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“人疲れ”が嫌いな脳

2020.02.12 公開 ツイート

医師が教える「話し上手」になる脳の使い方 梶本修身

満員電車に乗るだけでクタクタ、1人になるとどっと疲れが出て回復しない、週末はひたすら寝て終わってしまう……。その疲れ、もしかすると脳の「人疲れ」かもしれません! 脳と疲労の専門家、梶本修身先生の『“人疲れ”が嫌いな脳』は、しつこい疲れをリセットするヒントを集めた、忙しい現代人にぴったりの一冊。本書に収録された33の方法の中から、厳選していくつかご紹介します。

*   *   *

体験を「感情」で分類する

日常的にワーキングメモリをトレーニングする方法として、「心の記憶フォルダ」を意識する方法があります。

※ワーキングメモリとは、リアルタイムで入ってくる情報(短期記憶)を受け入れながら、過去の記憶、学習、理解など(長期記憶)と結びつけて、複数のことを同時に行ったり、考えたりを可能にしている脳の働きのことです。

(写真:iStock.com/monsitj)

たとえば、こんな体験をしたと仮定してみましょう。

映画『シン・ゴジラ』を観にいったとき、「怖かったね。すごかったね」と口々に話しながら出てきた観客の中に、一人だけ目を真っ赤にして泣いている中年女性がいたとします

『シン・ゴジラ』は大人の観客が納得できる怪獣映画ですが、そうやって泣くような映画ではありません。

なんで泣いているのかわからないけれど、あまりに異様だったので「変わってるわあ、あのおばちゃん」という印象が残ったとして、そのおばちゃんのことも含めて「映画」とか「映画館」の記憶フォルダに入れるのが、一般的な記憶の仕方です。

映画の話題になったときに、「そういえば、この前『シン・ゴジラ』を観にいってね」という話の中で、異様だったおばちゃんについて触れることになるかもしれません。

誰かが「映画」というキーワードで記憶フォルダを開けてくれると、ワーキングメモリが記憶を引き出し、『シン・ゴジラ』や「おばちゃんの話」が出せるわけです。

このとき、コミュニケーションの達人は、おばちゃんの印象を「なんじゃこりゃ」という、自分の感情に即したフォルダをつくって、そこに入れるのです。

「映画」フォルダには入れません。すなわち、記憶フォルダを「感情」によって分類しておくのです。

そうすると誰かが「奇妙な話」とか「不可解な話」を話題にしたとき、「なんじゃこりゃ」という感情のフォルダに入ったおばちゃんの話を、「そういえばこの前、映画館でね」と始められることになります。

「話が面白い人」とは?

相手にはどう聞こえるのか、考えてみましょう。

(写真:iStock.com/fizkes)

映画の話題が、たとえば「最近観た映画」とか「政治家や官僚の描かれている映画」「戦闘シーンのある映画」といったテーマであれば、『シン・ゴジラ』の話をするのは妥当です。

でも映画の話で盛り上がっているときに「おばちゃんの話」は脈絡がない。会話の中で、箸休め的な話題にはなるでしょうが、脈絡のない話で、盛り上がっていた会話に水を差してしまう可能性もあります。

一方、「奇妙な話」とか「不可解な話」がテーマのときは、「なんじゃこりゃ」という感情はぴったりはまります。一連の話題の中で「この前、映画館で」と話し始めれば、場の雰囲気を変えないで、話題をどんどんふくらませることができます

話題が豊富でおもしろい人とは、話の腰を折ったり、水を差したりすることなく、ぴたりとはまる体験談を提供できる人でしょう。

そうするためには、感情で分類したフォルダが非常に有効になります。

関連書籍

梶本修身『“人疲れ”が嫌いな脳 ラクしてうまくいく人間関係のつくりかた』

最新脳研究でわかった「疲れない人間関係」のつくりかた 脳を疲れさせているのは、残業よりも「人疲れ」だった! 疲労医学の専門家が、なぜ人は人に疲れるのか、 どうすればラクで疲れない人間関係をつくることができるのかを解説。 これを読めば、明日からあなたも疲れ知らず! 【もくじ】 はじめに 人間関係が得意でも「人疲れ」は起こる 第1章 脳を疲労させるのは、残業よりも「人疲れ」 ●そもそも「疲労」って、いったいどういうこと? ●「飽きてきた」は脳疲労の最初のサイン ●過労死する動物は人間だけ ●「脳の手抜き現象」を使って、60%の力で80%の成果を得る ほか 第2章 疲れないコミュニケーションの基本――面倒な段階は省いて、相手に心を開かせる ●人間は弱みを見せた相手を信用する ●ジャニーズは「弱さへの共感、共有化」がうまい ●西川史子さんが見せた「弱さ」 ●「正しいこと」ばかりを語る人に愛着は持てない ほか 第3章 「人疲れ」しない距離感づくり ●都会に住む人ほど、一人になる時間が大事 ●夫婦でもベッドは別がいい? ●悩みは箇条書きにして「解決できる」「できない」に分ける ●LINEでも相手と上手に距離をとる ほか 第4章 お笑いの天才に学ぶコミュニケーションの真髄 ●相手との距離をぐっと縮める「0.5秒先」の共感 ●なぜ、悪徳商法はなくならないのか? ●場の全員を楽しませる必要はない ●60%の力で80%の仕事ができる「ワーキングメモリ」とは? ほか 第5章 60%の力で80%の成果を得るワーキングメモリ活用法 ●ワーキングメモリを鍛えて「人疲れ」予防 ●喜怒哀楽や感動を強く表すことで記憶が定着する ●トップダウン処理は疲れない ●ワーキングメモリを鍛えるための習慣 ほか

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“人疲れ”が嫌いな脳

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梶本修身

医学博士。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。東京疲労・睡眠クリニック院長。1962年生まれ。大阪大学大学院医学系研究科修了。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。ニンテンドーDS『アタマスキャン』をプログラムして「脳年齢」ブームを起こす。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)などがある。「ホンマでっか!?TV」「世界一受けたい授業」「ためしてガッテン」など、テレビでも活躍中。

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