係は「こいついい奴やな」と「しばいたろかな」の反復横飛びだと思う。私もたまに玉置浩二の「じれったい~♪」の顔で「しばきたい~♪」と歌いたくなる。

 

つい最近もしばきたい事件が起こった。

それは真夏のとても暑い日のことじゃった。

とても暑い日なのにキッチンの水が流れなくなり、私はすぐにマンションの管理会社に電話した。
すると修理に行くのは明日以降になると言われて「マジかよ……」と頭を抱えていた、その刹那。

夫が冷蔵庫からカレーの鍋を出して温めはじめた。

おいコラおまえ正気か? 水が流れないこの状況で洗い物を生み出す気か? しかもカレー(カレーに罪はない)
おまけに「昨晩から水道の流れが悪いと思ってた」とおっしゃる。

そういうとこやぞ!!!

じゃあなぜその時点で管理会社に電話しない? なぜいつも人任せにして丸投げなのか?

しばきたい~~♪

夫に「家事は女の仕事」という性役割意識はないし、私に「妻の役割」を押し付けることもない。
ただいかんせん、家事スキルおよび家事全体を考える能力が低すぎる。

「トイレットペーパーの在庫が切れそうだから買い足さなきゃ」とか考えるのはいつも私で「おまえがケツを拭けるのは誰のおかげだ?」と詰めたくなる。

夫に「トイレットペーパー買ってきて、ダブルじゃなくシングルやで」と言うと買ってくるし、生理があった時代は「タンポン買ってきて、レギュラーじゃなくスーパーやで」と言うと買ってきてくれた。

それに私が家事について注意すると素直に反省して改善する。ツイッターでよく見かける「妻に家事を丸投げして逆切れする夫」とは違って、基本いい奴なのである。

それでもたまにしばきたくなる。

という話を女性陣にすると「わかる!!」と膝パーカッションで地球が揺れる。

「うちの夫も家事を分担する意識はあるんですよ。で、本人はちゃんとやってるつもりなんですよ。でもいわゆる“見えない家事”は全部私がやってて、それにフリーライドしてる自覚がないのもムカつく、しばきたい~♪」

玉置浩二顔になる彼女らは夫婦共稼ぎで家事を分担しているが、妻の方の負担が大きい。

それは妻の方が家事スキルおよび家事全体を考える能力が高いから。また妻の方が視野が広く細かいところまで気づくため、気づかない夫よりも家事量が多くなる。

「男女脳の違いゆえ、女の方が家事に向いている」と唱えるトンデモ本もあるが、脳の性差は科学的にほぼ否定されているし、これはジェンダーの問題だろう。

男尊女卑ダンジョン・ヘルジャパンで、女は幼い頃から「家事は女の仕事」「女は細やかに気づかいすべき」といったジェンダー規範を刷り込まれて育つ。
そのため家事に対する意識や経験値に男女で差が生まれる。

専業主夫の夫と暮らす女友達は「夫は見えない家事もちゃんとやってるし、男性は家事に向かないと決めつけるのは失礼だよね」と話していた。つまり、家事の責任者は自分だという意識の問題なのだ。

また、家事について「夫を育てよう」「褒めて伸ばそう」みたいな言い方もモヤる。おのれの股間を痛めて産んだ子でもないのに、なぜ育てなければならんのか。

股間を痛めて夫を産んだ義母は、全部やっちゃう系の母親だった。
「あんたが料理したら台所がちらかる」「あんたが洗濯物干したらしわくちゃになる」といって、一切家事をさせなかったらしい。

そのせいで今こっちは困っているわけだが、戦中生まれの義母を責めるのも気の毒だ。
といいつつ、息子のためにぶどうの皮までむく義母に「もうぶどう買ってこないでください」と告げた鬼嫁である。

「わかります! うちの夫も料理したことなくて、刺身をチルドに入れといてと頼んだら、冷凍庫に入れてカチカチに凍ってました」という友人の話に息をのんだ。

私だったら夫を三枚おろしにしてしまう。刺身なんて高いからスーパーで30%引きになってから買うのに。

「うちの夫は家事も料理も得意ですよ」「むしろ私よりやってますよ」みたいな話を聞くと羨ましくて失禁しそうになるが、やはりそういう夫婦は少数派だ。

普段は仲良しだけど家事問題でストレスが生じてケンカになる。そんな悩みをどうすれば解決できるか?

全ての家事をリストアップして見える化して、分担するのも手だろう。

ただ私はものぐさ太郎なので、リストアップするのが面倒くさい。かつ忘れん坊次郎なので、自分がタスクを忘れるだろう。なにより三日坊主ならぬ三日大僧正なので、続かないと思う。

我が家の場合は“考えない家事”を夫が多く担当している。

風呂掃除、トイレ掃除、階段の掃除機がけ、ゴミ収集とゴミ出し……などのシンプルな家事を夫がやって、細かい家事は私がやる。という具合に役割分担したら、私のストレスがかなり減った。

家事の全体量を減らすのも手である。

ネットスーパー、ミールキットの宅配、家事代行などを活用したり、食洗器、乾燥機付き洗濯機、ホットクック、ルンバなどの家電に課金したり、使えるものはなんでも使うとストレスが減る。

ちなみに私はルンバを乗りこなす猫に憧れていたが、うちの猫はルンバから逃げ惑う猫になってしまった。猫のストレスは増えたみたいで気の毒だ。

また、私はなるべく料理をしない方針にしたら楽になった。

私は食べるのは好きだが、作ることには興味がない。夫はそもそも食に興味がなくて何を出しても丸飲みする。

よって土井善晴先生の提案する「ごはんと具だくさんのおみそ汁、その一汁一菜でええんやで」方式でいくことにした。

米を炊く時には十五穀米やおかまにポン的なやつをぶちこむ。みそ汁にはカット野菜や冷凍野菜などをぶちこむ。

それに納豆、海苔、卵、漬物、キムチなどを足せば、栄養バランスもバッチリやで。土井善晴先生、ありがとうやで。

この方針に決めたら、献立を考えるストレスから解放された。買い物、調理、食材の管理、冷蔵庫の収納、後片づけ、洗い物などの負担も一気に減った。

自分が食べたいものは外食またはウーバーで食べてごきげんである。私がごきげんだと夫も猫もごきげんである。

結婚当初は「晩ごはんぐらいはちゃんと作らなきゃ」と勝手にプレッシャーを感じていた。「俺のごはんなんて気にしなくていい」と夫に100回言われて、ようやく呪いが解けた。

夫は妻の役割を押し付けないのに、私自身が「ちゃんとしなきゃ」と縛られていたのだ。

ジェンダーの呪い滅ぼし隊の私ですらそうだったのだから、料理や家事に手を抜くことに罪悪感を感じる女性は多いだろう。
でもそれは手抜きじゃなくて、手抜きと感じてしまうことが呪いなのだ。

「敵は己の罪悪感」を標語にして、みんなどんどん楽になろう。無意識に自分を苦しめるジェンダーの呪いに「バルス!」と唱えよう。

以前「夫の年収を知らない」とコラムに書いたら「家計管理は妻の役目ですよ、奥さん失格ですね」とクソリプが来て「てめえの合格なんぞいらねえ、バルス!」と唱えた。

呪いをかけてくる連中には「I have nothing to prove to you(あなたに認められる必要などない)」とキャプテン・マーベル先輩の言葉を返して、盛大に屁をぶちかまそう。

具だくさんのみそ汁を飲むと腸内環境が良くなり、屁がいっぱい出る。そのうち屁で空を飛べるかもしれない。

夫婦の形は人それぞれで、自分たちに合う形にカスタマイズすればいい。そして結婚は単なる箱で、中身は50年の共同生活。

たまに「しばきたい♪」と思うことはあっても、50年玉置浩二顔で暮らすのは地獄だ。やっぱり「こいついい奴やな、結婚してよかったな」と思う相手じゃないと暮らせない。

先日、夫は駅で倒れたおじいさんを抱えて駅員に受け渡したらしい。その後もずっと「あのおじいさん大丈夫だったかなあ」と心配していた。

また3日ほど前、私はバス停で困っていた小学生の女の子に「どうしたの?」と声をかけた。

するとどのバスに乗ればいいかわからないと言うので、路線図を見て教えたら「ありがとうございます!」と言われて「かわいい……トゥンク」と涙ぐんだ。

JJ(熟女)はかわいい子どもや猫やパンダを見るとすぐ涙ぐむ。

その日の夜「私、おばさんでよかったわ」と夫に話した。

「きみみたいなマ・ドンソク似のいかついおっさんが声をかけたら女の子はびびりそうだし、下手したら不審な声かけ案件になっちゃうんじゃない?」と言うと「その通りだ」とキッパリうなずく夫。

「でも俺は困ってる子どもがいたら声をかける。もし周りに不審者扱いされても、ちゃんと説明すればすむ話だし」

そういうとこやぞ。

夫は困っている人や弱い立場の人にやさしい。誰かが困っている時に見て見ぬふりをしない。そういうめっちゃいい奴だから結婚したのだ。

そこで夫に「なんで私はきみと結婚したと思う?」と聞くと「虫を退治するのが得意だから」と即答された。そんなふうに思とったんか。

ちなみに浪速の石田ゆり子と呼ばれる親友は「私は自分で虫を退治できるから男はいらない」と言っていた。

虫問題はさておき、今後も得意分野で支え合って、たまに玉置浩二顔になりつつ、仲良く暮らしていきたいと思う。

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

Twitter: @artesia59

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