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オオカミ少女に気をつけろ!

2020.02.15 公開 ツイート

自分好みの情報だけ集まる「フィルター・バブル」空間はお好き? 泉美木蘭

ホテル三日月の広告に追いかけられて考えた

この一週間、延々と「勝浦ホテル三日月」の広告に追い回されている。新型コロナウイルスによる一時帰国者受け入れの報道を見ながら「ホテル三日月って、舛添要一のスキャンダルで名を上げたところじゃん!」と思い当たり、思わずグーグルで検索したのだ。客室内の写真を見たり、ホテル予約サイトで料金プランを眺めたりした結果、どこへ行っても「予約しないの?」と言いたげに三日月が追いかけてくるようになってしまった。

まあ、その前は確定申告の準備に追われて、仕訳につまづくたびにネット検索していたため、朝から晩まですでに購入した青色申告ソフトの広告が、「買わないの?」とアピールしてくるのでイラッとしていた。三日月のほうがまだ陽気でいいかもしれない。

勝手に“自分カスタマイズ”された広告は、ウザい? or ウザくない?

アルゴリズムによって人々のネット上での行動履歴や入力データなどを解析し、最適な情報を配信する「ターゲティング広告」は、ちょっと調べただけのものや、すでに購入したものが執拗につきまとってきて、うんざりさせられるところがあるが、技術は着々と開発を重ねられており、ますます巧妙なものが登場している。

例えば、楽天は、ショッピングモール「楽天市場」や旅行予約サービス「楽天トラベル」などにおける閲覧履歴や購入履歴などの分析データを、広告配信の仕組みに連携。すでにその商品やサービスを購入した利用者を避けて、よりピンポイントに広告が配信されるような技術を使っている。

(写真:iStock.com/AndretPopov)

ヤフージャパンは、同じ商品でも見る人によって出演者や表現手法、アピールポイントが異なる広告配信サービス「じぶん広告」を昨年末に開始。利用者の属性、興味・関心、嗜好などを解析して、より精度の高い動画広告が配信されはじめている。

「Yahoo! JAPANじぶんCM」のプレスリリース。人によって配信される動画が違うため、友達同士でも見ているものが違う可能性が……。

グーグルは、「広告のカスタマイズ」という名目で、日々のネット利用のデータを収集し、その人を構成する要素を拾い上げて広告に利用している。グーグルのアカウント画面から、自分はどんな要素を持つと判断されているのかを見てみると、年齢、性別、趣味、嗜好、興味、関心、家族構成、恋愛関係、学歴、職業、年収、財産など、ずいぶん細かく分析されているのがわかる。

「Googleアカウントの管理」>「データとカスタマイズ」で見ることができ、編集したり、機能をOFFにしたりできる。どこまでOFFになっているかはわからないが。

自分のアカウントなんだし、自分用にカスタマイズできるならいいと思う人もいるかもしれないが、グーグルが利用者に対して表示しているのは、あくまでも「公開して当たり障りのないデータ」だけだろうということは想像しておいたほうがいいかもしれない。

「誰にも知られずにこの悩みを解決する方法を調べたい」「お金でコンプレックスを解消したい」「あの人の過去を詮索したい」「マニアックな妄想を満たしたい」――とてもじゃないが他人には言えないことを、人はネット検索のなかに求めていて、グーグルはそれを知っているのだ。

また、SNSを使っていると、占いや心理テスト、IQテストなど、ちょっとした「遊び」が流れて来ることがあるが、こういったものに無防備に入力した内容も、しっかりデータとして収集されていると思ったほうがいいだろう。

ニュース配信の“自分カスタマイズ”は、便利?or 余計なお世話?

アルゴリズムによって操作されているのは、なにも広告だけではない。例えば、ヤフージャパンのトップページを複数の人で見比べてみよう。

左から20代独身女性スマホ、40代離婚子あり女性スマホとパソコン。

これは、トップにあるニュースのヘッドラインだ。一番左が、20代独身女性のスマホで見たもの。中央が40代の私のスマホ。右が私のパソコン画面である。パソコンのほうに「日産10-12月期 11年ぶり赤字」のニュースが一つ多く入っているが、そのほかはどれも同じ並びだ。ヤフージャパン側が決定して配信しているのだろう。

ところが、そのすぐ下に続く記事を見ていくと、表示されるものがまったく違っているので驚く。

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オオカミ少女に気をつけろ!

嘘、デマ、フェイク、陰謀論、巧妙なステマに情報規制……。混乱と不自由さが増すネット界に、泉美木蘭がバンザイ突撃。右往左往しながら“ほんとうらしきもの”を探す真っ向ルポ。

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泉美木蘭

昭和52年三重県生まれ、作家、ライター。日々、愛しさと切なさと後ろめたさに苛まれている不道徳者。社交的と思わせて人見知り。日頃はシャッターをおろして新聞受けから世間を覗いている。趣味は合気道、ラテンDJ、三浦大知。

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